木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

アンヴィル

2009年11月03日 | 映画レビュー
アンヴィル~夢を諦めきれない男たち」を観た。日本にいるとなかなか海外アーティストの懐事情までは分からないところがあるが、セレブな生活をしているアーティストもいるし、その逆もいる。アンヴィルは、「逆」のほうのバンドである。
アンヴィルとは80年代に活躍したヘビィメタルバンドである。実は、僕も当時はHMの中にどっぷりと浸かっていたが、今となっては何となくバツが悪いようにも思ってしまうのはなぜだろう。もともとロックとは既成への反抗であるから、段々、自分が既成体制に組みしてきてしまっているからかも知れない(実を言うと、今でもHMが一番心ときめく音楽なのであるが)。
映画はアンヴィルのオリジナルメンバーであるボーカルのリップスとドラムのロブを中心に据えたドキュメンタリー映画である。
お馬鹿な若い頃から、純粋に夢だけを追えなくなった51歳になるまでが映画に登場する。
リップスの夢とは「ロックスターになってやる」である。
西武球場で演奏したアンヴィルは十分に「ロックスター」だったと思うのだが、商業的には全く成功しておらず、リップスは給食のケータリング業、ロブは建設作業員で生計を立てていた。
その一方で定期的なライブ行い、13枚ものアルバムを出している。ヨーロッパツアーまで行っているのだが、バンドからの収入としてはごくごく僅かなものだったらしい。
こうなってくると、成功とは何か、という根本的な問題にぶち当たる。
アマチュアなら十分に成功しているだろうが、プロとしては全く成功していない。それでも別収入があり、暮らしていけたのだから、成功と言えるのだろうか。
アンヴィルは技術的にはもちろん、現在活躍しているプロと比べても遜色がなかったのであるが、技術の巧拙と人気は比例しない。
若くしてポッと出てきてスターになる人種は、無名の新人の中から出てくる。無名の新人はそれこそ無数にいるわけで、無数のスターになれなかった人の上に、ロックスターは成り立っている。
アンヴィルは一回は「無数のスターになれなかった人」たちに伍してしまった。
それがこの映画により再びビッグステージに上がることできた。
それは単に「ラッキー」だったのであろうか。
続ければ必ず夢は叶うと言う発言はあまりにも安易であるが、辞めてしまえば成功できないのは確実である。
運命の神は皮肉であるけど、必ずしも意地悪ではないと信じたい。
ちなみに、今はリップスもロブも音楽に専業している。


アンヴィル~夢を諦めきれない男たち H P

海外版予告編(字幕付・個人的にはこちらの予告編のほうが好き) 

We're gonna do it together! We get there! We'll get the rockstars! It's a dream. But I'll make it dream come true!
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