写真が魂を吸い取る!?
世界最古の写真撮影方法であるダゲレオタイプの写真家ステファン(オリビエ・グルメ)の助手になったジャン(タハール・ラヒム)。彼は撮影法の不思議さとステファンの娘マリー(コンスタンス・ルソー)に心を引かれる。だがその撮影はモデルが何時間も静止することを要求される苦痛を伴うものだった。
黒沢清監督が撮ったフランス映画。凝ったカメラワークと音楽、舞台となる旧館を使って現代のゴシックホラーのような不思議な世界を作り出している。死者と生者が交わる映像、ストーリー共にヒッチコックタッチを狙ったようなところもある。
妻や娘をモデルとするステファンに象徴される、ダゲレオタイプが醸し出すフェティシズムと変態性に踏み込んでいる点が興味深い。写真がモデルの命を削るのか、それとも永遠の命を与えるのか、という二律背反する問題が浮かび上がってくるからだ。写真が魂を吸い取るという迷信はダゲレオタイプの撮影から生じたものなのかもしれないと思わされる。