さよなら帝国劇場。

　昨日で帝国劇場114年の幕を下ろした。と言っても、田舎に住んでいる私にとって、そこは身近な場所では無かった。大きな舞台は大阪の方が近い事もあって、東京へ出向くことは無かったからだ。そしてその大阪でさえ、様々な事情でなかなか行ける場所でもなく、観たくても観られなかった舞台も沢山ある。
　それでもたった一度だけ帝国劇場の舞台を観たことがある。決していい席では無かったが、その迫力に感動したのを今でも覚えている。
　それはもうずいぶん昔、学生時代に当時東京で駆け出しの女優をしていた友人を訪ねた時だったと思う。彼女と、今でも交流のある東京の友人（当時舞台や映像の俳優をしていた）のバイト先を訪ね、彼からもらった小劇場のチケットで劇場に行ったり、色々梯子したがその中のメインイベントが帝国劇場だったと記憶している。蜷川幸雄さんの舞台で沢田研二さんの「貧民俱楽部」だった。
　結局あれ以来遠い憧れの舞台は観ることが無かった。今回最終公演はチケットを取ることも難しかっただろうが、環境が整っていたら是非観たかった。
　本公演の後で２時間の生放送で番組をしてくれたので、それは懐かしく嬉しかった。その長い歴史の中にはすでに鬼籍に入られた俳優さんたちもいる。昨年亡くなられた西田敏行さんもその一人だが、若くして亡くなられた本田美奈子さんの映像も素晴らしかった。ただ、神田沙也加さんの姿は観た途端に涙が出た。素晴らしい女優さんだった。素晴らしい歌声だった。本当に残念でならない。

　さて演劇の思い出としては地方公演がある。長く舞台で活躍される前田美波里さんは地方公演の時、出待ちしているファンの間を、
　「ごめんなさいね。急いでいるの。ごめんなさい。」
と涼やかに立ち去るのだが、あまりのオーラに取り巻くだけで誰一人近寄れなかった。
　その代わり市村正親さんは美波里さんがすんなり出られるように、丁寧にファンサービスしてくださった。そしてファンの写真撮影やサインがスムーズに出来るように、その捌き方も見事で感心したのを覚えている。
　最後の舞台は観られなくて残念だが、もしこけら落とし公演の時環境が許される状態なら、観に行きたいな。
　帝国劇場、お疲れ様でした。舞台関係者の皆様お疲れ様でした。そしてこれからも、素晴らしい舞台を魅せてください。