スーパーバンタム級で2階級目となるボクシング主要4団体の王座統一を果たした井上尚弥が、6日夜、東京ドームでこれまで2階級で世界チャンピオンになっていたメキシコのルイス・ネリと対戦。第1ラウンドに初ダウンを喫したが、第2ラウンドにダウンを奪い返し、第6ラウンド1分22秒でテクニカルノックアウト勝ちした。
今までボクシングにも野球にもすごい選手たちはいたが、大谷翔平と井上はもはや別次元の選手だ。ただ、試合はAmazonプライムビデオでないと見られない。これでいいのかという気がする。
東京ドームでのボクシングの世界戦といえば、1990年2月11日に行われたマイク・タイソンとジェームス・ダグラス戦以来。あの時は日テレで放送されたので、自分も含めて多くの人が見たのだ。その時のメモを。
試合前からタイソン不調のうわさは流れていたが、どうせ勝ちの見えた試合を盛り上げるためのものだろうと思っていた。それは取りも直さず、これまでのタイソンがあまりにも強過ぎたからで、試合が始まればすべてはうわさで終わるはずだったのだ。
ところが、第1ラウンドからいつものタイソンではなかった。素人目に見ても明らかに動きが鈍い。パンチが単発で、逆にダグラスのパンチを食ってまう。これまでは相手のパンチが一発でもタイソンを捉えればそれだけで大ごとだったのに、ラウンドが進むにつれて、それが当たり前のことのようになってきた。これはもしかすると大変な結果が待っているかもしれないという思いが現実味を帯びながら試合が進んでいく。
第8ラウンド、ついにタイソンのアッパーがダグラスを捉えてダウンを奪ったが、いつもの鋭さに欠けた。案の定ダグラスは立ち上がり、第9ラウンドは逆にダグラスが優勢。そして運命の第10ラウンド。あのタイソンが目をはらし、連打を食い、ついに倒された。その瞬間、見てはいけないものを見たような妙な感慨にとらわれるとともに、これがボクシングなんだ!という感動も湧いてきた。
どんなに素晴らしいボクサーであっても敗北の時は必ず訪れる。“アイアン”マイク・タイソンにも例外なくその時が訪れたのだ。そして佐瀬稔のボクシングを言い当てたような「勝者はいつか敗者に支払いをしなければならない」という言葉が迫ってきた。
さて、敗れたタイソンに再起はあるのだろうか。再起後のタイソンこそ見てみたいという少々残酷な欲求も浮かぶが、相撲の力士に土俵年齢があるように、ボクシングにも実年齢とは別に“リング年齢”があると思うし、強過ぎた者ほど敗れた後の収拾の付け方が難しい。さてどうなるか。
【今の一言】この後タイソンは、96年にフランク・ブルーノを破って王者に返り咲くが、イベンダー・ホリフィールドに敗れて陥落。02年にはタイトルマッチでレノックス・ルイスに敗れている。05年にケビン・マクブライドに敗れて事実上の引退となった。
【蛇足】90年は東京ドームで、2月16日にローリング・ストーンズ、3月3日と9日にポール・マッカートニーのライブを見たが、その時、ここでタイソンが試合をしたんだという感慨も湧いた。
『マイク・タイソン-THE MOVIE-』
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