「骨伝導ヘッドホン」というものがある。音を耳の鼓膜を通さず骨を通して聴くヘッドホンだ。
ベートーベンが
骨伝導でピアノの音を聴いていたというのは有名な話だが、耳を塞がず音を聴くことができるので、軍隊、警察、バス運転などで使用されているという。通信用途だろう。一般の用途でも、ジョギングしながら音楽を聴いたり、ヘッドホン等多用による難聴化防止、加齢に伴う聴力低下の補助などの需要がある。
しかし、高価な割に、音が悪く(特に低音)音が小さいなどの欠点があるため、それほど売れている訳でもなく、大きな電気店でも探すのは難しい。インターネット販売が中心のようだ。このような新しい分野の商品で、それも人によって使用感が異なる商品を、試用もせず購入するのはリスクが大きい。毎日の通勤電車の中で使ってみたいという人が多いと思うが、骨伝導は耳を塞がないがため、周囲の音が大きい環境ではある程度の音量がないと骨伝導の音が聴きにくい。実際、買ってみたものの期待はずれで使ってないという人も多いのではないだろうか。
それで、どのようなものがあって、どの程度使えるものなのか試してみた。
最近いろいろ製品が出ているが、価格は、1万円前後のものと、2万5千円~3万5千円程度のものに分かれるようだ。その違いは、アンプが付いているかいないかになる。1万円クラスのものは「健常者」の使用を想定し、3万円前後のものは「高齢者」等の利用を想定している。
アンプが付いていれば、どのような機種に接続しても大きな出力が得られ音量の調節の幅も広くなる。アンプがないと、テレビやiPod等機器側のボリュームのみの調節になり限界がある。このため、価格が安いものは、音が小さく聴きにくいと言われているようだ。静かな場所では聞こえるが、騒がしい通勤環境等では使い物にならない可能性がある。アンプ付きのものを戸外に持ち出すのも鬱陶しいし、高価すぎる。また、静かな室内でヘッドホンを必要とする場面はどれほどあるだろうか。
他方、加齢とともにテレビや電話の音が聴きにくくなるというのは切実な問題だ。テレビの音を大きくするのは家族にとって迷惑だし、イヤホンは疲労し聴力の低下を早めるような気もする。音のないテレビを観るのは悲しい。テレビや音楽に集中して楽しむには、補聴器ではなく骨伝導の方が適しているのではないだろうか。高齢者にアンプ付き骨伝導ヘッドホンの需要はけっこうあると思う。
しかし、高齢者が使うには「簡単」であることが必須だ。いくら性能がよくても、電池を頻繁に入れ替える必要があったり、ダイヤルが操作しにくかったり、逆に不必要に動いてしまうような構造のものは使い物にならないだろう。
次の3種は、現在販売されているアンプ付き骨伝導ヘッドホンでよく見かけるものである。
3万円クラス |
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「Filltune (フィルチューン)」 BCHS-FT002
フレェイの研究をTEACが製品化・製造。2008年3月発売モデル。 音が悪い。高音がシャリシャリした感じで、低音は弱い。乾電池でなく充電式になっているのは使いやすい。ただ、他の製品と比べるとやや重く、ヘッドバンドの形状が悪いためずれやすく、長くかけているとこめかみが圧迫され痛くなり疲労する。その他、左右のバランスの調整を附属の工具で行わなければならないなど、製品として未完成の部分が多いように感じる。高齢者の利用には不適。
| 「骨伝導聴音器 きき耳くん」
中度の伝音性難聴、加齢による耳の遠い方を対象としている。アームはずれにくい耳かけ型。テレビ等だけでなく、附属のマイクからも集音できる。左右音量、可聴周波数切り替えなど、高齢者の使用に配慮した製品になっている。販売の経路が限られていて試用の機会がないのが残念。なお、電源が単4電池なので、入れ替えが面倒で躊躇するかもしれない。
| 「hi-Bone Conduction HIB-707W」
年寄りや難聴者の「聞こえ」の支援、健常者の難聴防止を対象にした製品。乾電池でなく充電式になっているのは使いやすい。アームはずれにくい耳かけ型。導伝部を回転させて当てる位置を調整できる。テレビ等だけでなく、附属のマイクからも集音、携帯電話との接続もできる。販売の経路が限られていて試用の機会がないのが残念。
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