本日、某所で西部劇談議。話し足りない気がしたので、以前「ウエスタン・ユニオン・特急便 第4号」に書いたものを転載。
テレビ洋画劇場の思い出、そして『荒野の七人』
過日、「MOVIE」という映画雑誌で、ジョン・ウェイン=デュークを大特集した際、デュークの大ファンである大林宣彦監督にインタビューをする機会を得た。その時、大林監督は「欧米映画の輸入が解禁された終戦直後、新旧ごちゃ混ぜの映画を見るという、大変面白い体験をした」と語っておられた。
その言葉を聞きながら、60年代生まれの自分たちにとってはテレビの洋画劇場がそれに当たると思った。映画の黄金期に間に合わず、さりとて今のようにDVDやビデオもなかったあの頃、テレビで放送される映画は貴重だった。特に西部劇は、純正もマカロニもすでに“終わったもの”だっただけに、ジョン・ウェイン=デュークもスティーブ・マックィーンも、クリント・イーストウッドもジュリアーノ・ジェンマもテレビ画面の中で同一線上に存在していた。
そんな中、1974年2月に、西部劇が大好きになる決定的な映画と出会った。黒澤明の『七人の侍』(54)を翻案した『荒野の七人』(60)である。まず、エルマー・バーンスタインの軽快なテーマ曲にやられ、個性豊かな七人のカッコ良さとジョン・スタージェスの歯切れのいい演出に酔った。
最近、DVDで久しぶりに見直してみたら新たな発見があった。例えば、黒ずくめのユル・ブリンナーは有名だが、マックィーンはピンク、チャールズ・ブロンソンは青、ジェームス・コバーンは白、ブラッド・デクスターは茶、そして敵役のイーライ・ウォラックは赤というように、シャツの色や服装でそれぞれの区別がつくように、ロングで見ても誰だか分かるような工夫がなされていた。
また銃の撃ち方にも、素早い反転抜き撃ちのマックィーン、ピンと背筋を伸ばして撃つコバーン、ライフルが主体のブロンソン、そして日本刀を鞘に収めるように、銃をホルスターに収めるブリンナー(これは本家『七人の侍』を意識した動作だろう)など、各々がライバル意識を燃やし、いかに目立つかを考えて動いているようにも見える。
さて、この映画のポスターやチラシ、パンフレットに時代の移り変わりが見えるのもオールスターキャストならではの楽しみだ。初公開時には、当時の大スターであるブリンナー、ドイツ出身で期待の新人ホルスト・ブッフホルツ、そして演劇界の大物で敵役のイーライ・ウォラックが前面に出ている。
後には、大スターとなったマックィーンの扱いが大きくなるが、70年代のリバイバル時には、ブロンソンも目立つようになる。そして、『さらば友よ』(68)などでひげがトレードマークになったブロンソンにひげが描き足されたのには驚いた。
『七人の侍』の面々がすべてこの世を去ったように、現在は『荒野の七人』のメンバーも、ロバート・ボーンを残して世を去った。映画のラストで交わされた「アディオス」の一言が胸にしみる今日この頃。
ちなみにメンバーを年齢順に記すと、デクスター出演時43歳(享年85歳)。ブリンナー出演時40歳(享年65歳)。ブロンソン出演時39歳(享年82歳)。コバーン出演時32歳(享年74歳)。マックィーン出演時30歳(享年50歳)。ボーン出演時28歳(現在76歳)。ブッフホルツ出演時27歳(享年70歳)となる。
だからこそ、最近作のラブコメ『ホリディ』(06)で老いたウォラックの姿を見つけた時、『荒野の七人』ファンとしては感慨深いものがあった。ウォラック出演時45歳(現在93歳)。結局、憎まれ役が一番長生きしたことになる。
2009年1月24日(ウエスタン・ユニオン・特急便 第4号より転載)
後記:ウォラック2014年6月24日死去。享年98歳。