『ナイトスイム』(2024.5.27.東宝東和試写室)
難病に侵され引退を余儀なくされた元メジャーリーガーのレイ・ウォーラー(ワイアット・ラッセル)。現役復帰を目指す彼は自身の理学療法も兼ねて郊外のプール付き中古物件を購入し、妻イブ(ケリー・コンドン)や思春期の娘イジー、幼い息子エリオットと共に引っ越してくる。
新たな生活を満喫する一家だったが、裏庭にあるプライベートプールは、なぜか15年も未使用のままだった。そのプールには得体の知れない怪異が潜んでおり、一家を恐怖の底へと引きずり込んでいく。
憧れのプール付き物件に引っ越した一家を襲う恐怖を描いたホラー映画。製作は「ソウ」シリーズのジェームズ・ワンと『ゲット・アウト』(17)のジェイソン・ブラム。ライス・マクガイア監督が14年に製作したショートフィルムを基に自ら長編映画化した。
水にこだわったホラーだけに水中撮影が見事。スプラッターは控え目にしてじわじわと恐怖を感じさせる演出はオーソドックスな手法。こういう映画を見ると「そもそもそこに行かなければいいのに」と思うが、今回は「そもそもプールに入らなければいいのに」となる。まあ入らなければ話にならないわけだが…。ホラーの中に家族劇を盛り込んだ点も面白かった。
主人公のレイはミルウォーキー・ブルワーズの外野手という設定。演じたワイアット・ラッセルの祖父ビング・ラッセルは元メジャーリーガー、父のカート・ラッセルもマイナーリーグでプレーしたのだから、この役は奇縁というべきか。
家(プール)が元凶という点で、この映画のことを思い出した。
『家』(76)(1977.5.3.銀座東急)
夏のバカンスを過ごすためにニューイングランドの古い豪邸にやって来た高校教師の一家が見舞われる恐怖を描く。伯母(ベティ・デイビス)は体調を崩し、夫(オリバー・リード)は何かに取りつかれて息子を殺しかけ、妻(カレン・ブラック)は“家”に取り込まれてしまう。家そのものが怪異の存在であり、人間を食らっては成長を繰り返していたのだ。監督はダン・カーティス。
そのままでも怖いカレン・ブラックの顔が一層怖く見えるラストシーンが強烈。プールサイドでの金縛りの時のオリバー・リードもすごかった。 ベティ・デイビスはすっかり怪奇映画のおばあさんといった感じだった。