囲碁で「手抜き」という高等戦術がある。
相手が打った手に一旦相手をせず他の手を打つのである。部分的には、最初の部分で相手に連打されたり、最初に打った一が取られたりすることがあるが、それでも全局的には有利に展開する・・・という不思議な戦術だ。
その効果は、次の図が分かりやすい。
以下は、これまでプロも打っていた手順でよく見られた進行。しかし白12が絶好で左の黒に白からの打ち込み手段が生じている。ここで黒が左辺を守れば固いが、白に右辺を割り打たれると白のペースになる。
それで、最近、この段階で手抜きをして、下に黒9のカカリが打たれている。右に黒の星が控えているので白はハサミにくく、受けると大ゲイマは甘いので小ゲイマが普通。
とすると次の進行になる。白が小ゲイマに受けたあとで、左上の手順を再開すると、左辺の黒への打ち込みが緩和されていることが分かる。これが手抜きの効果である。これで黒が有利になるという訳ではなくてほんの少しポイントを稼いだくらいかもしれない。白をもってこの手順を打つプロもいるし、この手順を嫌えば工夫することになる。
最近、囲碁の本がたくさん出版されている。しかし問題集的なものだときりがないし、事典的なものは研究の際に使うのであって覚えるものではない。
囲碁を覚えて最初に19路盤に向かった時どこに打てばいいのか分からないものだが、これはルールや定跡は教えてもらっても基本戦略のたて方がうまく説明されていなかったためだろう。パターンを教えてもその背景が解説されていないのである。背景を知れば自分で考えることができるがそれがないと暗記ものになってしまう。
で、以下の4冊は、これまで解説されてこなかった分野について、コンパクトに編集され考え方が示されている。それぞれ読破すれば効果はすぐに現れそうなオススメの4冊である。
自分では打ったことはないが、星にかかって一間に挟まれた時、飛んでカケていく定石がある(碁盤隅部だけ記載)。
このまましばらく置いておいて、適当なタイミングで隅に手をつけていくのだが、最近、以下の手順を解説書でよく見かける。形が面白いということもあるのかもしれないが、この22、24は藤沢秀行が打ち出したのだという。 ここまで知らないとこの定石、白は打てない。面白い手だと感心させられる。
謝依旻女流本因坊に向井千瑛四段が挑戦している第30期女流本因坊五番勝負は、第1局が挑戦者の向井四段の中押し勝ちになったという。これまで謝依旻さんが女流タイトルを独占してきたところ、俄然先行きが面白くなってきた。
今日の囲碁・将棋フォーカスを観ていたら、三村九段が囲碁を始めて三年以内で初段になれたら優秀な方だといっていたような気がする。三年で初段が目標とか(^^;プロに九子置いて勝てたら初段だという。
暑いので今のところネット碁は中断している。
子供の頃、囲碁のコミは四目半だったように思う。今は、日本では六目半、中国では七目半だから、随分違う。それだけ黒はゆっくりした打ち方だったのだろう。
小目は、シマルかカカルか。速い展開を目指す場合は、星打ちだったように思う。趣向で高目や目外し、三三があった。システム的な布石と言えば、三連星で、小目からシマラない中国流はまだ目新しかった。それほど布石で覚えることは多くなかったように思う。
今は、先手の得を最大限に活かそうとする厳しい布石になっている。韓国では、序盤を徹底的に研究し、50手までが定石化されているという。新手 が開発される度に、棋士達が研究し、即座に新らしい序盤の最善手順が更新される。総力戦である。これでは日本は勝てないだろう・・・・50手といえば相当の手数である。
宮本武蔵は佐々木小次郎に対し、櫂を削って作った木刀で臨んだという。
両者相当の剣の使い手で、勝負は時の運。対等の条件では相打ちになる可能性もある。しかし相打ちではまずい。生き残らなければならない。しかも、佐々木小次郎の武器は三尺三寸の長剣、相手の間合いで戦っては不利である。 では、小次郎と同じ長剣を使うか。しかし、長剣では小次郎に一日の長がある。さらに長い剣では・・・重くて使えない。では、木刀を使おう。一撃を加えることができれば勝負は勝ちである。殺傷する必要はない。
武蔵、長い木刀を手に小次郎に向かい正眼に構える。
小次郎、それを一目見てプッと吹き出し「むさーし、その手できたか(^^)」
武蔵の額からは、汗がたらーっ・・・これでは武蔵の負けである。
小次郎とて刀だけはなく、槍やいろいろな武器と対戦しているであろう。相手が木刀と見ればそれなりの間合いで闘うはずだ。その余裕を与えてはならない。
判断力が曇る心理に持ち込む必要がある。小次郎をとことん待たせよう。臨戦の気持を長く維持することはできまい。
木刀は櫂で作るのだ。舟で行けば櫂を持っていても不自然ではない。小次郎が、こちらが長い櫂を武器にしていると悟った時には、こちらの間合いで闘いが始まっている。
小次郎は、長剣ゆえ腰にささず背負っている。剣を抜けば鞘はじゃまである。当然、そこらに置いておくことになる。「待ち兼ねたぞ武蔵」と痺れを切らした小次郎が闘いを急ぎ武蔵に駆け寄った時、武蔵が待っていたかのように叫ぶのである「こじろーやぶれた~~り、鞘をなぜすてーるのか~~!」小次郎にとっては「はぁ~?こいつ馬鹿か!生意気な!」と思わず日頃の間合いで闘いを挑んだところ、相手は櫂の木刀、思ったより長く動きも速い!と気がついた時には、頭にゴン
史実がどうだったかは置いておいて、武蔵は、有利な闘いにするため、長く軽い木刀を武器にし、それを悟られないように、櫂を削った木刀を手に、舟で、しかも時間を遅らせて向かったのではなどと考えていた。
高尾九段のブログを見ていたら、自分の対局を見直していて、「この定石、どうやるんだっけ????今朝、自分で出した「基本定石事典」を見て調べる」というのがあって安心した。(^^) プロは、全て頭の中に入っているのかと思っていた。高尾九段が事典を開いている姿が目に浮かんでしまった。
坂井秀至碁聖と羽根直樹九段とで争われている碁聖戦五番勝負が2勝2敗となり、最終第5局にタイトルの行方が持ち越された。挑戦者の羽根九段は、0勝2敗から2連勝のがんばりである。羽根九段は、先の山下本因坊と羽根九段の本因坊タイトル戦(7番勝負)挑戦でも0勝3敗から3連勝して最終第7局に持ち込んだ(第7局では残念ながら山下本院坊の勝ちとなったが)。羽根九段は本当に粘っこい。このような、諦めない折れない相手は、タイトル保持者にとっては嫌な相手だろう。
羽根九段は、先日の名人戦挑戦者決定プレイオフで山下本因坊に負け、名人戦7番勝負の挑戦権を直前で逃したばかりである。不運がこれだけ続くと、そろそろ勝ってほしいような気もする。
羽根九段は、戦いの激しい碁は好みではないという。相手の地模様が自分の地模様より大きいと、相手の模様に打ち込まざるを得なくなり戦いに引きずり込まれる。それを避けるために(打ち込まなくてもいいように)スピードをもって大場へ展開する棋風という。
要するに、地が相手より自分の方が多ければよいのであって、相手の地を減らすだけの手では駄目しか打っておらず効率が悪く、相手から攻められる危険も生じる。自分の地を相手より増やし続ける手を打ち続ければ(大場感覚を磨けば)いかに相手の地が大きく見えようとも最後まで打ち込む必要がない。相手が打ち込んで来れば、自分の勢力圏での有利な戦いになる・・・というのが羽根琉のようである。
囲碁には、定石というものがある。「ある局面において、双方最善を尽くした手順として知られているもの」である。
しかし、アマチュアだと「最善を尽くした」というあたりがあやしく、相手が定石通りに打ってこないことが多い。定石から外れた手順は外れた方が不利になるはずだが、必ずしもそうならないのは「結果」である定石の本道の知識しかなく、先人が調べたであろう脇道を自ら確かめていないのが原因。
ところで、プロも必ずしも定石通りに打つわけではない。上の図は、高尾九段の実戦。普通は、黒□を打って、白△の抜きの後、黒○とカケツグのが定石。□を決めず、黒17と逆側にカケツイでいる。
また、張/井山戦でも、張棋聖が□、井山名人△のあと、張棋聖が17と定石と逆にカケツイでいる。
ここらの理由については、「月刊囲碁ワールド8月号」を読んでいただきたい。
プロにとって、定石の体系は頭の中に入っているが、周辺の局面の状況によって評価が変わったり、相手が新手を打ってくる可能性がたえずあるわけで、いわゆる「定石」として認識しているのではないのだろう。日々の試行・検討のあとを振り返ってみると、それがいつの間にか定石と呼ばれていたということではないかと思う。
最新の情報に触れるには棋譜を読む必要があるが、最近、そのような最先端の検討について、月刊誌や単行本で紹介してくれる棋士がいるのが嬉しい。
i-Padで週刊囲碁新聞読んでいる。
写真はきれいだし、掲載されている棋譜の再生機能までついている。
なかなかの優れものである。おまけにキャンペーン期間中なので新聞は半額!
i-Padもできることはパソコンとにているが、家電のイメージ。取扱説明書は一切ついてこない。直感的に操作は分かるし、分からなければネットに接続してみればよいということになっている。
囲碁の「週刊碁」新聞に加えて「月刊 碁ワールド」が電子書籍として「i碁BOOKS」で読むことができるようになるという。6月20日から i-pod(touch)のソフトも正式版にバージョンアップされる。それに紙版より160円安い(^^)
ところで、山下道吾本因坊に羽根直樹九段が挑戦している第66期本因坊戦七番勝負は、第4局目で羽根九段が初めて1勝し、3対1のスコアになった。ホッとしている関係者も多いのでは。
羽根九段は、調子が悪いのではなく実は絶好調。23日には、坂井碁聖への挑戦者として五番勝負が始まる。さらに棋聖挑戦者決定リーグではトップ、名人挑戦者決定リーグでもトップ、王座戦では準決勝に進出、十段戦もNHK杯戦もトーナメントに入っている・・・と勝ちすぎて対局が混んでいるのが心配だったりする。(^^;