《Kさんへの手紙 2017》
Kさん。前回の手紙にまた書きますと言いながら、長い年月が過ぎました。たぶんKさんの一回り年下だった私が、一回り以上年上になっています。そちらで会うことがあっても、気づいてもらえないかもしれません。
Kさん。2年前に「普通学級の障害児のために知っておきたい大切なこと」という話をする機会がありました。「大切なことって、何だろう?」と考えているうちに、子どもたちの顔が浮かびました。なぜか、もう会えない子どもたちの顔が多く浮かびました。そして、Kさんのことも。たぶん、亡くなった子どもたちやKさんの前で話せることでなければ、「大切なこと」とは言えないと感じていたようです。
今更ながらですが、通級について考えました。あれから三十年が過ぎて、制度や名前は変わりましたが、大切なことは少しも変わりません。
そして、この三十年、Kさんの言葉に助けられてきたことに改めて気づきました。大学を卒業して初めて勤めた「障害児学級」で、初めての「通級」がKさんの長男でした。そのことがKさんの人生で、子どもに対しての一番の後悔だったと知りました。それはただの後悔でなく、より障害の重い弟に同じ思いをさせないための命がけの後悔でした。
ここまで書いてきて、どうしてKさんのことを思い出したのか分かりました。
「普通学級の障害児のために知っておきたい大切なこと」
「普通学級の障害児のために忘れてはいけない大切なこと」
それは、Kさんの「子どもへの思い」そのものでした。伊部さんや純子さんや、私が出会ってきた親の思いそのものでした。
Kさんが、ふたりの子どもの親として大切にしたかったものが何だったのか。障害のある二人の子どもを育てながら感じていた大切なもの。子どもとともに生きている幸せのために手放してはいけないもの。
それを邪魔するものは何だったか…。
Kさん、通級のためのチェックリストを作ってみました。読んでみてください。
そして、また教えてください。私がなにか間違えていないか。
◇
《子どもの「通級」を後悔しないための
チェックリスト》《2017》
① 子どもへの敬意あるクラスなら、「通級」に行きたい子は誰もいない。その本来の子どもの姿と思いを了解しているか。
② 本人が「通級」を望むとき、その子どもの「事情」と「思い」を聞けているか。
③ 担任は、その子をクラスの大切な一員だと考えているか。それとも、他にもっと適当な場所があると考えているか。
④ 担任は、通級している子どもが、安心して戻れる席とクラスの雰囲気を配慮できているか。
⑤ クラスにいじめはないか。その子がいない方がいいという言葉はないかを確認したか。
⑥ 「通級」の「目的と期間」について、担任と親の共通理解はあるか。
⑦ 担任と親は、一年後の子どもの状況の想定を話し合っているか。
⑧ 上記を子どもに説明できているか。
以上
《2017年12月7日作成》
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