『モーリタニアン 黒塗りの記録』(2021.12.28.オンライン試写)
2005年、弁護士のナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)は、9.11テロの首謀者の一人として拘束された、アフリカのモーリタニア出身のモハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)の弁護を引き受ける。
テロリストに“正義の鉄槌”を下すという名目のもと、裁判もせず、拷問によって自白を引き出したアメリカ軍の闇を、その多くが黒く塗りつぶされたスラヒの手記を基に描く。監督は実録ものの評価が高いケビン・マクドナルド。
とはいえ、この映画はスラヒの起訴を担当した米軍のスチュアート中佐を演じたベネディクト・カンバーバッチがプロデュースしたイギリス映画。
さすがに アメリカ映画では、この題材を描くことは難しかったと思われる。「誰かが、テロに対する報いを受けなければ…」(ザカリ―・リーバイ演じる友人のニール)と「だが、それが誰でもいいわけではない」(スチュアート)という会話が、アメリカ軍の焦りや横暴、ジレンマを象徴する。
ラストに実際のスラヒが登場して、「俺と同じだ」と言いながら、ボブ・ディランの「ザ・マン・イン・ミー」を歌う。このように、最近の実録物は劇映画であるにもかかわらず、ラストに実際の人物を映すことが多い。これはある意味、劇映画としてはルール違反なのだが、もはや劇映画とドキュメンタリーの垣根など存在しないということを表しているのかもしれないとも思える。
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