先週末は、北海道まで「旭岳山の祭り-ヌプリコロカムイノミ」に行きました。
アイヌのスピリットを受け継ぐ方々を中心とした、山開きの祭りです。翌日には旭岳にも登りました。
旭岳は、北海道の中心です。
アイヌ語で「カムイ ミンタラ」=「神の庭」と言われる場所。
神とは、抽象的な聖なるものの象徴でもあり、アイヌではクマでもあると思います。
クマはカムイと呼ばれ、アイヌでは神様なのです。
熊本のキャラクターであるくまもんにも、相通じるものを感じます。
「旭岳山の祭り-ヌプリコロカムイノミ」では火の神に、山の神に祈ります。
kamuy utar pirka epunkine hawe tapan na.
「神々よ、良く見守って下さい」
と。
■
青木愛子さんという産婆さんの存在も知りました。
既に故人となったアイヌのお産婆さんです。
自分のひいおばあちゃんは鹿児島で産婆さんをやっていたようなのですが、親に聞いたところ、当時の産婆さんは、お産の時には紋付き袴に着替えて、人力車でお産へ向かい、その道を歩く人は頭をさげて通していたとのこと。
まさに当時のお産は神事そのものだったよです。
そういう点でも、アイヌの世界ではお産というのは重要な神事として位置づけられます。
現代では、お産という正常のプロセスが、「病院」という病気を扱う場所で行われているところに昔から違和感を感じていました。
お産は縄文時代も平安時代も延々と行われていたものですから、民間の中にも膨大な智慧があると思います。
西洋医学に限定せず、何かそうした生命誕生のプロセスでの英知を学びたいもの。
赤ん坊はあの世からこの世にやってくる存在。
神そのもののむき出しのまま、この世にやってきます。
お産もそうですが、人間にとって根源的で本質的なことは、民俗学などの日本の歴史を見直しながら学びたいと思います。
子供とお年寄りはあの世に近いので、神様に近い存在とされていました。
そういう人たちを敬える社会こそ、神や仏を大切にできる健全な社会だと思います。
本自体は再版されていませんが、Amazon中古で買えました。
●青木愛子,長井博 『アイヌお産ばあちゃんのウパシクマ―伝承の知恵の記録』樹心社 (1983/08)
***************
<内容>
赤ちゃんは喜びながら生まれてくる
青木愛子はアイヌコタンに代々続いた産婆の家に生まれ、古代から継承されて来た産婆術(イコインカル)、診察、治療のための特殊な掌(テケイヌ)、薬草(クスリ)、整体手法、あるいはシャーマンとしての技量(ウエインカラツス)をも駆使(ウエポタラ)して、地域住民の心身健康の守り役、相談役として活躍した。
本書は十年にわたって愛子の施療の実際を見て、
その言葉の一つ一つを丹念 に記録した、アイヌの信仰と文化の実態に迫る伝承の知恵の書。
■青木愛子『アイヌお産ばあちゃんのウパシクマ―伝承の知恵の記録』
「人の生命守るってことは銭かねでないんだ
ほんとの愛なんだから
ほんとの愛なればこそ
どんなに難産でもみんな無事にやってこれたんだから
熱のひどい時はミミズさ
ハポのようにミミズ掘るってことになれば
涙こぼしながら掘るんだよ
生きているものに申し訳ないって泣きながら」
***************
<目次>
第一部 赤ちゃんは喜びながら生れてくる
Ⅰ イコインカル(助産)1
・愛子さんに触ってもらえばわかる
・病院のやり方はでたらめだ
・お産のカムイ(神さま)におこられる
・イヨーハイ イヨーハイ!(驚いた びっくりこいた)
・タラ(ちから縄)引っぱってみたけど
・人間の体っておそろしい
Ⅱ 療術
・トイウシペ(ミミズ)とコロコニ(フキ) 風邪熱と麻疹のクスリ
・十個のサラニップ(袋) カムイ(神さま)と置きグスリ
Ⅲ イコインカル(助産)2
・愛子の初産婆
・産婆の道具
・ケマコキルについて
・妊婦の姿勢
・炭焼きのお茶
・トイトイ(土製)のポロニマ(大きな器)
Ⅳ 療術(2)
・キナライタ(キンミズヒキ) 腹痛みのクスリ
・おっぱいにがんび 女の道のホルモン
・人参の黒焼きとエフルペシキナ(コタニワタリ) 婦人病のクスリ
・鹿と熊の心臓と鶏の血 内臓のクスリ
Ⅴ イコインカル(助産)3
・うちのだんなと話して来た
・人間の魂はどこにあるかって信念で
・眠り産にかかったら眠らせない
・出血しても前置胎盤はめったにない
・ふたいろ(二種類)の子宮
・おっそろしい産婆さんの内診
・子宮を縛ってほどくのを忘れた話
・自分の手に負えない時は
Ⅵ 療術3
・ヨモギの葉と川柳の皮 ウエペレケ(あかぎれ)と腫れ物のクスリ
・柳の枝のお灸 神経痛・リュウマチに効く
・兄から聞いた鍼(ハリ)の話
・カイクマ(丸太ん棒) オテッテレケ(踏み踏み)
Ⅶ イコインカル(助産)4
・産婆の座り方 肛門脱の予防といきみの補助
・骨盤を開かせる足技 顎への指技・1
・顎への指技・2 盆の窪みへの指技
・頚椎・胸椎等への指技 逆子に対する技術
・臍(へそ)の緒 蘇生術 娩出後の嬰児の診察
第二部 カムイ(神さま)から伝えられたもの
Ⅰ ウエインカラクル(観自在者)としてのめざめ
・青木愛子の人となり
・愛子のウエインカラ(千里眼)
・ウエインカラの始まり
・相手の陰部まで見える?
・距離と時間を超えて見える
・顕微鏡のように見える
・見えないはずのものが見える
・概念が映像として見える
・愛子にも見えない世界
・カムイが降りて来て
ツス(降霊現象)
テケイヌ(診察の特殊な掌)
ウエポタラ(呪術)
ウエインカラ(千里眼)
イム(イム)
Ⅱ 先祖をたずねて
・祖母(フチ)の思い出
・愛子までの歴代継承者について
Ⅲ 海の向こうから
・ツス(降霊現象)の実験 初代産婆の降霊
・ツスの直後のイム
・補足・歴代継承者について
■
旭川の川村カ子トアイヌ記念館にも行きました。
アイヌの方々の表情は、とても気高いです。
顔には、人生がすべて縮図のように出るのでしょう。
言葉はうそをつけても、顔や体はうそをつけません。
そもそも、うそをつくという概念自体が、顔や体には存在しないのでしょう。
頭や言葉だけが、人間の都合でうそをつける。
そういうことを、昔の人は知っていたかのように、気高く誇り高い表情をされているのが印象的でした。
川村カ子トアイヌ記念館は今年は設立100周年。
つまり、1916年の時点で、すでに失われ行くアイヌ文化に危機感を持っていたわけです。
今年は現地で色々なイベントもされているようです。
人類の古層に興味がある方は是非行ってみてください。
アイヌ文化はほんとうに奥深く気高く、学ぶべきものが多い素晴らしい文化だと思います。
アイヌでの「こんにちは」=「イランカラプテ(irankarapte)」
意味は「あなたの心にそっとふれさせていただきます。」
この感性が素敵ですよね。
昨年見た、民映研(民族文化映像研究所)の「シシリムカのほとりで アイヌ文化伝承の記録」の上映会も興味深いものでした。
○「シシリムカのほとりで アイヌ文化伝承の記録」(2015-10-23)
ヤングジャンプで連載されている「ゴールデンカムイ」(野田サトルさん)も、アイヌ文化が扱われている漫画のようですので、積読してあるのを読むのが楽しみです。
旅って楽しい。
現地に行って空気や土地を感じないとわからないことが、たくさんあります。
人生、学ぶことばかりです。
<補足>
写真はこちらにUpしました。
→○2016年6月旭岳山開き(2016-07-04)
アイヌのスピリットを受け継ぐ方々を中心とした、山開きの祭りです。翌日には旭岳にも登りました。
旭岳は、北海道の中心です。
アイヌ語で「カムイ ミンタラ」=「神の庭」と言われる場所。
神とは、抽象的な聖なるものの象徴でもあり、アイヌではクマでもあると思います。
クマはカムイと呼ばれ、アイヌでは神様なのです。
熊本のキャラクターであるくまもんにも、相通じるものを感じます。
「旭岳山の祭り-ヌプリコロカムイノミ」では火の神に、山の神に祈ります。
kamuy utar pirka epunkine hawe tapan na.
「神々よ、良く見守って下さい」
と。
■
青木愛子さんという産婆さんの存在も知りました。
既に故人となったアイヌのお産婆さんです。
自分のひいおばあちゃんは鹿児島で産婆さんをやっていたようなのですが、親に聞いたところ、当時の産婆さんは、お産の時には紋付き袴に着替えて、人力車でお産へ向かい、その道を歩く人は頭をさげて通していたとのこと。
まさに当時のお産は神事そのものだったよです。
そういう点でも、アイヌの世界ではお産というのは重要な神事として位置づけられます。
現代では、お産という正常のプロセスが、「病院」という病気を扱う場所で行われているところに昔から違和感を感じていました。
お産は縄文時代も平安時代も延々と行われていたものですから、民間の中にも膨大な智慧があると思います。
西洋医学に限定せず、何かそうした生命誕生のプロセスでの英知を学びたいもの。
赤ん坊はあの世からこの世にやってくる存在。
神そのもののむき出しのまま、この世にやってきます。
お産もそうですが、人間にとって根源的で本質的なことは、民俗学などの日本の歴史を見直しながら学びたいと思います。
子供とお年寄りはあの世に近いので、神様に近い存在とされていました。
そういう人たちを敬える社会こそ、神や仏を大切にできる健全な社会だと思います。
本自体は再版されていませんが、Amazon中古で買えました。
●青木愛子,長井博 『アイヌお産ばあちゃんのウパシクマ―伝承の知恵の記録』樹心社 (1983/08)
***************
<内容>
赤ちゃんは喜びながら生まれてくる
青木愛子はアイヌコタンに代々続いた産婆の家に生まれ、古代から継承されて来た産婆術(イコインカル)、診察、治療のための特殊な掌(テケイヌ)、薬草(クスリ)、整体手法、あるいはシャーマンとしての技量(ウエインカラツス)をも駆使(ウエポタラ)して、地域住民の心身健康の守り役、相談役として活躍した。
本書は十年にわたって愛子の施療の実際を見て、
その言葉の一つ一つを丹念 に記録した、アイヌの信仰と文化の実態に迫る伝承の知恵の書。
■青木愛子『アイヌお産ばあちゃんのウパシクマ―伝承の知恵の記録』
「人の生命守るってことは銭かねでないんだ
ほんとの愛なんだから
ほんとの愛なればこそ
どんなに難産でもみんな無事にやってこれたんだから
熱のひどい時はミミズさ
ハポのようにミミズ掘るってことになれば
涙こぼしながら掘るんだよ
生きているものに申し訳ないって泣きながら」
***************
<目次>
第一部 赤ちゃんは喜びながら生れてくる
Ⅰ イコインカル(助産)1
・愛子さんに触ってもらえばわかる
・病院のやり方はでたらめだ
・お産のカムイ(神さま)におこられる
・イヨーハイ イヨーハイ!(驚いた びっくりこいた)
・タラ(ちから縄)引っぱってみたけど
・人間の体っておそろしい
Ⅱ 療術
・トイウシペ(ミミズ)とコロコニ(フキ) 風邪熱と麻疹のクスリ
・十個のサラニップ(袋) カムイ(神さま)と置きグスリ
Ⅲ イコインカル(助産)2
・愛子の初産婆
・産婆の道具
・ケマコキルについて
・妊婦の姿勢
・炭焼きのお茶
・トイトイ(土製)のポロニマ(大きな器)
Ⅳ 療術(2)
・キナライタ(キンミズヒキ) 腹痛みのクスリ
・おっぱいにがんび 女の道のホルモン
・人参の黒焼きとエフルペシキナ(コタニワタリ) 婦人病のクスリ
・鹿と熊の心臓と鶏の血 内臓のクスリ
Ⅴ イコインカル(助産)3
・うちのだんなと話して来た
・人間の魂はどこにあるかって信念で
・眠り産にかかったら眠らせない
・出血しても前置胎盤はめったにない
・ふたいろ(二種類)の子宮
・おっそろしい産婆さんの内診
・子宮を縛ってほどくのを忘れた話
・自分の手に負えない時は
Ⅵ 療術3
・ヨモギの葉と川柳の皮 ウエペレケ(あかぎれ)と腫れ物のクスリ
・柳の枝のお灸 神経痛・リュウマチに効く
・兄から聞いた鍼(ハリ)の話
・カイクマ(丸太ん棒) オテッテレケ(踏み踏み)
Ⅶ イコインカル(助産)4
・産婆の座り方 肛門脱の予防といきみの補助
・骨盤を開かせる足技 顎への指技・1
・顎への指技・2 盆の窪みへの指技
・頚椎・胸椎等への指技 逆子に対する技術
・臍(へそ)の緒 蘇生術 娩出後の嬰児の診察
第二部 カムイ(神さま)から伝えられたもの
Ⅰ ウエインカラクル(観自在者)としてのめざめ
・青木愛子の人となり
・愛子のウエインカラ(千里眼)
・ウエインカラの始まり
・相手の陰部まで見える?
・距離と時間を超えて見える
・顕微鏡のように見える
・見えないはずのものが見える
・概念が映像として見える
・愛子にも見えない世界
・カムイが降りて来て
ツス(降霊現象)
テケイヌ(診察の特殊な掌)
ウエポタラ(呪術)
ウエインカラ(千里眼)
イム(イム)
Ⅱ 先祖をたずねて
・祖母(フチ)の思い出
・愛子までの歴代継承者について
Ⅲ 海の向こうから
・ツス(降霊現象)の実験 初代産婆の降霊
・ツスの直後のイム
・補足・歴代継承者について
■
旭川の川村カ子トアイヌ記念館にも行きました。
アイヌの方々の表情は、とても気高いです。
顔には、人生がすべて縮図のように出るのでしょう。
言葉はうそをつけても、顔や体はうそをつけません。
そもそも、うそをつくという概念自体が、顔や体には存在しないのでしょう。
頭や言葉だけが、人間の都合でうそをつける。
そういうことを、昔の人は知っていたかのように、気高く誇り高い表情をされているのが印象的でした。
川村カ子トアイヌ記念館は今年は設立100周年。
つまり、1916年の時点で、すでに失われ行くアイヌ文化に危機感を持っていたわけです。
今年は現地で色々なイベントもされているようです。
人類の古層に興味がある方は是非行ってみてください。
アイヌ文化はほんとうに奥深く気高く、学ぶべきものが多い素晴らしい文化だと思います。
アイヌでの「こんにちは」=「イランカラプテ(irankarapte)」
意味は「あなたの心にそっとふれさせていただきます。」
この感性が素敵ですよね。
昨年見た、民映研(民族文化映像研究所)の「シシリムカのほとりで アイヌ文化伝承の記録」の上映会も興味深いものでした。
○「シシリムカのほとりで アイヌ文化伝承の記録」(2015-10-23)
ヤングジャンプで連載されている「ゴールデンカムイ」(野田サトルさん)も、アイヌ文化が扱われている漫画のようですので、積読してあるのを読むのが楽しみです。
旅って楽しい。
現地に行って空気や土地を感じないとわからないことが、たくさんあります。
人生、学ぶことばかりです。
<補足>
写真はこちらにUpしました。
→○2016年6月旭岳山開き(2016-07-04)
アイヌへの旅、祭りの紹介をありがとうございました。
生命誕生という神事を扱う産婆さん
いなさんのおっしゃるように
赤ん坊は
神そのもののむき出しでやってくるんですね。
現場の雰囲気を味わえるので
私も旅は大好きです。
アイヌの感性を知るために、北海道というひろいひろい空と大地が広がっている空間に行って、いろいろと感じることがありました。
東京のように狭い空間に密集していないですし、精神的にも大きなスペースが生まれるような気がしました。