田中雄二の「映画の王様」

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ジーン・ハックマンの出演映画 1980年代

2025-03-12 23:48:34 | 映画いろいろ

『スーパーマンⅡ 冒険篇』(81)(1982.12.28.大井武蔵野館)

レックス・ルーサー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/19412ee938e8ce04de56f5400f91f4fc


『恋のドラッグストア・ナイト』(81)(1992.7.14.)

 ジーン・ハックマンとバーブラ・ストライサンドの共演作でありながら、なぜか劇場未公開だった映画だが、今回は「なぜ公開しなかったんだ」という文句が言えない。つまりそれほど面白くはなかったのだが、惜しい映画と思わせるような同情の余地はある。

 何といってもこの映画の場合は、バーブラの存在が邪魔なのだ。恐らく2人抱き合わせの企画だったと思われるので、こうしたバランスの悪い中途半端な出来になってしまったのだろう。

 例えば、ハックマン演じる中年男の復活をドラッグストア内の出来事や人物との絡みを中心に描けば、もっと話は整理されて盛り上がっただろうし、それを発展させて大企業への復讐劇として仕上げることもできたはず。それをいかにもとってつけたような恋愛ものにしなければならなかったところにこの映画の悲劇があるのだ。こうしたいまいち映画にばかり出ていると、ハックマンも『フレンチ・コネクション』(71)で同僚刑事を演じたロイ・シャイダー同様、危ないものがあるぞ。


『レッズ』(81)(1985.1.2.)


『ウィンター・ローズ』(83)(1984.1.10.渋谷文化)

 フロレンス・モントゴメリー原作のイタリア映画『天使の詩』(66)をリメーク。母親の死をきっかけに断絶した父と息子が和解するまでを描く。父親役はジーン・ハックマン。息子役は『E.T.』(82)で主人公エリオットを演じたヘンリー・トーマス。監督は『スケアクロウ』(73)でもハックマンと組んだジェリー・シャッツバーグ.


『ターゲット』(85)(1993.3.17.)

 ジーン・ハックマンの最近の多作出演の理由が気になっていたのだが、図らずも彼の主演映画を続けて見たことで、「そんなことはどうでもいいじゃないか」という結論が出た。

 それは、どちらもB級に毛の生えたような映画なのに、彼の存在感で見せ切られてしまったからだ。片や『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀』(89)は左遷された歴戦の兵士、こなた『ターゲット』(85)は元CIA部員と役柄が似ていたし、どちらも捲き込まれ型のサスペンスという共通点もあり、追い詰められてから本領を発揮するタフな男の魅力にあふれていた。

 例えば、こういう役をハリソン・フォードやケビン・コスナーが演じることもできようが、ハックマンに比べれば彼らはまだまだ線が細いという気がする。

 『ターゲット』は、冷戦が生んだスパイ合戦の悲劇が根底に描かれており、ハックマン演じる、一見うだつの上がらぬ引退した元CIA局員が、妻(懐かしのゲイル・ハニカット)を誘拐されたことから、だんだんとその本性を現してくる面白さが縦糸で、当時売り出し中だったマット・ディロン演じる息子がおやじの変貌ぶりに目を見張るという父と子のドラマが横糸という、ちょっと凝った作りの二重構造劇になっている。

 とはいえ、かつて同じくハックマンと組んで撮った『ナイトムーブス』(75)同様、アーサー・ペン監督に往年の切れは見られず、ハックマンの腹芸だけで見せる映画という気がしたが、こういう映画でもそれなりに演じ、見せ切ってしまうところがハックマンのすごさなのである。

 


『キングの報酬』(86)(1991.3.16.)

 何とプロ野球のオープン戦の雨傘番組としての放送であった。自分も劇場で見なかったのだから大きなことは言えないが、去年『Q&A』(90)を見た際にも感じたシドニー・ルメットの限界というか、正義や社会腐敗に対する彼の一貫した映画作りに堅苦しさを感じて付き合うのがつらくなり、見るのを避けてしまうようなところがあるのは否めない。

 実際、この映画も選挙の裏工作といういかにも彼らしい題材だ。だが、リチャード・ギアが演じた主人公の忙しさを強調するという計算もあったのだろうが、話をあちこちに広げ過ぎて的を絞れなかった気がする。それ故、ラストの救いにもストレートな感動は浮かんでこずに苦さが残る。

 ただ、これはルメットのせいというよりも、社会全体が正義や不正に対する怒りに対して鈍感になっているからなのかもしれない。そう考えると、今後はストレート主体ではなく、多少の変化球も織り交ぜないと社会派監督シドニー・ルメットの前途は苦しいかもしれないと思った。

 この映画にもジーン・ハックマンの姿があった。一体最近の彼の多作出演の理由は何なのだろう。ファンの一人としては、金に困っての安売りとかではなく、あくまで俳優という仕事が好きだからだと思いたい。なんて勝手に考えるところは『ミザリー』(90)みたいだな。


『バット★21』(88)(1990.5.2.)

 あの『ダイ・ハード』(88)のベトナム版とでもいうような、無線で結ばれた白人と黒人の戦場での奇妙な友情が描かれ、ジーン・ハックマン演じる主人公は、苦難の末に奇跡の生還を果たし、一応ハッピーエンドになっている。

 だが、そこに至るまでに一体何人が犠牲になったのかと考えると、ちっともハッピーエンドではないと思う。というより、この映画全体を覆う空気はひたすら重苦しく、空しく、苦い。もっともベトナム戦争自体がそうしたものだったのだから、その意味では、この映画はその一端を的確に捉えていたとも言えるだろう。

 それにしても、次から次へと手を変え品を変えてベトナム戦争映画が作られ、われわれ日本人は正直なところ「またか」と思わなくもないのだが、今年のアカデミー賞でまたまたオリバー・ストーンが『7月4日に生まれて』(89)で監督賞を受賞し、受賞スピーチで「ベトナムを忘れてはならない」と訴えていたぐらいだから、この手の映画が勢いを失うことはあるまい。

 だが、果たして全てのベトナム戦争映画が真摯に作られているかと言えば、決してそうではない。ただブームに乗って安易に作られた的外れなものも少なくない。一方、もういいかげんにベトナムのことは忘れたいと思うアメリカ人も少なくないはずだ。

 その辺りの兼ね合いやバランス感覚が、今後のこの手の映画をワンパターンに落としてしまうか、メッセージ性のあるものとして残していけるかの別れ道になっていくのではと感じた。


『ブルーウォーターで乾杯』(88)(1989.12.5.)

 主演はジーン・ハックマンである。相手役は久々のテリー・ガーである。加えてバージェス・メレディスまで出ているとなれば、悪い映画ではないはずだと期待したのだが、なるほど公開時に早々と打ち切られてしまったのも無理はないという感じの出来だった。

 不器用でなかなか自分の気持ちが表せない主人公同様、映画自体も語り口が不器用でなかなか前に進まないのだが、ストーリーや登場人物たちのキャラクターに、あの『リオ・ブラボー』(59)を思わせるところがあった。なので、もう少しうまく作れば、現代版の形の違った『リオ・ブラボー』になり得る可能性があっただけに残念な気がした。

 そんなこの映画の救いは、登場人物たちに根っからの悪人は一人もおらず、皆いいやつらであるところ。ラストのカーテンコール的なダンスシーンでの総登場に至っては、作り手たちの登場人物たちに対する温かさが伝わってきて、こういう映画を皮肉っぽくけなすのはかわいそうな気がしてきた。不器用だけど捨て難い映画といったところか。

 ハックマンの最近の多作出演には驚かされるが、選り好みをせずにこういう映画にも平気で出てしまう人の好さみたいなところが好きだ。


『ミシシッピー・バーニング』(88)(1989.4.21.丸の内ピカデリー2)

アラン・パーカー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4192f6659e78f916af3e071157d1fc59


『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀』(89)(1993.3.17.)

 ジーン・ハックマンの最近の多作出演の理由が気になっていたのだが、図らずも彼の主演映画を続けて見たことで、「そんなことはどうでもいいじゃないか」という結論が出た。

 それは、どちらもB級に毛の生えたような映画なのに、彼の存在感で見せ切られてしまったからだ。片や『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀』(89)は左遷された歴戦の兵士、こなた『ターゲット』(85)は元CIA部員と役柄が似ていたし、どちらも捲き込まれ型のサスペンスという共通点もあり、追い詰められてから本領を発揮するタフな男の魅力にあふれていた。

 例えば、こういう役をハリソン・フォードやケビン・コスナーが演じることもできようが、ハックマンに比べれば彼らはまだまだ線が細いという気がする。

 『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀』(89)は、ジョン・フランケンハイマーの『対決』(90)同様、冷戦終結間際の軍人たちのあがきが描かれており、いまや存在しなくなったソ連という国や、この映画ではそっくりさんが登場する失脚したゴルバチョフなどに思いをはせると、この米ソの醜い争いが何と空しく見えてくることかという気がした。

 加えて、たかが数年の間にいかに世界情勢が急激に変化しているかが、こうした映画からも如実に示されるところがある。まさしく映画は時代を映す鏡なのである。ハックマンに加えて、暗殺者役のトミー・リー・ジョーンズ、刑事役のデニス・フランツの好演も光った。


キリンビールCM「キリンドライ」(88)

ビールと映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/383c4ddc06663378e697864cb185fd7f

https://www.youtube.com/watch?v=UB3U4HubyhE


 


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