築30年。
壁や屋根を2回は塗り替え、大きなリホームも一度行ったがさすがに歪みが出てきた。
もう人生の先が見えてきたし、静かに暮らせば何とかモツかと思っているのに、テレビで何とか体操なんてのが入ると、一緒になって飛んだり屈伸したりするルンバとスリスリ。
根田が沈み、もしかしたら床が抜けるなんてことは全く考えていない二人。
それを見て、つい大声で「やめろ! 体育館じゃないんだから」と叫ぶ。
そのボロ家に「耐久年数が過ぎたのでガス管を交換して下さい」との文書が届いた。今のとは違い、昔の金属製ガス管は寿命が短いらしい。
驚くことに本管のある道路から自宅のキッチンまでの管は工事費も含めて自己負担だと云う。
もし地震がきたら潰れるかも知れない家に金をかけたくは無い。
それにガス爆発で吹っ飛ぶ怖さもあるので悩んだ末にIHレンジに換えることにした。
卓上型は安いのだけれど、システムキッチンに挿入できるビルトインタイプはそこそこの値段。それに工事費が加わる。
今日がその工事日。昨日キッチン周りから邪魔な鍋釜を出した。
先ずガス会社が来てガス管のカットと栓。家の中のガス管とメーターも外した。
「ビルトインタイプのガスレンジは、電気工事店で外してもらって下さい」と云っていたのに、油料理を避けているルンバが綺麗に使ったと云うか使わなかった為に全く脂でギトギトしていないレンジを見て、これは使えると判断したのだろう。
急に「外しますね」と云って持ち帰った。
そして午後、電気工事店の御来宅。
200Vの電源をキッチンまで這わせる為の大工事。
出来るだけブレーカーが飛ばないようにと、主ブレーカーから分岐している6個のブレーカーを全部確認して同時に使わない部屋や電気器具の組合わせを変更。
さて問題はこれからだ。
IH器具なんか使ったことの無い老夫婦に取り扱い説明が始まった。
「このSWを長押しすると電源が入ります」・・・・・「フンフン」
「左右のヒーターはほぼ同じ構造でこれを主に使うと思います」・・・・「フンフン」
「それで、これを押してこれを押すとこうなります」・・・・「フンフン」
「こう云う場合にはこれを押します」・・・・・ここでフンフンが消えた。
見るとルンバの目は既に死人。
大丈夫なのだろうかと不安を憶える電気店の社員と私。
「だ・・・・・大丈夫です。近くにコンビニありますから」と云う私に
「そうですね、説明書見れば分かりますから」と逃げ腰になる社員。