ご存知のように、中平穂積(なかだいらほづみ)さんは、新宿で長年、『DIG』や『DUG』というジャズ喫茶を経営し、さらには高名なるジャズフォトグラファーである。
ジャズ好きな人ならば、おそらく誰もが中平さんの写真を目にした事があるはずだ。
たとえ、中平さんが撮った写真とは気付かなくても

最初に中平さんをお見かけしたのは2004年6月。
長浜市での浜田博行と古谷充の双頭クインテットのライヴに行った折、たまたまそのライヴに合わせてジャズ展が開かれていて、その一環として中平穂積写真展も開催されていた。
写真展のことは事前に全く知らなかったのだが、例によって、会場に早く着き過ぎて、ライヴ開演前に時間を持て余したワタクシは、これ幸いと写真展を鑑賞した。
写真展の会場内で、地元の人だろうか、来客者に要請されて一緒に記念写真に応じている中平さんのお姿を見た。
この時、中平さんのお姿を拝見したのが初めてだったが、情けないことにさほどの持ち合わせも無かったため、写真集を買うことができなかったのがやや悔しかった。
その日のライヴの途中で、中平さんは古谷充にステージに呼び出されてしばし対談する一幕もあった。
それから4年後、つまり2年前の5月、ようやく中平さんの写真展に出かける機会があった。
その初日のオープニングパーティーを兼ねた、グレース・マーヤのライヴの開演前に購入した写真集に目の前でサインをしていただいた。
だが、それから約2週間後に、予想もできない事態に巻き込まれた。
売りに出しても3年間買い手のつかなかった、極めてアヤシ気なヤツ等が所有する隣のアパートから出火して、ワタクシの家も類焼してしまったのだ。
消火活動の放水のせいで、中平穂積さんの写真集も被害に遭った。
ビショビショのグシャグシャになってしまったのだ、、、、、
写真集のページをめくる機会は、ほとんどないままに、、、、、、
火元のアパートの所有者からは、いまだに一言の謝罪も無ければ連絡も無い。
それどころか、オンボロのミツオカから、これみよがしにベンツに乗り換えてふんぞり返っているらしい。
インテリアショップやらエステやらなんやらの失敗で抱えた借金は、返済したのだろうか?
火の無い所に煙は立たず、、、、、、?
さて、そんな輩にめちゃくちゃにされてしまった中平さんの写真集だが、絶版になっているわけではないので買い直すことはいつでもできた。
書店で取り寄せる事も、ネット通販で購入する事も可能だった。
が、どうせならば中平さんにサインしていただかないと、意味が無いのだ。
なにしろ、中平さんは本宮町出身の方で、同県人のワタクシにとっては郷土の偉人の一人である。
だから、いつかどこかで、ワタクシが行く事ができるエリアで中平さんの写真展が開催されたならば、是非とも行かなければならない、是非とももう一度写真集にサインをいただかねばならないと思いながら、なかなかその機会をつかめなかった。
だが、ついに、つかんだのだ。
中平さんの写真展が、大阪で8月17日~22日にかけて開催された。
(あ、既にあれから3ヶ月経っている。またもや、ナマケモノの本領発揮である。まあ、このまま黙っていては伝えられないので話を続けるが、)
事前に会場のワイアートギャラリーに電話して、中平さんがギャラリーに滞在されている日時を確認した上で、大阪北区堂山町へ。
たまに気まぐれを起こして博物館や美術館へ行くことはあるが、ワタクシにとってギャラリーという所はどうにも敷居が高くて、入り口に立つだけでドギマギしてしまう。

しかし、この日は待ちわびた『中平穂積写真展』の初日なので、何があっても入場しなければならない。
ギャラリーに入ると、大きな写真パネルをたくさんレイアウトした店内のテーブル席では、中平さんは甚平姿の男性と談笑中で、

お二人を遠巻きにしながら、2度目の購入となる写真集と並べて販売されていた高平哲郎氏編集の『新宿 DIG DUG 物語』という本を購入して、サインをお願いした。
サインしていただきながら、ワタクシの居住地と2年前の写真展で手に入れた写真集が火事でダメになった事をお話しすると、随分と驚かれたようで、何かを探している様子で、一旦、奥のオフィスに行ってしまったのだが、奥から手にしたポストカード(もちろん中平さん撮影)を1枚おまけにつけていただいた。
せっかくだから、展示されている写真について何か感想を述べるなり質問しなければ、と思いながら、ワタクシの口をついた言葉というと
「これらの写真は、ステージからどれくらいの距離で撮影するのでしょうか?」
という、我ながら全くもってつまらん質問をしたものだと思うが、展示されている写真パネルを指差しながら、
「撮影する距離はその時によって違いますが、あの写真やこの写真はステージのすぐ前あたりで、あそこのカウント・ベイシーの写真は、東京厚生年金会館の2階席から撮ったんです。」
とのお答えをいただいた。
そうかぁ~
カウント・ベイシーがステージ上で3輪車をこいでいる、あの有名な写真は東京厚生年金会館の2階席から撮った物だったのか~
と、勉強させていただいた。
そして、2年前に写真展とライヴをやった会場で、再来年に再び写真展とグレース・マーヤのライヴを計画しているという予定も教えていただいたのだが、あまりゆっくりする時間が無かったのでこの辺でおいとまとなった。
どうかいつまでもお元気で写真を撮り続けていただきたいと思いながら、ギャラリーを後にしたのである。
この時の中平穂積写真展は、TAKAO FUJIKURA のジャズグラブログにも紹介されている。