沖縄県の08年度の公立学校教員候補者選考試験で、採点ミスがあったことがわかった。1次試験のうち「教職教養」で、50点台になるはずの受験者の得点が5点とされていた。県教委はコンピューター処理の際にミスがあったとみている。
「教職教養」は教育基本法などについて出題され、60点満点。マークシート方式で、採点は業者に委託。業者は県教委の指示でプログラムを作り、コンピューターで処理している。
1次試験は7月22日にあり、5140人が受験。2次試験を経て、今月5日に合否の通知があった。その後、不合格者を含む希望者に成績表を送ったとこ
ろ、「自己採点の結果と違う」といった問い合わせが約20件あり、確認の結果、5点とされた人の大半が50点台だったことがわかった。
県教委はミスを陳謝したうえで、「1次試験受験者全員の採点結果を確認し、ミスを修正した結果、合格ラインを超えた受験者には、2次試験を受けてもらえるようにしたい」としている。
全国学力テストの全教科で沖縄が全国最下位だった結果が二十五日、県民に波紋を広げた。経済格差を理由に挙げる声の一方、「学力がすべてではない」と強調する意見が多かった。「詰め込み」強化への懸念も上がった。
石垣市の農業、砂川拓也さん(27)は一学年六人の小学校で学び、地元の高校から現役で慶応大学に進学した。「大学の同級生は学力への意識が石垣の子に比べて強いと感じた。基本的なハードルを越えられない子が多いのは、地域的な問題があるのかもしれない」と指摘した。
一方、農業では父の人脈や交渉力には及ばないと実感する。「社会で求められる力は何か。沖縄の子が地域行事に積極的に参加する協調性や高齢者を敬う心、小さい子への優しさは、全国より秀でていると思う」と話し、テストに表れない「力」も大切だと訴えた。
「沖縄の学力が高い方とは思わなかったけど、まさか最下位とは」。大学進学を目指し予備校に通う新垣康太さん(18)=沖縄市=は驚きを隠さなかった。
自身は小学校から自習の習慣があった。「自分の小学生時代と今の小学生で力に変わりはないはずなので、ゆとり教育の影響だと思う。親の経済力も関係があ
る。県内の景気が良くなれば、家庭環境の改善や塾へ通う余裕も生まれるのでは」と話した。
小学校入学前の孫がいる名護市の主婦、渋谷アイ子さん(58)は「結果には驚いたが、沖縄の子の潜在能力が低いわけではないはずだ」と力を込める。「こ
の結果が、詰め込み教育につながらないか心配。子どもの良い部分を伸ばしながら生活に即した教育をしてほしい」と要望した。
専門学校に通う宮城綾子さん(19)=那覇市=は「最下位はちょっと困る。なんでだろう」と、隣の普天間沙織さん(18)=西原町=と顔を見合わせた。
普天間さんは「内地は幼稚園から『お受験』する人もいるくらいだから、気合が違うかも。でもまねしたいとは思わない」と話した。
県教育庁は二十五日、反響を見越して電話を受け付ける担当者を一人置いていたが、かかってきたのは三件だった。内容は「叱咤激励」だったという。
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家庭学習の少なさ指摘
【東京】自民党文部科学部会と文教制度調査会の合同会議が二十五日、党本部で開かれ、文科省から全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が報告された。
出席した島尻安伊子参院議員によると、全教科で沖縄県が最下位だった要因について文科省の担当者は「特に中学校で家庭学習(宿題)を与えた学校の割合が低く、『家庭学習をしていない』と答えた子も多かった」と指摘したという。
島尻氏によると、文科省は児童・生徒と学校側を対象に別に実施した、「生活習慣や学習環境に関する質問紙調査」を基に、児童・生徒の家庭学習時間が少ないことを根拠に挙げたという。
検証委発足し対策
県議会決算特別委員会(伊波常洋委員長)は二十五日、県教育委員会に対する質疑が行われた。全国最下位となった全国学力・学習状況調査(全国学力テス
ト)結果と児童・生徒の家庭状況の関連について、仲村守和教育長は「県内は就学援助を受けている子どもが多い。(学力テストと同時に)実施した家庭学習や
生活状況の調査結果を基に分析したい」と述べ、十二月までに発足させる検証改善委員会で対策を図る考えを示した。
学力テストの結果については、委員長を除く出席した十四委員全員が質問。仲村教育長は「教育の機会均等を考えると、沖縄の社会状況は米軍基地の存在など本土と比べてハンディも多い」とし、文部科学省に対して、結果を分析する専門官の派遣などの支援を求める方針を示した。
さらに、「全く勉強しないと答えた中学生が沖縄は12・4%と全国平均の8・4%より高い。無回答の割合も全国平均の二倍で、粘り強く最後まで問題を解こうという態度、意欲が欠如している」と分析し、危機感をあらわにした。