『鴛鴦歌合戦』(39)
マキノ正博監督、片岡千恵蔵(1999.2.14.)
ひょんなところから放ってあったビデオが見つかり、前々から気になっていたこの映画を見てみた。まず、こんなに楽しい映画が戦前に作られていた事実に驚くとともに、日本ではミュージカルは成立しないと思い込んでいたわが思いを見事に打ち砕かれた。大げさに言えば、現存するエノケン主演のオペレッタ映画よりも面白かったのである。娯楽映画監督としてのマキノ雅博の才能に改めて敬意を表したい。
バカ殿のディック・ミネと骨董狂いの志村喬の何とも能天気な歌声に加えて、御大・片岡千恵蔵までもが歌うのだ(さすがにこれは吹き替えらしいが…)。こうしたアナーキーさは尋常ではないのだが、ラストには「人間にとって一番大事なものは何か」という命題がきちんと示され、出演者一同の合唱で見事なハッピーエンドとなる心地よさに浸ることができる。先日見た『赤西蠣太』もそうだが、こうした映画を、ただ古いというだけで判断してはいけないと猛省させられた。
『風の又三郎』(40)
島耕二監督、片山明彦
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f8c5bb49bb177b6baf07ccf7da4f0c14
『エノケンの孫悟空』(40)
山本嘉次郎監督、榎本健一
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8b2972c1ad095616b22af4e04897be56
『馬』(41)
山本嘉次郎監督、高峰秀子
『江戸最後の日』(41)
稲垣浩監督、阪東妻三郎(1991.11.4.)
稲垣浩監督による昭和16年作というのだから、今から50年も前の映画であり、戦時下という異常な状態の中で作られた不幸もある。しかも、同時期に作られたアメリカ映画とは比べ物にならないほどの粗悪なフィルムで撮られたことによって、画面の見にくさやセリフの聞きづらさも加わる。
だが、それも映画自体の出来がよければ気にならないのかもしれないが、同時期に『無法松の一生』を撮った稲垣と阪妻コンビにしては冴えが見られなかったので余計気になった。
江戸城無血開城を描きながら、あえて西郷隆盛を登場させないことで勝海舟の方を強調したかったと思われるが、これがあまり成功していない。故に、勝を演じた阪妻の腹芸が目立つだけの映画という印象にとどまる。
『父ありき』(42)
小津安二郎監督、笠智衆
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