
『あなたたちの天国』
李清俊著・姜信子訳
みすず書房
映画にもなった『風の丘を越えて(西便制)』の原作者、李清俊の代表作のひとつ。
日帝時代のハンセン病者に対する考え方については姜さんの講演会で聞いたことがありました。ちょうどこの本を訳されていて「出ますよ~」といわれて楽しみにしていました。
そういえば、韓国やキリスト関係の訳を手がけたことのある別の方からもハンセン病の話を聞いたことがあります。曰く
「ハンセン病は衛生状態や栄養状態が悪いときに発生するので、植民地下の朝鮮人の発症者が多かった。日本と韓国の歴史について学ぼうとすると必ず突き当たるテーマのひとつです。」と。
もちろんハンセン病にまつわる悲劇は朝鮮半島だけにかぎられたものではなく、
日本にもありました。現在進行している国も残っているでしょう。
私も事実をちゃんと理解しているかは怪しいし、偏見がないかといわれたら自信がないです。
韓国、小鹿島(ソロクド)の療養所は植民地時代にスタートします。
植民地時代には文字通り日本人が支配者で、患者たちが被支配者という人間関係があります。
日本人がいなくなった後も(小説の舞台は1960年代)
健康なスタッフ=支配者と、患者たち=被支配者という関係は残ります。
平等ではない関係の中で人と人はどのように互いを理解したらいいのでしょうね。
ライに対する偏見や無知から来る恐怖は、
例えば、放射能に対する私たちの漠然とした恐怖心や、
避難児童にたいするいじめの話にも通じます。
長い物語ですが、引き込まれて一気に読みました。
高い本なので、図書館にリクエストして買ってもらったんですが、
その話を姜さんにしたらすごくよろこんでくれました。
テーマが難しいので初版1500部だったのですって。
ぜひぜひ読んでみてください。