ケンのブログ

日々の雑感や日記

サンクトペテルブルクフィルハーモニー交響楽団大阪公演 十一月一七日 ザシンフォニーホール

2018年11月18日 | 音楽
昨日はザシンフォニーホールにサンクトペテルブルク交響楽団大阪公演
を聴きに行った。
指揮はニコライ アレクセーエフ
バイオリン 庄司紗矢香

最初に演奏されたのが
バイオリン独奏 庄司紗矢香さんで
シベリウスのバイオリン協奏曲ニ短調 作品47
第一楽章
オーケストラの演奏も紗矢香さんの演奏も静かに始まる。
クラリネットとファゴットの音を聴いたとき
音色がダークで深いと思った。
その印象がオーケストラの音全体の印象になった。
ダークで深いサウンドのオーケストラだなと。
途中でえらい右の方からブラスの音が聴こえてくるなあ
と思ってステージに目を凝らしたら
木管楽器の客席から向かって右側に金管楽器群が並んでいる。
こういう配置あまり見かけないなと思った。
それでオーケストラの配置に目を凝らすと
客席から見て左からファーストバイオリン
チェロ ビオラ セカンドバイオリンの古典配置というか
対向配置だった。
コンサートマスターは微妙にヨハンセバスチャンバッハのような
ヘアスタイルをしておられ、その他にも
ヨーゼフハイドンのようなヘアスタイルの奏者もいて
オケは古典配置で、なんだか本当に
ステージが古風な感じに見えた。
これもコンサートの演出のひとつかも知れない。
紗矢香さんのバイオリンは静かに始まって
なんだか森の妖精のような音楽の雰囲気を醸し出していた。
オーケストラは深い音色で盛り上がるところも
激情的に盛り上がるのではなく
じわっという感じで盛り上がっていった。
しかるべき抑制が利いているというのだろうか。
なんかそんな感じだった。
楽章が後半に進むと紗矢香さんのバイオリンはなんだか深い
雰囲気を醸し出しているなと思った。
民謡風のメロディーをオーケストラがたっぷりと歌うと
やはり大きな世界が広がるな、さすがだなと思った。

第二楽章
第一楽章が終わった瞬間の演奏姿勢を
紗矢香さんはずっと楽章の合間もキープしておられて
そのキープした姿勢のまま第二楽章が始まった。
普通バイオリンの独奏者は楽章の合間では
力を抜く場合が多いので
第一楽章が終わったときの姿勢をそのまま
キープして第二楽章に入るというのは珍しいと思った。
見かけ上の演出なのか演奏に際して何か
意味があるのか。
それはちょっとわからない。
なんかちょっと不思議な感じに見えた
そういえば、第一楽章が始まるときも
紗矢香さんはすくなくともステージの上では
オーケストラとチューニングをしなかったなと思い出した。
それで演奏はどうかというと
なんだかこの楽章は割りと軽い感じだなと思った。
ただ、とても甘く切なく音がひびくところもあり
なんか情緒が揺れるタイプの演奏かも、と思った。
オーケストラの演奏が雄大にメロディを奏でるところもあり
そういうところはやはり大陸的だなと思った。

第三楽章
オーケストラの伴奏は意外と軽く始まる。
紗矢香さんもそんなに目一杯気合いを入れて
演奏するという感じではなく
少し余裕のある弾きかたであるように思える。
しかし、それで物足りないと思うことはない。
それが演奏の微妙なさじかげんだなと思う。
あと譜割りの細かいところを弾くときに
紗矢香さんのバイオリンは音がとんがって動くのではなく
とても滑らかに移行する。
聴いていて美しいなと思った。
甘く切なく音が響くところもあったし
なんとも言えない色気を漂わせているなと思うところもあった。
演奏がフィニッシュに近づくにつれて
紗矢香さんの演奏が醸し出すスピリットが
高まっていったなと思う。
ちょっと不思議な演奏家だなと思った。

20分の休憩を挟んで次に演奏されたのが
チャイコフスキーの交響曲第5番 ホ短調 作品64
こちらの方はなんだか聴きなれた曲の
とてもスタンダードな演奏を聴いているなという印象だった。
そのなかで印象に残ったことは
第二楽章のホルンの旋律の奏でかたはとても美しかった。
情緒たっぷりという感じ。
ホルンに限らずこの楽章はどの楽器の
旋律の歌いかたもとても美しかった。
あと楽章の後半で音楽がナチュラルに盛り上がってくるのも
印象的だった。
作為というものをあまり感じさせない世界には
それなりの魅力があると思う。
第四楽章の冒頭はややテンポが速く
行進曲風の入り方だった。
ただその入りかたが楽章全体を支配したわけではない。

全曲を通じてティンパニーは棒の先に
通常みかけるよりも大きな玉をつけておられ
そのためしっかり叩いておられるのに
音はマイルドという世界を作っておられた。
しっかり叩いて音がマイルドというところが肝要であると思った。

アンコールにチャイコフスキー くるみ割り人形の
ロシアの躍り トレパックが演奏された。
これは、この音楽の演奏によく見られる
音を跳ね上げるタイプの演奏ではなく
音を内側にこもらせるタイプのちょっと独特の演奏だった。
ただ、このアンコールの演奏が
何となく昨日のコンサートの演奏の特色の
コアにあるものなのだろうという思いを抱いた。

前半は紗矢香さんを聴く楽しみもあって
かなり満足。
後半はサンクトペテルブルクフィルだったら
このくらいはやってくださるだとうなという感じの印象だった。

テルミカーノフさんが無事に来日されたら
どんなコンサートだっただろうという思いはあるけれど
昨日は昨日でよかったと思う。