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『メキシカン・スーツケース』-ロバート・キャパとスペイン内戦の真実-70年ぶりの発見ネガが語るものは

2013-10-20 23:44:34 | 最近見た映画


                 【2013年10月19日】   京都みなみ会館

 2007年に70年ぶりに、かつて『スペイン内戦』でロバート・キャパら3人の戦場カメラマンが撮影したネガフルムが、メキシコで発見された。70年ぶりにネガ・フィルムが良い保存状態で発見されたというのも“奇蹟”に近いが、どうして《メキシコで》と考えると不思議な感じがする。しかし、映画を見るとその謎が解ける。
(『スペイン内乱』と呼ばれることもあるが、ここで使われている『スペイン内戦』という方が、《そこで起こったこと》を正しく伝えると思われる。)


 1936年に、フランスに続きスペインにも人民戦線内閣が成立したのに伴い、《共産化》をおそれた保守勢力-右派や地主・旧貴族・カトリック教会などが、クーデターを起こしたフランコ将軍などの『反乱軍』し支援し、もう一方の人民戦線側の『共和国軍』と国を二分した戦争が3年にわたって続けられたもので、1939年に、ナチ・ドイツのポーランド侵攻に始まった第二次世界大戦の《前哨戦》という位置づけもされる。

   


                               

 このスペイン内戦には、『国際旅団』として『人民戦線』側に派遣された《兵士》の中に、『誰がために鐘はなる』を書いたヘミングウェイや後のフランスの閣僚となったアンドレー・マルローがいたりして、国際的にも取り上げられ《有名》なった。ファシズムを許すかどうかの戦いと言われたが『人民戦線』側の内部事情も複雑だったようだ。


 今ここでは、その複雑な事情は置いておいて、「この映画」と戦争の悲惨さを伝えようとした『戦場カメラマン』の方に話題を移そう。


 映画について、カタログに
  『メキシカン・スーツケース』は、メキシコで2007年に発見された3つの箱に関する物語だ。第二次世界大戦の
   初めの混乱のさなか行方知れずとなっていたこの箱の中には、伝説的な写真家、ロバート・キャパが撮影した
   スペイン内戦の写真のネガが数多く入っていた。70年の時を経て発見されたその箱はやがて、「メキシカン・
   スーツケース」という名で知られるようになった。
    パリのキャパのスタジオから消えたネガがどこかに残っているという噂は、長い年月の間に渡ってささやか
   れていた。この映画にも描かれているように国際写真センター(ICP)の創設者でキャパの弟でもあるコーネル・
   キャパによりその探索は続けられていた。そしてついに126本のロールフィルム―4500枚のネガが入った「メキ
   シカン・スーツケース」が発見されることにより、それは伝説から現実の事件として注目を浴びることとなる。
   そこにはキャパが撮った写真だけでなく彼と同じくスペイン内戦を取材した仲間の写真家ゲルダ・タローとデヴィ
   ッド・シーモア“シム”の写真が多く含まれており、あらためて3人の写真家の足跡がたどられることになった。

 との解説がある。


                   
                              【ゲルダ・タローとロバート・キャパ】


 今年の3月頃だったか、『NHKスペシャル』で作家の沢木耕太郎が、ロバート・キャパの《出世作》『崩れ落ちる兵士』の《真実》に対して疑問をなげかける番組があった。
 それによると、その撮影の瞬間の現場にはキャパとタローのふたりが居て、最終的にはタローがシャッターを切り、しかも《崩れ落ちた兵士》は撃たれても死んでもいないという推理だ。それが、その後のキャパの《生き方》(あるいは《死に方》)を決定づけたと言うのだ。そうかも知れないし、なかなか面白いと思った。


                                      
                                                   【崩れ落ちる兵士】



 しかしそうだからと言って、キャパの『戦場カメラマン』としての意義が損なわれることも、彼を非難することもできないと思う。

 キャパもタローも、もう一人のシーモアも、いずれの3人もユダヤ人だった。ナチから迫害を受けドイツ国内から脱出していた。ナチの独裁とファシズムに心底反対してスペイン戦線にのりこみ、人民戦線側の立場から写真をとり、世界に訴えかけたはずだ。

 今回の映画では、どんなフィルムが発見されたか、その辺の状況までは分からなかった。NHKスペシャルで推理された内容に関われ事も含まれていたのだろうか、映画を見た限りでは分からない。
 ただ、フィルムがフランコ独裁の追撃を避け、メキシコに亡命した『スペイン人民戦線』の要人の誰かに預けられ、海を渡り保管られという事実から、ファシズムを許さないという人民戦線側に立って《必死の思い》で撮影されたことは間違いない。


                                         

 ナチス・ドイツとムッソリーニのイタリアという2つのファシスト大国の支援を受けていたフランコ反乱軍に対し、イギリスと人民戦線政府のフランスは共に《中立的な立場》をとり、わずかソ連とメキシコの2カ国だけが人民戦線を支援したという。人民戦線側の敗北が決定的になった時、亡命受け入れを表明したのはメキシコだけだったという。

 だから、メキシコなのだ。教科書にはそんなことは少しも書いていない。アメリカに好きなように搾取だけされ、《貧困》のイメージしかなかったメキシコだったが、そういう歴史があったのだ。


 戦場カメラマンは、人民の側、虐げられた者の側、弱い者の立場に立って、そうした人々の表情を映し、いみのない殺戮を告発し、戦場のむなしさをカメラに収め、世界に訴えかける。

 ベトナムで無くなった沢田京一もそうだった。シリアで昨年無くなった山本美香さんの事は記憶に新しい。彼ら・彼女たちは死ぬつもりで戦場に行っているのではない。真実を伝えたいために現場に行っているのだ。


 それに比して、最近の報道機関、ジャーナリストのふがいなさは情けなくなってくる。確かに、大企業・スポンサーに首根っこを押さえられ、【自分の生活を考えたら】身動きが取れなくなるというのだろうが・・・。


 そういう自分も、【ふがいないボクは空ばかり見て】いないで、何とかせにゃー!と思うのだが。





    『メキシカン・スーツケース』-公式サイト

    『スペイン内乱写真集』のサイト



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