トランプ米大統領一般教書演説 要旨(産経ニュース 2018.2.1 11:08)
>米国のエネルギーに対する戦争、環境に優しい石炭への戦争を終わらせた。今やエネルギーを輸出している。
正直、環境に優しい石炭って何ぞ?と思ったので、調べてみました。
「環境に優しい石炭」でgoogle検索すると、1位で「石炭は環境に優しい 日本の発電技術、異説に挑む」(日経新聞 2017/9/20 18:06)(>煙突からは出てくる煙はまったく見えない。「硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などが取り除かれているので、煙は目視できません」と担当者が胸を張る)(>勿来発電所には1カ月に1回のペースでタイやポーランド、チリなど世界中から電力関係者が訪れるという)、2位で「環境に優しい石炭グリーンテクノロジー-石炭高効率発電技術」(三菱重工)が出てきました。その他日本の環境に優しい石炭発電技術がゾロゾロ出てきます。日本の石炭発電の割合は3割を越えてますし、アメリカもそうでしょうが、相当な技術を有しているようですね。
世界の発電供給量割合の4割以上を石炭が占めます。日本においても石炭発電はCO2排出量がもっとも多い発電方式ですから、絶対的には必ずしも環境に優しいとは思いませんが、現実的に考えて石炭発電が世界から無くならないと考えられる以上、相対的に環境に優しい日本(や恐らくアメリカ)の石炭発電技術が世界に広まることが、極めて重要だと考えられます。タイやポーランドやチリが石炭発電と環境の調和を意識しているのだとしたら、大変結構なことだと思います。まぁでも、CO2排出を抑えることを考えるなら、原子力発電所を外すことはできないと思いますがね。脱原発の人はCO2排出の抑制を全く考えてない人が多いのではないでしょうか?
ところで、特に主要国において特に石炭依存率が高いのが中国・インド・南アフリカです。石炭消費量の断トツトップは中国で世界の半分を占めますが(Coal Information: Overview (2017 edition) - International Energy Agencyの下図参照)、ここではアメリカと並んで中国に次ぐ消費量のインドに注目します。
中国は自国での生産も多いですが、インドは輸入量が非常に多く、世界の石炭輸出トップのインドネシア、2位のオーストラリア、6位の南アフリカからの輸入がほとんどを占めてきています(JOGMEC「世界の石炭事情」参照)。つまり環インド洋の安定と平和がインドにとって死活的に重要です。日本にとってもインド洋はエネルギー・ルートとして重要ですね。
インドは人口も多く、将来的に石炭の需要を増やしていく可能性が高いとも考えられます。環境に調和した日本の石炭技術が導入されれば大きく世界の環境改善に寄与するでしょう。中国は(外国から輸入した)「自前の」技術に拘る印象がありますが、優等生のインドはもっと積極的に環境投資してもいいと思います。それがインドの印象を良くして外資の投資が進むのではないでしょうか?少なくともインドが中国並みに石炭を使ったら、地球がどうなるか分からないところはあると思います。
インドは貿易赤字国ですが、輸出を増やすには例えば輸出量1位の石油製品を伸ばすことが考えられます。恐らく石油の大生産地中東に近くコストが安く質が高い労働力があるのがインドなのだと思います。
石炭に関しては以上です。石炭は環境負荷が否定できないとは思いますが、環境に優しい石炭発電もあって、石炭需要が特に多い途上国でそうした技術が導入されることが重要だと思います。ただ、技術開発もタダではないので、市場の大きさをチラつかせて技術移転を強いてくるような国はどうかと思いますね。
トランプ大統領の発言に帰ると、いろいろ含蓄がありますが、他に一点核政策について言及しておきたいと思います。
>核戦力の近代化と再建が必要だ。できれば使いたくないが、強化することであらゆる侵略行為を防ぐ。いつの日か世界中の国が核廃絶のため一丸となる瞬間が訪れるだろうが、不幸なことに今はその時でない。
これに対して日本の左派新聞東京新聞は2018年1月31日夕刊で「「力による平和」へ核増強 トランプ大統領 一般教書演説」と題した記事で「「核なき世界」理想遠のく」とし否定的な見解を示しています。筆者はトランプ大統領の政策を必ずしも「核なき世界」の理想から遠ざかるものとして捉えるのではなく、現実的なreal politicsの安全保障政策として捉える視点が必要ではないかと思います。
米核戦力 近代化の必要性(WEDGE 2012年9月24日 岡崎研究所)
>米国は、1992年以来、核兵器の爆発実験をしていない。数年すれば、米の核兵器専門家は核実験の経験を持たないことになり、新兵器設計に関与した者もほぼいなくなる。
>ゲイツ元国防長官が言ったように、実験をするか近代化をするかのいずれかによらない限り、信頼性のある抑止力を維持し、核兵器の在庫を減らすことは不可能である。
2012年にもこうした懸念はあったようです。オバマ大統領の理想主義は理解できますが、核大国ロシアはウクライナにおいて、経済成長著しい核武装国中国は対インドや東アジアで積極的に行動していますし、北朝鮮を筆頭に核武装を目指している国のテロ行為は依然として世界の脅威であり続けています。
>米国のエネルギーに対する戦争、環境に優しい石炭への戦争を終わらせた。今やエネルギーを輸出している。
正直、環境に優しい石炭って何ぞ?と思ったので、調べてみました。
「環境に優しい石炭」でgoogle検索すると、1位で「石炭は環境に優しい 日本の発電技術、異説に挑む」(日経新聞 2017/9/20 18:06)(>煙突からは出てくる煙はまったく見えない。「硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などが取り除かれているので、煙は目視できません」と担当者が胸を張る)(>勿来発電所には1カ月に1回のペースでタイやポーランド、チリなど世界中から電力関係者が訪れるという)、2位で「環境に優しい石炭グリーンテクノロジー-石炭高効率発電技術」(三菱重工)が出てきました。その他日本の環境に優しい石炭発電技術がゾロゾロ出てきます。日本の石炭発電の割合は3割を越えてますし、アメリカもそうでしょうが、相当な技術を有しているようですね。
世界の発電供給量割合の4割以上を石炭が占めます。日本においても石炭発電はCO2排出量がもっとも多い発電方式ですから、絶対的には必ずしも環境に優しいとは思いませんが、現実的に考えて石炭発電が世界から無くならないと考えられる以上、相対的に環境に優しい日本(や恐らくアメリカ)の石炭発電技術が世界に広まることが、極めて重要だと考えられます。タイやポーランドやチリが石炭発電と環境の調和を意識しているのだとしたら、大変結構なことだと思います。まぁでも、CO2排出を抑えることを考えるなら、原子力発電所を外すことはできないと思いますがね。脱原発の人はCO2排出の抑制を全く考えてない人が多いのではないでしょうか?
ところで、特に主要国において特に石炭依存率が高いのが中国・インド・南アフリカです。石炭消費量の断トツトップは中国で世界の半分を占めますが(Coal Information: Overview (2017 edition) - International Energy Agencyの下図参照)、ここではアメリカと並んで中国に次ぐ消費量のインドに注目します。
中国は自国での生産も多いですが、インドは輸入量が非常に多く、世界の石炭輸出トップのインドネシア、2位のオーストラリア、6位の南アフリカからの輸入がほとんどを占めてきています(JOGMEC「世界の石炭事情」参照)。つまり環インド洋の安定と平和がインドにとって死活的に重要です。日本にとってもインド洋はエネルギー・ルートとして重要ですね。
インドは人口も多く、将来的に石炭の需要を増やしていく可能性が高いとも考えられます。環境に調和した日本の石炭技術が導入されれば大きく世界の環境改善に寄与するでしょう。中国は(外国から輸入した)「自前の」技術に拘る印象がありますが、優等生のインドはもっと積極的に環境投資してもいいと思います。それがインドの印象を良くして外資の投資が進むのではないでしょうか?少なくともインドが中国並みに石炭を使ったら、地球がどうなるか分からないところはあると思います。
インドは貿易赤字国ですが、輸出を増やすには例えば輸出量1位の石油製品を伸ばすことが考えられます。恐らく石油の大生産地中東に近くコストが安く質が高い労働力があるのがインドなのだと思います。
石炭に関しては以上です。石炭は環境負荷が否定できないとは思いますが、環境に優しい石炭発電もあって、石炭需要が特に多い途上国でそうした技術が導入されることが重要だと思います。ただ、技術開発もタダではないので、市場の大きさをチラつかせて技術移転を強いてくるような国はどうかと思いますね。
トランプ大統領の発言に帰ると、いろいろ含蓄がありますが、他に一点核政策について言及しておきたいと思います。
>核戦力の近代化と再建が必要だ。できれば使いたくないが、強化することであらゆる侵略行為を防ぐ。いつの日か世界中の国が核廃絶のため一丸となる瞬間が訪れるだろうが、不幸なことに今はその時でない。
これに対して日本の左派新聞東京新聞は2018年1月31日夕刊で「「力による平和」へ核増強 トランプ大統領 一般教書演説」と題した記事で「「核なき世界」理想遠のく」とし否定的な見解を示しています。筆者はトランプ大統領の政策を必ずしも「核なき世界」の理想から遠ざかるものとして捉えるのではなく、現実的なreal politicsの安全保障政策として捉える視点が必要ではないかと思います。
米核戦力 近代化の必要性(WEDGE 2012年9月24日 岡崎研究所)
>米国は、1992年以来、核兵器の爆発実験をしていない。数年すれば、米の核兵器専門家は核実験の経験を持たないことになり、新兵器設計に関与した者もほぼいなくなる。
>ゲイツ元国防長官が言ったように、実験をするか近代化をするかのいずれかによらない限り、信頼性のある抑止力を維持し、核兵器の在庫を減らすことは不可能である。
2012年にもこうした懸念はあったようです。オバマ大統領の理想主義は理解できますが、核大国ロシアはウクライナにおいて、経済成長著しい核武装国中国は対インドや東アジアで積極的に行動していますし、北朝鮮を筆頭に核武装を目指している国のテロ行為は依然として世界の脅威であり続けています。