ダブニー・コールマンの代表作といえばこれ。
『天国に行けないパパ』(90)(1991.3.23.銀座シネパトス)
自分の寿命を知った男が、改めて人生を見つめ直すと言えば、すぐに黒澤明の『生きる』(52)を思い起こすが、この映画の良さは、それをあえて切羽詰まったものとして描かず、コメディタッチで描きながら、じわじわ、ほのぼのと見せてくれたところにある。
しかも、妻や息子のための保険金欲しさに、わざと危険な仕事を選んで死にたがる刑事が、どんどん手柄を立ててしまうという皮肉な設定が見事に功を奏している。
ちょっとした神のいたずらが、時には人生を豊かにしてくれるというところに、人間喜劇としての深い味わいがあって、久しぶりに佳作と出会えた気がしてうれしくなった。
今を懸命に生きることが大切。それは分かっているがこれが結構難しい。皆現実ではそうしたくてもできないから、こういう映画を見ると身につまされるんだなあ。
何とこの映画の主演は、名脇役のダブニー・コールマン。しかも元妻役はテリーガーというキャスティングの妙に思わずうなった。銀座シネパトスは、何と“地下鉄センサラウンド”だった。
「All About おすすめ映画」
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そしてもう一本。
『ビデオゲームを探せ!』(84)(1993.2.9.)
空想癖があり、ボードゲームの主人公ジャック・フランク(ダブニー・コールマン)を唯一の友とするデイビー少年(ヘンリー・トーマス)が偶然殺人現場を目撃してしまい、被害者から軍事機密情報の入ったTVゲームソフトを受け取る。誰もそのことを信じてくれない中、デイビーはスパイ組織に命を狙われ始めるが、そんな彼を助けてくれたのはジャック・フランクだった。
『E.T.』(82)のヘンリー・トーマス主演の変形父子スパイアドベンチャー映画。たわいない話と言ってしまえばそれまでだが、この映画の見どころは、少年の父と想像上のヒーローの二役を、ダブニー・コールマンが演じ分けている点。彼の温かみのある個性が生かされており、ラストに父親とヒーローが見事に合体してしまうという離れ業も違和感なく見ることができた。いい俳優だ。
この映画の原題は「クローク・アンド・ダガー」。事件の鍵を握るボードゲームのタイトルだが、これはその昔フリッツ・ラング監督が撮った反ナチス映画『外套と短剣』(46)と同タイトルであり、コーネル・ウールリッチの小説からもアイデアを頂戴しているとのこと。