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バスに、子供を抱いて乳母車を片手に持ったお父さんが
乗ってきた。
生憎、空いている席がなく若い女性の前に立った。
私と他のお客さんもそうだったと思うが、その女性が代わって
席を譲ってあげると期待した。
ところが、その若い女性は死んだふりを、いや、寝たふりをした。
それを見ていて離れた所に座っていた、ちょっと年配の女性が
「ここに、座りんさい」と、席を譲ってあげた。
去年の11月に長崎へ帰ったとき、友達との待ち合わせ場所まで
駅からバスに乗った。
私は、老婦人の前に大きなザックとテニスのラケットケースを
持って立っていた。
ただでさえ邪魔だろうなと思っていたら、その女性が声を掛けた。
「どこまで行きなさっと?」
「浦上駅前です」
「席ば代わりましょうか?ここに座らんですか」と、言ってくれた。
「えー、大丈夫ですよ。慣れてますから。ありがとうございます。」
と言って、有り難くお断りした。
何て優しい人だろうと感動したことを覚えている。
見るからに細くてか弱そうな老婦人なのに・・・。
世の中どうなっているんだろう・・・。
これが現実だとは思いたくない。