《助け方・助けられ方を知らない社会、あるいは、人権の順番》
私たちは、自分の「助け方」を大事にしない社会に生きてきた…。
ふと、そんなことを思う。
子どものころから、「助ける—助けられる」ことより、「迷惑をかけない」「自分のことは自分で」という「言葉」と「教え」に囲まれて生きてきた。
そして「自分のことは自分で」と言いながらも、「自分を助ける」ことや、「自分に迷惑をかけない」に関しては、何一つ言葉を持たない社会で、私たちは生きてきた。
そうでない、という反論はあるだろうか?
順調な時やがんばれるあいだはいい。どうしても困った時、苦しい時に、「自分を助ける」にはどうすればいいか。
「ああ、それなら、私はこんな言葉をかけられた…」という、「あるある」話はどれくらいあるだろう?
自分の人生を振り返ってみる……。
◇
「困っている人には手をかしましょう」という「単語」は、よく聞く。
でも、私の記憶の中で聞こえてくるのは、「車椅子に触ってはいけません」という声だ。
ふつう学級で、そう言われてきた子どもの顏が、何人も何人も浮かぶ。
もうこの世にいない子どもの顔も浮かぶ。
学校への親の付き添いもある。それも教師たちの意識を明確に表している。
「親は、学校に、迷惑をかけるな」という、強固な固定観念だ。50年前も、今も、変わらない。
「子どもの付き添い」だから、「子どもの話」のように思われてはいるが、ちょっと考えれば違うのが分かる。
東北の震災や原発事故、大阪の付属小学校での事件、増え続ける児童虐待の件数。
年を重ね、多くの事件・事故を知れば知るほどに、学校は「子どもの命を守る」のが基本の仕事だと知る。
でも、学校の中で、「親が子どもの面倒をみるのは疑問の余地なく当たり前」と思える教師の感性は、自分の仕事を浅薄なものにしている。
しかもその自覚がない。
それは、単にこう言っているだけなのだ。
「子どもは、学校に、余計な迷惑をかけるな」
「親は、学校に、余計な迷惑をかけるな」
「私たちは、子どもも、親も、助けるつもりはこれっぽちもない」
そういう先生が、自分に、自分の仕事に、自信と敬意を持てるだろうか?
それが、不思議だ。
「親は学校に迷惑をかけるな」
その意識は、学校が「親のいない子ども」を大事にできないことを示す。
養護施設や里親のもとで暮らす子たちの体験がそれを表す。
もっと象徴的に表すのは、親のいない障害児だ。
この国では、「みんなと一緒の学校に行きたい」と子どもがどんなに思っても、その子どもの意思が尊重されることはない。
条約や法の改正により、どの学校に行くかは、「本人と親」の意思を尊重がされることになった。
でも、「親」がいなければ、子どもの気持ちを聞かれることはない。
「人権」は、順番にしか届かない、か。
なんの「順番」?
助ける順番。助けられる子どもの順番。
子どもの人権にも順番がある社会。
法が子どもを守るとしても、法は一人を守らないとしたら。
制度は人を守るとしても、制度は一人を守らないとしたら。
それでも、「あなたを守るよ」「だから、だいじょうぶ」と伝えられるのは…。
一人の子どもに、伝えられるのは、一人の人。
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