田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『レミニセンティア』

2016-12-26 09:46:47 | 新作映画を見てみた

 知人の紹介で、伊勢佐木町近くの横浜シネマリンに『レミニセンティア』という自主製作映画を見に行った。

 この日は、終映後に監督の井上雅貴氏のトークショーも開催された。



 本作が監督デビュー作となった井上氏は、イッセー尾形が昭和天皇を演じたアレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』(05)にスタッフとして参加し、ロシアの映画製作を学んだという。

 その時、通訳を務めたロシア人女性のイリーナさんと結婚。この映画は彼女がプロデュースし、娘の美麗奈ちゃんが重要な役で出演している。いわば本作は、ロシアを舞台に、家内制手工業で作られた映画なのだ。

 タイトルの『レミニセンティア』はロシア語で「追憶」を表し、映画のキャッチコピーとしては「記憶の万華鏡」と訳されている。

 そのことからも明らかなように、本作は人間の記憶をテーマに、少々哲学的なSF(少し不思議)話を展開させる。

 簡単にストーリーを紹介すると、人の記憶を消す特殊な能力を持つ作家のミハエルが主人公。彼のもとには「記憶を消してほしい」という人々がやってくる。 

 ミハエルは金の代わりに人々の記憶(小説のストーリー)をもらうのだが、自身は幼い娘と過ごした過去が思い出せずに悩んでいた。そんなミハエルの前に、記憶を呼び起こす特殊能力を持ったマリアが現れる。というもの。

 正直なところ、冒頭は独特のテンポや雰囲気に面食らい、睡魔に襲われたが、じわじわと引き込まれていき、最後は、面白いものを見せてもらったという思いに変化した。

 舞台となったロシアの地方都市ヤロスラヴリの巨大工場、マンション、テレシコワ記念館などが、不思議な雰囲気を醸し出し、SF的な効果を存分に発揮している。

 何より、ロシアという遠い国の風景がとても新鮮に映った。その点で言えば、この話を日本で撮らなくて正解だったと思う。

 また、記憶、夢、水といった隠喩はアンドレ―・タルコフスキーの『惑星ソラリス』(72)を思わせるものがある。

 終映後、その印象を監督に話すと、「不思議なことに、ロシアで映画を撮ると何故かあんな感じになってしまうんですよ」という答えが返ってきた。

 もちろん、監督デビュー作ということもあり、粗削りな面や独りよがりなところも見られるが、独自のストーリー展開や映像美などを見ながら、将来性は十分にあると感じた。

 横浜シネマリンで1月6日まで上映中。興味のある方はぜひ足をお運びください。
http://cinemarine.co.jp/

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『映画の森』「2016年ベストテン」

2016-12-26 08:00:49 | 映画の森
共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)12月26日号の『映画の森』で、
独断と偏見による和洋折衷の「2016年ベストテン」を発表。

「ハドソン川の奇跡」
「この世界の片隅に」
「ブリッジ・オブ・スパイ」
「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
「スポットライト 世紀のスクープ」
「シン・ゴジラ」
「ザ・ウォーク」
「オデッセイ」
「聖の青春」
10「君の名は。」

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