京都で立ち食いそばの店に入る。
立ち食いそばの店には半畳くらいの広さだけれど、更衣室がある。
しかし、ドアはついていない。しかし、やはりそこは更衣室なので客の目線からは更衣室の中は見えない。
僕が立ち食いそばの店に入ったとき、客は僕一人、店員は年配の女性一人だった。
僕が注文したものを年配の店員さんが出してくださった。
そして、僕がそばを食べている間に、年配の店員さんは、更衣室の中の店員さんに話しかけている。
更衣室の中に店員さんがいらしたのかと思った。
「本当に、長い間、お疲れ様。また、たまには京都に遊びに来てや」とおばちゃん店員さんは更衣室の中にいる店員さんに声をかけている。
その瞬間に、ああ、あの学生バイトの子、この春卒業で、今日で立ち食いそばのバイト終わりなんだなと思った。
今はコロナで、どこも最小限の人数で人のやりくりをしている感じで、その学生の子がワンオペで仕事をしているときも僕、何度か、そばを食べた。
ちょっと、ぽっちゃりした、かわいい子、かつ、感じのいい子だなと思っていた。
お店で、客は僕一人、店員も彼女一人というシチュエーションもあった。
何か話しかけようかなと思ったこともあったけれど、話しかけられなかった。
「ほんなら、ホンマに元気でね」とおばちゃんの店員さんが言ったタイミングで、その若いバイトの子は私服で更衣室から出てきて、お店の外の方に行ってしまった。
その時はもう他のお客さんも来ていたので、恥ずかしくて彼女の方に視線を送ることもできなかった。
まあ、立ち食いそばでバイトするような勢いのある子なら、どこへ行っても頑張ってやっていく気がするけれど。
本当に春は、別れと出会いの季節だなと思う。