今日も温かい一日だった。雀などの鳥も元気そうに見える。
隣の街T市の立ち食いそばの店に入る。
店の奥の低いカウンターで男の人が座ってそばを食べていた。
なんとなく黙ってそばを食べていても雰囲気の良さそうな人と思った。
僕は立ち食いそばは立って食べるのがポリシーというわけではないけれど、立ち食いそばの店においてある極端に低い椅子や小さなとまり木のような椅子に座って食べるくらいなら立って食べたほうが楽という身体感覚なので、高いカウンターテーブルの方で立ってそばを食べた。
男の人が座って食べている方向を向いて僕が立っていたら、男の人に圧迫感を与えるかもと思い、男の人に背中を向ける位置で僕は立って食べていた。
男の人はしばらくするとそばを食べ終わり食器を返却口においてお店を出ていった。
お店を出る瞬間に男の人はワンオペレーションで働いていた女性の店員に
「あっ あんた京都にいたやろう」と言った。
「はい。いました。マスクしてるから顔わからんでしょう」と店員の方は言った。
「いや、そんなことない、わかるわ。何?こちらに配属替えになったの?」と男の人は言った。
「配属替えも何も、コロナやから行けと言われたところに行かんと、結局やめならんことになるから」と店員の方は言った。
「大変やなあ。お店に通うのも遠くなったやろう」と男の人は言った。
「いや、それは逆に家からは近くなったわ」と店員の方は言った。
「ああ、そう。まあ、ごちそうさん」と言って男の人はお店を出ていった。
あんな感じのいい男の人にさりげなく声をかけてもらえるなんて、どんなべっぴんさんの店員の方やろうと僕は思った。
お店に入って、注文して、前払いの料金を払って、そばを受け取ったときには財布とか食器とかトレーとか、そちらのほうに僕の視線が行っていて、店員の顔は見なかったから、、、。
それで、僕もお店を出るときに、その店員の方を見た。
それほど一般的な意味ではべっぴんさんというような感じの方ではなかったけれど、僕と目が合った時に、ニコッとした顔をして、その店員さんは「おおきに」と言ってくださった。
ああ、そうか、この笑顔が、男の人に声をかけてもらえた秘訣かと僕は思った。