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茨城県龍ケ崎市には約4000年前の縄文時代後期の丸木舟(県指定文化財)が歴史民俗資
料館に展示されています。又、南北朝時代の「馴馬城址」の遺構もあります。更に江戸
時代は仙台・伊達藩の所領として繁栄した由来があり、国の重要文化財である来迎院多
宝塔や国選択・県指定無形民俗文化財の撞舞(つくまい)など珍しいお祭りもある歴史
を有する街です。当然そこには何世代にも渡ってこの地に住み続けておられる広い敷地
を有する民家があり、私が日常歩いている散歩道という狭い行動エリアにも、こうした
旧家を散見することができます。
こうした民家には、おそらく住み着いた当時に植えられたと思われる庭木が今では巨樹
となり、屋敷守りとしての役割を担っていると感じられる存在感を放つ樹木があるもの
です。散歩をしながら敷地内から顔を出しているこうした巨樹を見ていますと、その存
在感、威圧感は大きな番犬の存在を上回るものを感じます。今回は私の日常の散歩エリ
ア内にある民家の巨樹を取り上げます。神社仏閣の境内や畑、雑木林そして学校などに
ある巨樹は対象外です。
<龍ケ崎のお宝の木 巨樹・古木>
話を進める前に、目を少し広げて龍ケ崎市内にある巨樹たちを紹介します。市内には県
指定文化財の「般若院の枝垂桜(シダレザクラ)」や市指定文化財の「八坂神社の欅
(ケヤキ)」「大統寺の竹柏(ナギ)」などたくさんの貴重な巨樹や古木が存在してい
ますが、これらの樹木を後世に伝えていきたいとの思いから、2018年に「龍ケ崎のお宝
の木 巨樹・古木」という冊子が刊行され、50本の樹木が掲載されました。選考にあた
っては約80本の候補の中から樹高・幹周り・推定樹齢・いわれなどから独自の採点を行
ったと記されています。市のホームページから閲覧できます。こうした刊行物は文化財
ですよね。とても良いことだと思って紹介しました。
<屋敷守りの巨樹たち>
それでは巨樹たちの登場です。紹介する巨樹は民家の敷地内にあり、家屋内部への日照
の影響も考慮されるため、定期的に剪定され管理されています。そのためなのかどうか
わかりませんが、紹介した「龍ケ崎のお宝の木」の選考からは外れて掲載されていませ
ん。ここで紹介する巨樹の定義は、①散歩道というエリア内に存在する巨樹である、
②巨樹とは樹高ではなく、幹回りの太さと樹齢で判断する、③屋敷を守る役割を担って
いると感じるほどの風格と存在感がある、これらの条件を満たしている巨樹たちです。
尚、樹木の名称は間違えるといけませんので記載しません。写真から調べてくださいね。
(その一)我が家から最も近く、且つ、最も頻繁に仰ぎ見ている巨樹です。一度だけ、
クレーン車を使って剪定している現場に出会いましたが、定期的に選定され
ています。今は画面にあるように塀の外側にありますが、この塀ができる前
は敷地内にあったそうです。この巨樹の前を通るたびに、必ず立ち止まって
じっくり見上げるのが至福の一時になっています。
(その二)長いブロック塀で囲まれたお宅にあります。この巨樹の枝はブロック塀の中
央付近から太い枝を左右に伸ばし、ブロック塀の上部を写真のように枝を伸
ばし、葉を茂らせています。今の時期は新緑の青葉で無機的なブロック塀に
潤いを与えているのがお気に入りです。ブロック塀に大きな目、鼻そして口
を目測で描いたら、この巨樹の葉がまるで髪の毛のようです。ここを通ると
こんな楽しみ方をしています。
(その三)崖の上の高台にあるお屋敷の巨樹です。この巨樹は仰ぎ見るほど高い場所に
あるため、近くには行けません。機会ができたら直接樹皮に触れたいものだ
と思いながら眺めています。巨樹の大きさが実感できないのが残念だといつ
も思います。
(その四)門柱の役割を担っている左右の2本の巨樹です。幹回りとしてはそれほどで
もないかもしれませんが、写真を撮っていたら、古老が畑仕事の手を止めて
「あの木は樹齢100年以上なのだよ」と話しかけてくれましたので、ランキ
ング入りとしました。
(その五)ツリーハウスのある木です。ブロック塀が私の身の丈を越えているため、ツ
リーハウスを支えている巨樹の全体像はわかりません。確かなのは、このツ
リーハウスは私がこの地に住み始める以前から存在しているので、もう半世
紀近くを経過していることになります。良く補修点検がなされているようで、
これまでのどの台風に対しても耐えてきました。こうした実績から、屋敷守
りの巨樹の上にツリーハウスがあると推測しました。推測が入りますのでこ
こでは番外編とします。
巨樹といえば森の中にあると思われがちですが、光を求めて高さを競いあったり、水を
奪いあったりする戦いがありますし、生き残っても、強い風雨にさらされるなど、過酷
な環境も待ち受けています。ところが、街中の公園や神社仏閣の境内にある木は、競争
相手が少なく、人間に守られて大事に育てられているので、巨木になる条件が揃ってい
ます。なので、巨樹の数は存外と多いのです。しかし、邸宅内となると、そこに住む家
人の営みの影響を直接受けるので、なかなか巨樹になるまで育つのが難しいのです。
紹介した巨樹たちはこれからも、お屋敷の住人たちを見守り続けていくでしょう。畏敬
の念を抱かせる巨樹たちは言葉を持ちませんが、実は大変大切なことを私たちに語り続
けてくれているようにも思います。