「星座α」24号・作品批評
人間を詠む(抒情詩の一つの視点として)
今号も収録する歌数にバラツキが出てしまった。前号は乱調気味と感じたからだが、今回は作品の豊かさゆえである。
・(母が幼子を詠う歌)
今号は、この作者の作品に注目した。母となった作者が、子どもの成長に驚き、心を打たれている。その愛情は溢れるばかりだ。作品批評にない歌も是非読んで頂きたい。
・(母が子どもを詠う歌)
・(母が娘が身ごもったのを心に刻んでいる歌)
子どもを素材とした作品を2首。母親や祖母としての子や孫への愛しみが感じられる。人間を歌の素材とするときは、相手に対する愛情が不可欠と考える。これは一つの視点だ。
・(いくつかの別れを経た歌)
どのような別れかは問題ではない。細かい部分は捨象してもよいのだ。これを佐藤佐太郎は「表現の限定」と言い、尾崎主筆は「表現の削ぎ落し」と呼ぶ。
・(バスで席を譲られる歌)
・(過去にかけられた言葉に自分を振り返る歌)
・(一人居の部屋で自分の笑い声を聞く歌)
・(昼の電車で咳をする歌)
四首目は、初句が七音だが、あまり気にならない。二句目以降に重量感があるからだろう。放哉の一句は「咳をしても一人」による。
以上四首は、作者自身のことを詠んでいるが、悲しみや孤独感が漂い、相手への気遣いも感じられる。自己への思いやり、自分という人間への愛しみである。
