「羅臼岳は絶対に登った方がいいよー!ホントに感動するから♪」
学生時代に北海道に行ったとき、こう言われました。特に山にはまってる人ではなくて、ふつーの人に。羅臼岳は北海道のオホーツクに伸びる知床半島の最高峰の山で標高は1661メートルあります。翌日の泊まり先も決めていない行き当たりの旅だったけど、おしまいに礼文島に行くことは決めていたので、このときは断念。。社会人になって2年目の夏、たった5日しかない夏休みを駆使してどうにか知床に行って羅臼岳に登れるように計画を立てました。知床に泊まれるのは2泊、つまり羅臼岳を目指せるのはたったの1日です。ところが、迎えたその日は無情の雨・・・。その後、知床には縁がなく、羅臼岳に登ることなどすっかり意識しなくなっていましたが、このたび、道東でまとまった日数が取れることになり、それならば挑戦できるかも?!ということになりました。
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これで日程の面では何とかなったのですが、ガイドブックによると「普通の体力があれば登れます。」「ヒグマが出るので単独行はお勧めしません。」とあります。体力はともかく、ヒグマの方はどうなんやろ。ヒグマは人を見れば必ず襲うという悪者ではなく、むしろヒグマも人を恐れていて、人の存在を知らせればヒグマの方が避けてくれるといいます。人数を集めれば・・・と思っていると、宿の食堂での夕食時に「明日は羅臼岳に登ろうと思っています。」という方がいて、「渡りに船やー」でも、「もう少し人数が欲しいなぁ」と思っているうちに我々の会話を聞いていた女性が「私も羅臼岳行くので一緒に行きたい。」と言い、さらにもう一人も「行きましょう。」と加わり、4人で山頂を目指すことになりました。
当日は、朝6時に岩尾別の宿を出発します。気持ちよく晴れています。目指す羅臼岳に目を向けると・・・あれっ!山頂付近に灰色がかった雲がかかっています。それでも一日の晴れを保証するような下界の晴れ方に山頂も晴れてくれることを祈りつつ、車で登山口の木下小屋へ向かいます。車がなければ、ここまでの5キロの道も歩かなければなりませんでした。緩やかな登りの舗装道路ですが、「メンバーの一人は昨日この道でヒグマを見かけた。」と言うので、車に乗せてもらえたことをありがたくかみしめながら進みます。
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木下小屋のある岩尾別温泉には「ホテル地の涯」というホテルがあるのですが、休業しているご様子。そのホテルの脇をかすめて、裏手にあるのが木下小屋。登山者名簿を書いて、いよいよ羅臼岳の頂を目指して登り始めました。登り始めは緩やか過ぎず急過ぎずの坂道で小気味よく高度を稼いで、麓のあたりがみるみる遠ざかっていきます。樹林帯ですが、木々の間から時折オホーツクの海が見えるようになってきます。山頂の天候があやしいので、とにかく見える景色は瞼に焼き付けていきます。30分程登ると「オホーツク展望台」。樹海の中に知床五湖、その樹海の先のオホーツク海がくっきりと見えました。昨日になって知ったのですが、この辺りには蟻塚が多くあって、それを食べにヒグマがよく出没するといわれているのだそうです。なるほど、登山道やその脇に蟻の群れを見かけます。あの大きなヒグマが小さな蟻を食べるのは滑稽な気もしますが、幸いそのような光景に出会うことなく通り過ぎました。
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最初の水場「弥三吉の水」で休憩。水は煮沸が必要そうですが、水筒とペットボトルに詰めてあるので補給はしませんでした。
樹林地帯がしばらく続き、視界が開けるとやや急な坂を見上げる“大沢”で、色とりどりの服を着た登山者が登っているのが見えます。登山口の駐車場には車が多くありましたが、ここではじめて多くの人が登っていることが確認できました。夏の初めまでは雪渓が残る岩場ですが、8月半ばの今は雪もなく、雰囲気が変わって新たな気持ちで登りました。
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大沢を登り切って少し進むと、野営ができるラウス平が広がります。ここでテントを張れますが、食料をテントに置くと匂いに
誘われてヒグマがやってきてしまうので、食料を置くフードロッカーが50メートル程離れた場所に設置されていました。あたりは、うっすらと霧がかかっていて、目指す山頂もよく見えません。早くも山頂から下りてきた登山者に山頂の様子を尋ねると「だめだ、真っ白で何も見えない」の返事。ただ、不思議とその言葉にがっかりした気分にはならず、「ここまで景色を充分に堪能できたし、たとえ山頂での視界が悪くても登れたことを喜べばええやん!」とポジティブな考えを持てていました。
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背丈よりもちょっと低いハイマツを分け入るように進むと、左手の雲の隙間から富士山状の形をした山が姿を現す。「あれが、国後島の爺爺岳」と、同行のAさん。初めて見る北方領土があまりにも近いのに驚かされる。少なくとも前々日にいたサロマ湖よりは断然近いのである。
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下を見たらビビりそうな岩場、手足を駆使しながらそろりそろりと登る。「もうちょっとですよ!」と、下山者が言う。岩を回り込むように登ると「羅臼岳 1661m」の標識!ついに登り切ったぞー!!
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遮るものが何もないので風が強い。山頂には霧は掛かっていないが、周囲の景色は霧が風に流されて見え隠れしている。内地の山と違うのは、建物や街などの人工物がほとんど目に入らないこと。自然の中に抱かれた山を堪能させていただきました。
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下山は元来た道を引き返すルート。登るときは霧で見えなかったところも見ることができて、よかったです。蟻塚では、ヒグマが掘り返したような形跡もあって、あらためてヒグマの棲み処に分け入っていることを認識させられましたが、幸いにも出会うことはありませんでした。
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やがて木下小屋の屋根が見え、下り切るとこれまでの疲れがどっと出てきました。小屋の前でトレッキングシューズと杖に着いた泥を洗い流す。山小屋の管理人さんの話では、ホテル地の涯は経営者が変わった手続きが遅れた影響で休業しているとのこと。今度来る機会があったら、泊まってみたいと思いました。
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車で宿に戻る。連泊するのは私ひとり。あとは、ウトロや車で行って泊まれるところで泊まるということで、一日限りの登山パーティーもここで解散。。
今日一日、ありがとうございました。また、みんなで登りましょう!
自然の岩場に挑んだ翌日、私は常呂のリンクで石に挑みました。筋肉痛と疲れで、いつもの調子には程遠い状態でしたが、初めて常呂の氷に乗れて楽しかったです♪
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