「あほリズム」
(533)
日本とその周辺諸国との対立の再燃は、日中、日韓、日朝、日露
と、くすぶっていた過去の燃えカスに火が付き始めているが、しか
し過去の怨恨から何か未来に向けた新しい政治的展望が生まれると
は到底思えない。我々が過去に執着するのは、未来を志向すること
ができないからかもしれない。ところで、話は逸れるが、加害者の
口から「未来志向で行こう」などと言われると、被害者は違和感を
抱くに違いない。過去を憂う被害者に対して加害者が「未来志向」
を説くのは不遜である。安倍総理は韓国に対して「未来志向」を連
発したが、それは韓国には受け入れられないだろう。それどころか
、彼らはますます過去に固執するに違いない。言葉は憎しみを増幅
することができても、愛を生むことはできない。愛国心を訴えれば
愛国者が増えると思っている。安倍総理はその鈍感さに気付いてい
ない。彼はあまりにも頭を下げるのが下手くそで、言い訳がましく
て相手の心に届かない。その辺の感情の温度差が再燃の火元なのか
もしれない。
ところで、未来が志向できずに過去を糺そうとするのは日本周辺
だけにとどまらず、米ロ関係、中東情勢、ブレグジットに揺れるE
U、さらには香港の帰属を推し進める中国など、世界中が近代文明
の限界に直面していて、過去の対立が再燃している。つまり、われ
われは前が見えないから後ろを振り返る。