むかしむかし、あるところにばあやんと意地悪ばあやんがおった。
二人は実の姉妹じゃったが、性格は全く似ておらなんだそうじゃ。
二人にはそれぞれ跡取りの他に、遠くで暮らす息子がおった。ばあやんは息子が帰るたび、まるで戦地から戻ったがごとく喜び歓迎したが、意地悪ばあやんはあまり嬉しい顔は見せなんだ。
戦後の物のない時代に、それぞれの息子は母親のために珍しい魚や菓子を苦労して手に入れ、持ち帰った。ばあやんはそれを頭の上に捧げては
「もったいない。こんな高価な物を」
というのであった。
一方意地悪ばあやんは、土産を一瞥するなり
「別に欲しくもない・・・。」
とぶっきらぼうに言うのであった。
こんな風に全く性格の違う姉妹であったが、同じところがひとつだけあったのじゃ。困ったことに、二人ともせっかく持ち帰った土産を食べようとはしないのだった。
ばあやんは勧められるままに一口食べると
「ああ、もったいない、まるで円札をかみしめるような贅沢じゃ。」
そう言って、みんな孫たちに食わせてしまうのじゃ。
一方意地悪ばあさんは、嫌そうに一口食べるなり
「ああ、まずい。こんなものは食えた物じゃない。」
そう言って、これまたみんな孫たちに食わせてしまうのじゃった。
そうなのじゃ。意地悪ばあさんは、「美味しい」と言えば「母さんが食べてくれ」と言われると思い、わざと悪口を言っていたのじゃ。素直になれない母親の性格を見抜いておった息子は、じゃからこそ意地悪されても意地悪されても、「そうかい」と受け流して、また食べ物を運ぶのじゃった。少しでも母親の口に入れたくてな。
以上、いつの時代にもいる不器用者の話である。まあ、同じなら「うれしい、おいしい」と言ってもらいたいですよね。息子は分かっていたけれど、お嫁さんはきつかったらしいし。でも、ちょっとかわいい。どんな顔で孫に食べさせていたんだろう・・・。2006/9/4の記事
二人は実の姉妹じゃったが、性格は全く似ておらなんだそうじゃ。
二人にはそれぞれ跡取りの他に、遠くで暮らす息子がおった。ばあやんは息子が帰るたび、まるで戦地から戻ったがごとく喜び歓迎したが、意地悪ばあやんはあまり嬉しい顔は見せなんだ。
戦後の物のない時代に、それぞれの息子は母親のために珍しい魚や菓子を苦労して手に入れ、持ち帰った。ばあやんはそれを頭の上に捧げては
「もったいない。こんな高価な物を」
というのであった。
一方意地悪ばあやんは、土産を一瞥するなり
「別に欲しくもない・・・。」
とぶっきらぼうに言うのであった。
こんな風に全く性格の違う姉妹であったが、同じところがひとつだけあったのじゃ。困ったことに、二人ともせっかく持ち帰った土産を食べようとはしないのだった。
ばあやんは勧められるままに一口食べると
「ああ、もったいない、まるで円札をかみしめるような贅沢じゃ。」
そう言って、みんな孫たちに食わせてしまうのじゃ。
一方意地悪ばあさんは、嫌そうに一口食べるなり
「ああ、まずい。こんなものは食えた物じゃない。」
そう言って、これまたみんな孫たちに食わせてしまうのじゃった。
そうなのじゃ。意地悪ばあさんは、「美味しい」と言えば「母さんが食べてくれ」と言われると思い、わざと悪口を言っていたのじゃ。素直になれない母親の性格を見抜いておった息子は、じゃからこそ意地悪されても意地悪されても、「そうかい」と受け流して、また食べ物を運ぶのじゃった。少しでも母親の口に入れたくてな。
以上、いつの時代にもいる不器用者の話である。まあ、同じなら「うれしい、おいしい」と言ってもらいたいですよね。息子は分かっていたけれど、お嫁さんはきつかったらしいし。でも、ちょっとかわいい。どんな顔で孫に食べさせていたんだろう・・・。2006/9/4の記事