「チロルの挽歌』(92・NHK)
鉄道会社の技術部長・立石(高倉健)は、テーマパーク「チロリアンワールド」の建設責任者に任命され、北海道の田舎町へと単身赴任するが、そこには自分と娘を捨てて駆け落ちした妻(大原麗子)が住んでいた。
「なんだか人が恋しくて」(94.3.19.NHK)
県立高校教師の井口(平田満)は、則を守ることに厳しく、生徒たちの評判は芳しくない。家庭でも偏屈と思われ、子どもからも疎んじられていた。その井口が北陸へ旅に出る。ところがその道中で教え子の邦枝(佐藤友紀)に偶然会う。
久しぶりの山田太一脚本ドラマで、そこそこ面白かったのだが、相変わらず問題提起と異世代間のディスカッションが中心で、結局問題は解決せず、またもや結論は見る側に託されていた。このあたり、いかにも山田太一という気もするが、見終わった後に釈然としない思いが残るのも否めない。
ただ、むしろ自分の親の世代に近い彼が書いたドラマによって、逆に今の若者たちの考えを教えられたりもするのだから、その取材力や現代社会が抱えるさまざまな問題への細やかな目配りはさすがと言うべきなのだろう。
普段はあまり見る機会がない名古屋産のドラマだったが、教師役の平田がいい味を出し、無名の若い2人(特に佐藤)との絡みもなかなかよかった。
「刑事の恋」(94.4.7.テレビ朝日)
元ヤクザの兄を持つ娘に恋をした刑事(中井貴一)。悩んだ末に娘に別れを告げ転任するが、そこで事件が起きる。
山田太一作にしては珍しい刑事ものだったが、またしてもディスカッションドラマで結論は見る側に託されており、なるほどと思わされる半面、たまにははっきりと結論を出すドラマも書いてほしいと思ったのは自分だけだろうか。思えば頑固な人である。
衛星放送で大河ドラマ「獅子の時代」(80)の再放送開始。その懐かしさと面白さに誘発されて、山田太一のシナリオ全5巻を一気に読破。いいシナリオは下手な小説よりもずっと面白いことを再発見した。(94.10.)
「パパ帰る'96」(96.1.4.テレビ朝日)
3年半前、夫の一歩(風間杜夫)に蒸発された千春(篠ひろ子)は、2人の子どもと家のローンを抱え、必死に働いてきた。長女の泉(鶴田真由)は短大を卒業、長男の光太郎(堂本光一)は高校生。千春にも新しい恋人ができ、万事うまくいき始めたところへ、突然、一歩が帰ってくる。
山田太一作の新春ドラマ。それなりに面白く、相変わらず彼の家族に対するこだわりも感じられるのだが、昨秋の「夏の一族」に続いて、このドラマも現実離れしたファンタジーで終わらせたところに一種の逃げや衰えを感じた。