高齢者77人死亡
(2011年7月2日 読売新聞)
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、同原発からおおむね30キロ圏内にあり、移動を余儀なくされた特別養護老人ホームと養護老人ホーム計12施設の入所者826人のうち、77人が事故から3か月以内に死亡していたことがわかった。
12施設の昨年同期の死者は25人前後で、この約3倍に上る。各施設では移動や避難生活での疲労、環境変化などが多くの死につながったとみており、少なくとも23人の遺族が自治体に災害関連死の申請をしている。今後、東電による賠償の問題も浮上するとみられる。
30キロ圏内にある15施設(特養ホーム13施設、養護老人ホーム2施設)のうちの11施設と、30キロ圏のすぐ外側にあり、圏内施設と同法人が運営する1施設の計12施設が取材に回答した。
◆
一時帰宅中、焼身自殺か
福島
毎日新聞 7月1日(金)
1日午前7時45分ごろ、福島県川俣町山木屋半蔵山で、同所に住む女性(58)が自宅近くの空き地で倒れているのを夫(61)が見つけて119番した。
伊達地方消防組合中央消防署南分署員が駆け付けたが、女性は全身に大やけどをしており間もなく死亡が確認された。
一帯は計画的避難区域で、同分署によると女性は一時帰宅していた。
福島県警は、現場の状況などから焼身自殺の可能性もあるとみて調べている。
親類の男性(55)は「昨日(6月30日)は避難先の福島市の土湯温泉から一時帰宅し、草刈りをしていたようだ。
5月に電話で話したのが最後。いつもより暗く、自宅を離れることへの不安を口にしていた」と沈痛な表情だった。
別の親類の男性(60)は「明るく笑顔の絶えない人で、家族は『原発事故が原因ではないか』と言っていた」と話した。
同町山木屋地区は東京電力福島第1原発事故後、住民の被ばく放射線量が年間20ミリシーベルトを超えるおそれがあるとして国から計画的避難区域に指定され、5月15日から住民が避難している。
【長田舞子】
◆
原発の再開遅れを「風評被害」と発言
九電会長
朝日新聞 2011年7月1日
九州電力の松尾新吾会長は30日、朝日新聞の取材に対し、東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに定期検査中の原発の運転再開が遅れていることについて
「車検の済んだ車に乗るなというようなもの。
エモーショナル(感情的)な側面がもたらした一種の風評被害」と述べた。
松尾会長は震災の復興を九州から支援するには、電力の安定供給が不可欠と指摘。玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開の必要性を訴えた。
再開の遅れで九電の燃料費負担は1日6億円程度増えており、松尾会長は
「燃料費をむだづかいしている。
国家的マイナスだ」としている。
松尾会長は「九州が東日本の経済を支援する役割を果たすべきだ。余った電力があれば、よろこんで他社に電力を提供したい」と表明。関門海峡で本州とつながる高圧の送電線を通じて、最大数十万キロワットを送る考えだ。
(大畑滋生)
◆
(yo)
「国家的マイナス」
自分の家で最後まで暮らすことができないお年寄りが、せめて生まれ育った町の高齢者施設で、人生の最後の日々を送ることを、原発事故は奪いました。
記事では、77という数字で語られるお年寄りの、一人ひとりに、70年、80年、90年の人生があり、家族があり、残された年月の人生がありました。
一時帰宅した家の草刈りをしていた58歳の女性は、どんな思いで草を刈り、家の周りの景色を眺めていたのだろう。
この一カ月余り、伸びほうだいだった草を刈りながら、どんなことを思い出していたのだろう。
九州電力会長という裕福な老人は、この人の焼身自殺も、「エモーショナル(感情的)な側面がもたらした一種の風評被害」だと思うのだろうか。
6月7日のブログで、福島から県外に引っ越したあーちゃんのことを載せました。
あーちゃんが新しい学校で、新しい友だちと楽しい学校生活を送っていること、に私はほっとしていました。
そしてまた、里帰りしたときの、あーちゃんと同級生たちの絆に、うれしくなっていました。
私もまた、九州電力の会長と変わらない鈍感さを、十分に持ち合わせています。
6月29日のありんこさんのブログで、「バスで、バスで、行くんだよ。見学!」と、あーちゃんが楽しそうに過ごしている様子が嬉しくてコメントしました。
「子どもの笑顔で、私が幸せになれる」と。
その後に、ありんこさんが、前の学校への里帰りのエピソードを教えてくれました。
【先日、前の小学校の発表会へ行った帰り車の中で、娘はしきりに「帰ろー…帰ろー…。」と言うの。
こっちに向う車の中で「いま帰ってるとこだよ」と答えるのだけど。
「帰ろー…。」って小声で言い続けてた。
本当は前の小学校のみんなのいるあの町へ帰りたいんだな~というのがわかったけど、「これからはこっちがお家なんだよ。」っていうしかありませんでした。】
何も分かっていないのは、私です。
「発達の遅れ」「知的障害」と、勝手な言葉を、小さな子どもたちに使いながら、50年以上「健常者」とか「先生」とか「親」をやっていながら、あーちゃんの「帰ろう」という気持ちを、みないでいた自分は情けないなーと心から思います。
あーちゃんたちを、普通学級から分けよう、分けようとするこの国の教育、特別支援教育に疑問を持たない人たち。
私は、その人たちが「教育したいもの」は、あーちゃんの「帰ろう」という思いとは別のものだと主張しているのに。
私もまた、あーちゃんの「帰ろう」という思いを、感じないようにしていたのだと思います。
感じてあげても、どうにもならないもの。分かってあげても、どうにもしてあげられないもの。そうしたことを、私たちは、「なかったこと」にしてしまう癖があります。
自分が「無力」だと、感じたくないのかもしれません。
大切な子どもに、何もしてあげられない自分を、認めたくないのかもしれません。
だから、何もなかったことにしたいのかもしれません。
だから、あーちゃんが新しい学校で楽しくやっていること、新しい友だちができたこと、そうしたことだけを、感じていたかったのかもしれません。
【り】「理解は後からついてくる」
私たちは、いくつになっても、子どもから「教えてもらう」しかないことが、たくさんあります。
一方的に、「遅れている」と診断して、「特別に支援の教育をしてあげよう」なんて、どうしたって言えないよな、と思います。
そうした姿勢と、「余分な金がかかること」=「国家的マイナス」という発想は、つながっていると、私は思います。
あーちゃんの「帰ろう」という言葉を聞いて、福島から千葉に避難していて、自分から海に入っておぼれて亡くなった女の子の記事を思い出しました。彼女も、あーちゃんと同じように、「帰ろう」という言葉が心にはいっぱいあふれていたのだと、あーちゃんの言葉に教えられます。
あーちゃんの「帰ろう」という言葉と思い、そうした無限の思いが、福島の原発事故とつながっていることを、私は忘れないでいたいと思います。
原発事故で恐いのは、放射能だけでなく、人間の生活、人間の思い、関係のすべてを壊してしまうことだと思います。
◆
【27日午前9時半ごろ、千葉県鴨川市太海の県立鴨川青年の家近くの海で、東京電力福島第1原発事故により、福島県から同施設に避難している、小学6年の久保田菜々さん(11)がおぼれているのが見つかった。
連絡を受け、駆けつけた漁船が沖合約300メートルで久保田さんを発見、救助したが、間もなく死亡が確認された。県警鴨川署は久保田さんが自分で海に入っておぼれたとみて原因を調べている。】http://kids.ap.teacup.com/alicemiller/270.html
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