仮題「心なき身にもあわれは知られけり」
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ニーチェは、世界の底流を流れるのは「ニヒリズムの歴史」だ
と言い、たとえばキリスト教的二世界論(理想の世界と現実の世界)
は「ニヒリズムの歴史」からの救済にほかならないが、そもそも
形而上学(Meta=physics)的思惟は世界を二元化して捉え、真の世
界から捉える現実の世界は仮象の世界に過ぎないので「ニヒリズ
ム」に陥らざるを得ないと考えて、そこで、
「われわれはニヒリズムに陥らないために芸術を持っている」
とまで言う。つまり変化する《仮象の世界》を固定化した「真理」
によって捉えようとする形而上学的思惟、つまり《理性》は決して
変化する《存在の意味》を捉えることはできない。
(つづく)