「仲間に受け入れられないこと」
それは、子どもをとても不安にします。
仲間に受け入れられないこと、
誰一人、受け止めてくれる友だちがいないこと。
そうした「孤立感」によって、子どもは苦しみます。
「自分に悪いところがあるから」
「自分が勉強できないから」
と、原因を「自分」に探してしまいます。
学校に行きたくない、という子どももいます。
Halもそうでした。
でも、そのとき、親や家族が、
その子どもの苦しみを受け止めてくれさえすれば、
子どもは、自分を仲間に入れてくれなかった「学校」と
徐々に、距離を取ることができるようになります。
でも、その長い「徐々に」の間には、
「みんなは学校に行っている、
でも、自分は行けない」と、迷い続けるでしょう。
「行きたい、行きたくない、
でも行かないとどうなるのか」、
自分自身の迷路をグルグルと行き交うのでしょう。
「本当は、ぼくも、3年1組の一人なんだ…。
(4年1組の一人なんだ…)
(5年1組の一人なんだ…)
(6年1組の一人なんだ…)
だから、運動会には行かなくちゃ…。
だから、修学旅行には行かなくちゃ…と、
楽しみ迷い、悩むことも続きます。
でも、この子どもは、取り返しのつかない
「孤立感」に陥ることはないでしょう。
少なくとも、自分の苦しみを受け止めてくれる親、
兄弟、家族がいるからです。
勉強が苦手でも、運動が苦手でも、集団が苦手でも、
自分が自分であることを、ありのまま十分に認めて、
大事にしてくれる人がいることが、
迷い悩む日々とちゃんと重なっているからです。
そこで守られるのは、ただ「学校に行かなくていい」
ということではありません。
「登校するのが当たり前」という常識(攻撃)から
子どもを「守る」だけではありません。
何より、その子自身の、
いま現実の「自分自身と共に生きること」
「ありのままの自己と共にあること」を支えているのです。
これは孤立の逆です。
一番、苦しく、取り返しのつかない、
「自分自身からの孤立」に陥らないですむように
支えているのです。
「ありのままの自己と共にある」ことは、
その子ども自身にしかできません。
どんなに子どものことを思っていても、
親が代わってあげることはできません。
ただ、子どもにその力があると信じて、
ついていくしかありません。
子どもが、取り返しのつかない孤立感に苦しむのは、
「自分自身」から遠ざけられ、隔てられ、
自分の真実と向き合うことをさせてもらえず、
自分自身から、「逃げている」ときです。
親はそれに気づかないでいることもできますが、
その子自身は、「我が身のこと」として、
自分をごまかすことも、忘れることも出来ません。
その場合には、どんなに勉強ができるようになっても、
いい高校に進学できても、
失われた欠落感を埋めることはできません。
自分自身の真実と共に生きるためには、
苦しいこと、つらいことと、
どうしても向き合わざるを得ない場面があるのだと思います。
誰も、自分からは逃げようがないのですから。
学校に行かなくても、
「障害」のためにできないことがあっても、
「ありのままの自己と共にある」ことは、
幸せなことだと私は思います。
☆ ☆ ☆
PS:
こうしたことを書くとき、
「おれも、いい人になれるかな」
とつぶやいた男の子を思い出します。
親からも見捨てられ…、
学校からも見放され…、
養護施設からさえ拒否された5年生の少年が、
「おれもいい人になれるかな」とつぶやいたあの時、
彼は、「ほんとうの自分の願い」を
言葉にできたのだったと思います。
その言葉を口にすることで、
「ほんとうの自分」に出会ったのだと思います。
誰も信じてくれないと思っていた「本当の自分の願い」を、
やっと、自分に言ってあげることができたのでしょう。
どうしてるかな…。
もう高校生だな…。
高校、行ってるかなぁ…。
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