【 ２０１８年６月２２日 】 京都シネマ
片田舎の村はずれの道路に突如現れた３つの立て看板。娘をレイプされたうえ惨殺された母親が、捜査の一向に進まない警察に対して行った怒りの意思表示だった。
母親の行動が《半端じゃない》ところが、この映画の面白いところだ。それに対峙する、署長をはじめとする警官も個性豊かで、みな形に納まった《良く出来た人格》でないところがいい。
ただ、署長だけは違っていた。末期がんを患っていて、この先短いのを自覚しているところを、ミルドレッド（母親）の「生きているうちでないと意味がない」という言葉に反応して、予想外の行動をとる。
この署長の動向は何かを連想させた。『生きる』の渡辺課長（志村喬）が、かつての部下の小田切と遭遇して以降、その元気さに触発され気が付いた『生きる意味』と、渡辺課長自身の行動の変化である。この署長の行動だけが、この映画の中で、他のキャラクターとは違う異質なものを感じさせた。
署長のミルドレッドに対する《自重を促す》言葉にも耳を貸さず、ミルドレッドの行動はさらにエスカレートする。
《やり過ぎでは》と心配する気持ちをよそに、それぞれの個性がぶつかり合う。
息をもつかせぬ時間が過ぎ、どう纏めるのかと思ったが、余韻をに残してラストシーンを迎えた。
ハラハラドキドキの興奮と緊張の２時間だった。
『スリー・ビルボード』－公式サイト
