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① 《ある夜》
深夜2時半。携帯の電話が鳴る。
こんな時間に?……と思いながら、着信相手を見ると1階で寝てるはずの長女から。
「どうしたぁ~?」
「たすけて、なんか虫がいる~~~」
「…はぃはぃ、いま行ってみるね」
「あのね、いま布団かぶっててベッドから動けないから勝手に入ってきて」
「はぃよ」
仕方なくベッドを出て部屋へ。
ゴキブリとかだと探すのも一苦労だなぁと思いながらドアをあけると、「バタバタ~」とモスラの音が部屋中に響いている。
壁をみると、私の手のひらくらいの蛾が暴れていた。
これは確かに寝てられないよなぁ。
そう思いながら、叩き落とし、さっさと部屋の外に捨てる。
「じゃあね~、おやすみぃzzz」
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② 《別のある夜》
夜10時過ぎ、四女が「yoさん、駅前のスーパーまだ開いてるかな」と聞く。
「もうやってないと思うよ」
「リンゴとパイシートがほしいんだけど」
「なんでこの時間に…?」
「だって、明日彼との記念日だからアップルパイ作る♪」
「…二駅先のスーパーなら0時までやってたと思うけど」
「ほんと、行こ」
「……はぃ」
という訳で、自転車で二駅先のスーパーまでリンゴを買いにいく。
帰ってきて彼女が聞く。
「yoさん、りんごってどうやってむくの?」
「へ? 作ったことあるんじゃないの?」
「ないよ。」
でも大丈夫と言いながら、スマホの画面でレシピを見ながらつぶやく。
「『リンゴを煮る』って、お湯沸かすの?」
「……」
…そう言いながら、見かねた三女の助けを借りながら、それらしきものを完成させていた(・.・;)
その彼女が、明日ホームを旅立つ。
きっとこの先ずっと、アップルパイを見るたび、彼女のことを思い出すんだろうなぁ。
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③ 《別のある明け方》
5時ごろ、ドアをたたく音がする。
こんな時間に?……と思いながら、ドアをあけると、二日前にホームに来たばかりの六女がつらそうな顔をしてる。
「眠れない…」
「そっかぁ…」
お互いに半分眠りながらという感じで、リビングで一時間ほど話す。
「ここでがんばらなくちゃ…」
「もう失敗はできない…」
「今度こそ、ちゃんとがんばらなきゃ…」
…彼女のことばは覚えていないけれど、彼女の気持ちの揺れは、そんなふうに私に迫ってきた。
「そんなにがんばろうとしなくても大丈夫だよ」
「そうやって、自分を助けようと思っているあなたがいるんだからきっとだいじょうぶ」
「焦らなくていいから、ゆっくりやっていこ。だいじょうぶだから」
…眠くて自分のことばも覚えていないけれど、そんな言葉を繰り返していたような気がする。
あれから一か月が過ぎて、彼女は美容室で楽しそうに働いてる。
でも、この一か月の間に、次女と五女は家出していなくなってしまった。
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ここには書けないいろんなエピソードがあるけれど、みんなせいいっぱい生きてる。
私がしてあげられることといったら、虫を片づけたり、買い物につきあったり、ただ話を聞くくらいしかできないけど、みんな幸せになってくれるといいなぁ。