「支えたい自分」を「支える自分」
私の入院前に、妊娠の分かった子が一人。
詳細は書けないけれど、相手の状況や、国籍のことやいろんな状況を想定しながら、自分に何ができるのか、どんな援助ができるのかを考えました。
たとえば、本人がシングルでも産むということになったら…。
彼女のために、生まれくる子どものために、何ができるのか。
考えすぎて訳が分からなくなって、そのうち、いざとなったらホームに赤ちゃんが一人くらいいてもいいかも(>_<)とか思ってみたり…。
また、いざとなったら、私の家の部屋が一部屋空いてるし、うちの養子になってしまえば国籍も何とかなるし…、娘もいいよと言ってくれてるし、とか…。
そんなふうに「子どもを支えたいと願う自分」は、そんなに変化することはありません。
ただ、癌という病名はつい「残り時間」を考えてしまうことになり、生まれくる子どもを支えたいなんてすごく無責任なことに思えてきたりもします。
そのとき、揺らぐのは、「自分」を「支える自分」でした。
「子どもを支えたいと願う自分」は確かにいるのだけれど、その自分を支える自分が、今回は癌によってぐらついてしまうのでした。
◇
今まで子どもとの関係がうまくいかないとき、「自分で自分を助ける気持ちがないなら、私が何を言っても仕方ない…」と思ってきたことが、頭をよぎりました。
「自分で自分を助ける」という言葉。
べてるの向谷地さんの言葉を思い出していました。
病院で暴れて公衆電話を壊して落ち込んでいる河崎君と向谷地さんとの会話。
◇
《……これが順調な苦労なんだよ。
こんなはずじゃなかったと思っているかもしれないけれど、残念ながら、これは順調すぎるほど順調なんだよ。つらいときや困ったとき、どうしても今まで使い慣れた得意な方法に依存してしまう。
でも、それが一番使いたくない方法だとしたら、ほかの方法を見いだして、得意にならなくてはいけない。
河崎君が、君自身を助けたくても、今は、助け方が分からない状態だと思う。
きょうのやり方は、河崎君自身に対してもっとも申し訳ないやり方だね。
きょうは、だれに一番あやまりたいと思う?」
「両親と川村先生……」
「僕は、先生や親にあやまるまえに、本当に土下座してでもあやまるべきは、君自身だと思うよ。」》
(『「べてるの家」から吹く風』向谷地生良 いのちのことば社)
◇
自分を「助ける自分」。
自分に「謝る自分」。
そして、自分を「支える自分」について、改めてちゃんと考えたいと思いました。
たとえば仕事をする自分、学校に行く自分、何かができる自分。
ふだんは、特に意識することもなくほとんどの人ができていること。
それが、ある日揺らぐ。
それを不登校と呼んだり、引きこもりと呼んだりもします。
そこから、自分を助けることができるのは、結局は自分です。
また、障害のある子を分けてはいけないと私がこだわってきたのは、子どもたちのなかの「自分を支える自分」を育てることこそが大事だと思ってきたからでした。
障害を治すとか克服するということを6歳の子どもに迫る前に、いま障害のある6歳の子どもの姿を認めること。
歩けないなら、歩けない自分を支える、「6歳の自分」が育つことを、私は応援したかったのでした。
ひらがなが書けなくても、足し算ができなくっても、それは恥ずかしいことじゃない。
ひらがなが書けない自分を支える、「6歳の自分」が成長していくことを、私は応援したかったのでした。
0点でも高校へ。それは、知的障害をもつ子どもたちに何の配慮も考えられていない、テストの点数が0点だとしても、堂々と高校生する自分を生きること。
その高校生する自分を、「支える自分」を育てる場所が、普通学級というところだったのだと思います。
話が飛びすぎているような気もしますが、とりあえず次の点滴前に書けるだけ書きはじめてみたいと思います。
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