今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

国産なす消費拡大の日

2009-09-17 | 記念日
日本記念日協会で9月17日の記念日を見ると 「国産なす消費拡大の日」というのがあった。その説明には”冬春なす主産県協議会が2004(平成16)年2月9日に制定したもの。4月17日の「なすび記念日」の17日を、毎月なすの消費を増やす日にしようという”ことで設けたらしい。 最近は、このような企業や団体の広告のための記念日がやたらと多くなったが、私は、ブログのネタとして戴き、今日はナスについて書こう。
「ナス」はナス目・ナス科の植物 (双子葉植物合弁花類)で、トマト、トウガラシ、ジャガイモ、タバコなどと同じ仲間。「ナス」の学名は「Solanum melongena L.(ソラナム・メロンゲーナ)」。この学名は植物分類を確立したカール・フォン・リンネ(Carl von Linné)が付けたもので、リンネは植物の分類の基礎が花のおしべめしべにあると確信したというが、ナス科の植物の特徴は花の構造にあり、先ずはオシベ・メシベが1つの花の中にある両性花で1枚の花びら(花冠)が5つに裂けていること、オシベが花冠につくことなどの特徴があるようだ(以下参考の※:「ナス科の花の写真」参照)。
ナスの原産地は、インドの西ベンガル州の州都であるカルカッタからマドラス(現:チェンナイ)に向かってそびえる東ガード山脈あたりと考えられているようだ。この地域での「ナス」は、亜熱帯の暑い気候とモンスーンの雨の多い6月から9月に生育しており、「ナス」の持っている高温と湿度の高い条件で生育して多くの肥料を必要とするという性質は、この生まれ故郷の環境によるもので、現在、日本で栽培されているナスもこの性質が受け継がれているのだそうだ。
学名の「Solanum」とはナス属という意味で、語源となったラテン語のSolamen(ソラナム)には、「鎮静」という意味があるようだが、これは、なす属の植物には鎮痛作用を持つものがあることかららしい。又、「melongena」には、「ウリがなる」という意味がある。
中国の古書「斉民要術」(405~556)にはナスの栽培、採種のことなどが書かれており、また「本草拾遺」(713)には、「隋煬帝改茄日 崑崙紫瓜」という記事があり、多くの品種が記載されていることから、後魏(こうぎ=北魏)時代(4世紀~5世紀ごろ)以前にチベットから崑崙(こんろん)山脈を経て中国に伝わったと考えられているようだ。
古くは「崑崙紫瓜」とか、「落蘇(らくそ)」などと言われていたようだが、江戸時代の博物事典ともなっていた中国・明朝の李時珍による薬学書『本草綱目』の図巻には「ナス」は、菜部 蓏菜類の中に「」として記載されているが、一般には茄子と書かれおり、別名を「茄瓜」、「矮瓜」ともいい、古い名称では「酪酥」とも呼ばれていたようだが、これはナスの味がチーズ類()に似ていたからつけられたものだという。
ヨーロッパではかつて白い卵形のナスが観賞用になっていたことから「ナス」の英語名では「egg plant」と名づけられたようだ。現在使われている「茄」「茄子」の2通りの漢字は中国では「チェズ」と発音されるようだが、それは、英語圏の「Say!cheese(チーズ)」の影響だとか。この中国語の漢字「茄子」が日本でもそのまま使われている。
日本へは、中国から渡来し、すでに奈良時代には栽培されていたといい、日本での最古の記録としては、東大寺正倉院文書に「天平勝宝2年(西暦750年)6月21日藍園茄子を進上したり」とあり、『倭名類聚鈔』(923~930)には「奈須比(ナスビ)」という名前を見ることができ、関西で「ナスビ」と言っているのはここから来ているのだろうが、これが正しい和名で、関東などで単に「ナス」というのは後の女房言葉「おなす」の「お」をとった簡略名か、漢名「茄子」を日本読みしたものであろうが、一般には簡略名だといわれている。
又、『延喜式』(928)の耕種園圃の部には、ナスの栽培のことや、ナスの漬物加工のことなども載っているというからすでに、この当時から日本でも「なす」は欠かせない野菜となっていたようだ。
野菜にはがあるが、近年では品種改良・作型の改良(ハウス栽培など)・輸入野菜の増加などによって、旬以外の時期でも市場に年間を通して供給されるようになり、「なす」も1年中、食品スーパーの店頭を飾るようになった。しかし、露地物の「茄子」の旬は、夏~秋(7月 10月)。俳句の季語では晩夏だ。「冬春なす」に対して「夏秋なす」と言われるものだが、その中でも、これからの秋に出回る「秋なす」が、皮が薄く、実もしまっており種が少なく、一番美味しいと言われている。
「ナス」の諺(ことわざ)で有名なものに、「秋なすは嫁に食わすな」・・・がある。
この諺は、鎌倉時代後期の私撰和歌集『夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)』の「秋なすび醅(わささ=新酒)の粕(かす)につきまぜてよめにはくれじ棚に置くとも」から出たもので、秋ナスは味がよいので嫁には食べさせるなという意味で、嫁を憎む姑の心境を示しているという説がある。しかし、『広辞苑』第三版、「あきなすび」の項)には、「よめにはくれじ」の「よめ」とは「嫁が君(ネズミのこと)」の略であり、即ち「鼠に食わすな」ということであって、後世、姑に対する嫁と解して、秋茄子は「身体を冷やすから」あるいは、「種子が少なくて子種がないと困るから」大事な嫁に食わすな、また、逆に、「種子が多くて妊みやすいから」あるいは、先に挙げた「こんなにうまいものだから」憎い嫁に食わすな、などの諸解を生じたとある。しかし「嫁が君」は正月三が日に出てくるネズミを忌んで言う言葉(以下参考の※嫁が君参照)であり、「鼠に食わすな」は季節が合わずやや疑問がある。
江戸時代の貝原益軒によって書かれた『養生訓』に、「茄子は性が寒冷で多食すれば腹痛下痢をおこし、婦人は子宮を傷める」とある事などから、嫁の体を案じた言葉だという説などもあり、私はこの解釈で使われたと思いたいものだ。(以下参考の※:原文『養生訓』全巻、※:【養生訓の話・飲食等参照)。
又、同書にはも「茄子、本草等の書に、生なるは毒あり、食ふべからず。」とあるように、茄子はそのまま食べるのは良くないが、適當の調理法を行へば、使う用途は非常に幅が広く、煮て良し焼いて良し炒めて良し。さらに漬物良しの食材である。
「なにもなすびの香のもの」・・・とは、特別のごちそうはないが、茄子の漬物くらいは用意してあるので気軽にきてほしい。という意味で、人を接待する時の諺。
明治期の文豪島崎藤村は、1872(明治5)年2月17日(新暦3月25日)、信州・馬籠村 (長野県木曽郡山口村神坂馬籠越境合併により、 2005年2月12日岐阜県中津川市馬籠となった。)に四男として生れた。生家は代々、本陣庄屋問屋をつとめる名家で、あり、彼の晩年の大作で、「木曾路はすべて山の中である」の書き出しで知られる歴史小説『夜明け前』は、米国ペリー来航の1853年(嘉永5年)前後から1886年(明治19年)までの幕末明治維新の激動期を舞台に、父をモデルとした主人公青山半蔵をめぐる人間群像を描き出している。
そんな馬籠宿を大名、旗本、幕府役人をはじめ多くの旅の人が宿泊しあるいは旅の途中で小休止したりしているが、この小説には、兎に角いろいろな食べ物が登場する。そんな中に茄子の新漬が登場する。青空文庫『夜明け前』 第一部上の第一章の一からその部分を少し見てみよう。
馬籠の宿で、伏見屋と言って、造り酒屋をしている金兵衛は本陣の当主吉左衛門を夕食に誘う場面。以下本文より・・。
“「いや、お帰り早々、いろいろお骨折りで。まあ、おかげでお継立(つぎた)ても済みました。今夜は御苦労呼びというほどでもありませんが、お玉のやつにしたくさせて置きます。あとでおいでを願いましょう。そのかわり、吉左衛門さん、ごちそうは何もありませんよ。」
酒のさかな。胡瓜(きゅうり)もみに青紫蘇(あおじそ)。枝豆。到来物の畳(たた)みいわし。それに茄子(なす)の新漬(しんづ)け。飯の時にとろろ汁(じる)。すべてお玉の手料理の物で、金兵衛は夕飯に吉左衛門を招いた。店座敷も暑苦しいからと、二階を明けひろげて、お玉はそこへ二人(ふたり)の席を設けた。山家風(やまがふう)な風呂(ふろ)の用意もお玉の心づくしであった。招かれて行った吉左衛門は、一風呂よばれたあとのさっぱりとした心持ちで、広い炉ばたの片すみから二階への箱梯子(はこばしご)を登った。黒光りのするほどよく拭(ふ)き込んであるその箱梯子も伏見屋らしいものだ。西向きの二階の部屋(へや)には、金兵衛が先代の遺物と見えて、美濃派の俳人らの寄せ書きが灰汁抜(あくぬ)けのした表装にして壁に掛けてある。八人のものが集まって馬籠風景の八つの眺(なが)めを思い思いの句と画の中に取り入れたものである。この俳味のある掛け物の前に行って立つことも、吉左衛門をよろこばせた。夕飯。お玉は膳(ぜん)を運んで来た。ほんの有り合わせの手料理ながら、青みのある新しい野菜で膳の上を涼しく見せてある。やがて酒もはじまった。
吉左衛門さん、何もありませんが召し上がってくださいな。」とお玉が言った。“
吉左衛門のご苦労に応えての金兵衛の夕食への誘いである。ごちそうというより山や畑でとれた素朴なものばかり。木曽の山中では貴重な海のものとして出てくる畳いわしは、静岡などで獲れたカタクチイワシを加工したものであろうが少しあぶってつまみにすると酒に良く合う。接待する客人への環境面での細かい配慮がされている。お玉の夕食の膳は簡素ではあるが、旬の新しい素材を使ったものであり、当時の仲間内でのおもてなしとしては精一杯のことをしているのだろう。私も、現役時代は仕事で良く信州へ行ったものだが、このような山地では、山で採れた野菜が一番美味しい。それを食べるのが楽しみであったくらいである。
茄子の美味しい時期、ナスの紫色の皮の色素に含まれる「ナスニン」(アントシアン系色素)と言うポリフェノールの一種が含まれているそうで、この物質は、体に有害な活性酸素を抑える作用があり、動脈硬化など生活習慣病を防ぐ働きがあるそうだ。色々な調理法があるが、ナスニンは水に溶けやすいので煮物や味噌汁など汁も食べられる料理が効果的らしい。私もせっせと、秋茄子の味噌汁などを食べるようにしよう。
(画像は、ある食品スーパーの農産売り場のナス)
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国産なす消費拡大の日:参考

2009-09-17 | 記念日
参考:
ナス - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AA%E3%81%99%E3%81%B3
ナス - Yahoo!百科事典
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%83%8A%E3%82%B9/
瀬高なす物語-「なすの話」
http://www.hakata-nasu.com/siryou/index.html
カール・フォン・リンネ-Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%8D
季語・茄子
http://cgi.geocities.jp/saijiki_09/kigo500a/398.html
島崎藤村 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E5%B4%8E%E8%97%A4%E6%9D%91
作家別作品リスト:No.158島崎 藤村
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person158.html#sakuhin_list_1
Goodだね!博多なす
http://www.hakata-genki.com/nasu/index.html
斉民要術 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%89%E6%B0%91%E8%A6%81%E8%A1%93
ナスについて〜食品の栄養(野菜)〜「栄養管理&食品」
http://www.fn-h.com/nutrition/j-nasu.html
野菜ものしり博士 - 「なす」(タキイ種苗)
http://www.takii.co.jp/tsk/doctor/ana/main.html
※:本草綱目:菜部 蓏菜類(長野電波技術研究所附属図書館)
http://www.i-apple.jp/honzo/honzo28/
本草綱目 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E8%8D%89%E7%B6%B1%E7%9B%AE
煬帝 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%AC%E5%B8%9D
日本記念日協会
http://www.kinenbi.gr.jp/index2.html
レシピ!秋茄子
http://eat-a-peach.jp/resip1.htm
正倉院- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E5%80%89%E9%99%A2
和名類聚抄 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%AD%E5%90%8D%E9%A1%9E%E8%81%9A%E9%88%94
延喜式 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BB%B6%E5%96%9C%E5%BC%8F
和歌データベース:夫木抄(夫木和歌抄)
http://tois.nichibun.ac.jp/database/html2/waka/waka_i070.html
養生訓 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%8A%E7%94%9F%E8%A8%93
※嫁が君
http://cgi.geocities.jp/saijiki_09/kigo500a/46.html
※:原文『養生訓』全巻
http://www.geocities.jp/rikwhi/nyumon/az/youjoukun_zen.html
※:【養生訓の話・飲食(下)】
http://ww7.tiki.ne.jp/~onshin/yozyo4.htm
※:ナス科の花の写真
http://hhana.biz/kensakun.php?how=ka&id=76
※:茄(中国語を和訳)
http://honyaku.yahoofs.jp/url_result?ctw_=sT,eCR-CJ,bT,hT,uaHR0cDovL2Vqb3VybmFsLm5yaWNtLmVkdS50dy9ucmljbTIvcGFnZXMvc2hvdy5waHA/cXJ5X2R0bmJyPTI5JnFyeV9kc25icj0zMjI=,qlang=ja|for=0|sp=-5|fs=100%|fb=0|fi=0|fc=FF0000|db=T|eid=CR-EJ,