木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

ポー川のひかり

2009年09月01日 | 映画レビュー
日常はメルヘンではない。
スローライフを標榜しているような人のもとにも納税の催促は来るし、地域開発の余波は押し寄せる。
また、中年以降の人間ならば成功しているか否かを問わず、人生をリセットしたくなる瞬間というのはあるはずだ。
「ポー川のひかり」の主人公は将来を嘱望された哲学者。
その彼が、今までの人生を完全に否定するかのような行動に出て、行方不明になる。
そして、ポー川のほとりに世捨て人のように住んで、周りの人々からはキリストさん、と呼ばれるようになる。
78歳の大御所、エルマンノ・オルミ監督は、以後はドキュメンタリーを撮っていく、とのことで劇映画はこれが最後であると明言している。その監督の思い入れが過剰なほどにあふれた作品である。
旧聞で恐縮であるが、昔々、アリスというバンドが解散するとき、「最後だけは自分たちの内側を見ながら演奏させてもらうわがままを許して欲しい」と言っていたことがあった。
この映画もまさに、監督の考えが凝縮されているのだと思う。エンターテイメント性とかストーリーというものよりも、内面の声を重視している。
キリスト教文明を肌で知らない日本人には特に難解かも知れない。
ストーリーとしても、内容としても分からない部分が個人的には多かった。
ただ、オフィシャルサイトのキャストのところにもスチールとして使われているダンスの場面の映像はとても綺麗だった。
あの場面だけでも見る価値はあるように思う。
主人公がラモス・ルイに似ていたのは少し気になった。

お勧め度は、「個人差がありすぎて何ともいえません」。
ただ、自宅でDVDなどで観たら、さらに監督のメッセージは伝わりにくくなるかも知れない。観るなら、劇場で観るべき映画だ。


ポー川のひかり H P



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