あっという間に読み終わった。
面白かったと言える。おさかさんがおっしゃるように「出口のない海」よりも、主人公の気持ちに納得出来るところもある。
物語は警察から始まる。最初は、連続幼女暴行事件の犯人について話しが進のかと思わせて、実はその時に自主してきた主人公の梶の事で話が進んでいく。
取り調べをした指導官(踊る大捜査線でいう室井さんみたいな立場か)
検察官
新聞記者
弁護士
裁判官
刑務官
最後に指導官とキーパーソン
それぞれが、妻殺しで自主してきた、梶の瞳に吸い込まれるように、事件と関係がある部分から、自分が置かれている立場の問題点に向き合っていく。
この本が読みやすいのは、きっと、そういう一人ずつの短編のように話が進み、引き継がれて行くからだろう。
アルツハイマーの妻に頼まれての殺人、仕事にのめり込んでの離婚、生え抜きと中途採用。介護を妻に頼んでの単身赴任。死別を経験した定年まで10年の一人暮し等、あまり詳しく書くと読む楽しみが無くなってしまうので、この辺でやめにしよう。
誰もがいつ自分の身にふりかかっても不思議ではない問題。梶の澄んだ深い瞳は一種の鏡なのかもしれない。
テーマは、貴方は誰の(なんの)ために生きていますか?
惜しいのは、息子の死因が出るのが早過ぎて、ネタバレが早過ぎる所と、W県W市という地名。(これは「出口のない海」のA大学でも感じた。いまいち感情移入が出来ないのだ)事件が事件だけに、東京以外でないとダメだし、特定の地名ではやりにくいのと、ウチの県はそんなんじゃない!という反感対策なんだろうけど…小説なんだから良いじゃん。
同じ作者の「クライマーズハイ」は本を読んでおらず、佐藤浩一がやっていたドラマでしか見ていないが、あれも結構面白かった。
かい摘まんで映像の原作にしやすい作品を書く作者なのかもしれない。
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