今日(11月18日)の記念日を探していたら、いつも参考にしている以下参考の「今日は何の日~毎日が記念日~」に、毎月18日は「二輪・自転車安全日」と言うのがあった。しかし、その由緒など何も書いていなかったので、検索すると、以下参考に記載の※:「366日への旅記念日編【今日は何の日】」に、以下のように書いてあった。
「毎月8のつく8日、18日、28日がこの記念日です。警視庁が1977(昭和52)年10月8日から「自転車安全日」として定めていましたが、翌年の11月から「二輪・自転車安全日」に改めました。8の字を二輪車に見立てています。」・・と。
二輪車とは、車輪が2つある車両のことであるが、道路交通法(詳しくは以下参考の※:「道路交通法」参照)においては、原付および自動二輪車を指し、自転車は二輪車に含まれていない。
以下参考に記載の※:「警視庁:交通安全のページ」で、今日の記念日のことがどのように書かれているか見たのだが、この記念日のことについての説明はなかったが、最近、二輪車・自転車が脚光を浴びているが、反面、多くの問題を引き起こしているのは確かである。
そこで、「警視庁:交通安全のページ」の”二輪車の死亡事故統計”を見てみると、東京都内の交通事故による死者のうち、2008(平成20)年中の二輪車(原動機付自転車を含む)乗車中の交通事故死者数が、歩行者37,6%に次いで28%の構成率で2位を占め高いことが分る(推移はここ参照)。しかし、自転車も20,1%の構成率となっており、いずれも、四輪車の構成率14,2%を大きく上回っている。又、2009(平成21)年中(6月末)でも、歩行者37、6%、二輪車26、6%、自転車23,4%、四輪車12,8%と構成率の順位は変わらず、四輪車や二輪車が昨年より若干減少しているにも係わらず、自転車は昨年を大きく上回っている。これは、米国のサブプライムローン問題に端を発した昨年のリーマンショック以降、日本の景気低迷から、節約志向が高まり、急速に四輪車、二輪車の使用に比して自転車利用者が増えているからではないだろうか。
自転車は、二酸化炭素を排出せず、空気を汚さないだけでなく、他のどんな乗り物よりも少ないエネルギーで移動できる便利な乗り物であり、排出ガスが発生しないなど、地球温暖化問題が叫ばれる現在、環境への負荷の少ない移動手段として見直されている。
私自身も、ずっと以前より自転車を愛用している者の1人であるが、昨年後半ぐらいから、私の住んでいる神戸の町でも急速に自転車に乗る人が増加ておりし、自転車が町中に溢れ返る状況になってきている。昼間の買物や、夕食後の散歩に出たときなども、混雑する街中を猛スピードで走り抜けたり、携帯電話をかけながらの運転など、交通マナーを無視した運転も目立つようになり、危険な状況に遭遇することも幾度かあり、同じように自転車に愛用している者であっても、今の人達の自転車の乗り方には少々、辟易としているところである。
現在の自転車の原形である安全型自転車ができあがったのは19世紀末期で、この時期に日本への輸入も始まっている。国産化も早く進み、宮田製銃所(宮田工業の前身)が国産第1号を製作したのは1890年(明治23年)のことだという。初期の自転車は高価な遊び道具であった。特にオーディナリー型が主流であった頃、庶民の間では貸自転車を利用することが流行し、度々危険な運転が批判されていた。又、所有できるのは長らく富裕層に限られていた。私の蔵書の中のアサヒクロニクル「週刊20世紀」の1901(明治34)年号には当時の状況が以下のように記されている。
“「ある人は一両年来すさまじい勢いで流行してきたサイクリングを一時の熱のように考えている。またある人は東京市のような悪道路では到底自転車を実用に供することは出来ないといっている。」(5月11日付東京朝日新聞・現代文に直す。以下に同じ)。現代の自転車の源流は1863年にフランスでつくられた前輪ペダル式のベロシベード(画像)。明治になって日本にも輸入され、国産は1893(明治26)年から。この年には、5万6000余台があり、サイクリングがにわかに流行してきた。「非難冷笑が矢のように降りかかるのをものともせず、矢のような勢いで今月は前月より、今日は昨日より流行の範囲を拡張しつつあるのだ。」(同紙)。そして、趣味のサイクリングだけでなく、電話を架設しているほどの商家は2台以上を持ち、役人やサラリーマンなど高級をとって居る者が通勤に、逓信省が電信配達に、陸軍、各官庁も沢山買い上げ、警視庁も各警察署に必ず1台ずつ備えるなど実用車が急速に増加した。こうした実用車だけでなく、自転車好きが自転車競走大会や遠乗り会などを催したりしていた。”そして、“、通行人とぶつかる事故も続発していた。”そこで、“警視庁は、この年(1901(=明治34)年)16条からなる自転車取締改正規則を発布した。歩行者および牛馬諸車を追い越す時はあらかじめ音響気を鳴らして、警戒を与うべし。夜間は灯火点すべし。軍隊又は学生生徒および、葬儀等の列をみだりに横断すべからず・・といった具合(10月25日付け東京朝日新聞)”だったと。・・・・なんと、此の記事を読んでいると、明治時代制定されたこの改正規則が、現代社会でも守られていない感じだね~。
この自転車の普及に伴う本格的な取締規則としては、すでに、1898(明治31)年に7条からなる「自転車取締規則」(警視庁令第20号)を制定し、「べるをつけよ(第1条)。両手をハンドルから離すな(第2条)。急坂では下車せよ(第3条)・・・」などと規制はしていた(ここ参照)のだが、その保有台数の急増に対して、僅か7カ条の規定では到底律しきれず、1901(明治34)年に、全17カ条の取締規則に全面改正したのだ。そして、“通行人は左側を通れと、警視庁が4月21日から非番巡査を要所要所の道路に配置して「そっちそっち」と手を振って指導をはじめた”・・そうだ。
日本では、現在は「車は左、人は右」側通行となっているが、これは、戦後の1947(昭和22)年に制定された旧法の道路交通取締法によるものであり、それまでは人も車も左側通行であった。交通安全のために、車は従来のまま左側通行とし、人は右側通行とする「対面通行」を取り入れたもの。
明治末から大正にかけて自転車の普及と共に国産化が急激に進むと小形荷物の運搬用途や日本人の体格を考慮した、日本独特の実用車が現れたが、この当時一般的であったダイヤモンドフレームの自転車はスカートなどで乗るのに適さなかったため、自転車は男性の乗り物とされていたが、大正期からは富裕層の婦人による自転車倶楽部も結成されるなどし、女性の社会進出の象徴となった。そして、第二次世界大戦後の1960年代半ば頃まで、実用車は日本の自転車の主流であり続けた。だが、戦後、自転車が普及していくと、代わりにそのステータスシンボルとしての地位を自動車が占めるようになった。
しかし、自転車は、運転免許不要で、かつ、価格も手ごろなものとなったことから身近な乗り物として、日本では、通勤・通学に利用されるほか、女性にも乗り易いデザイン、軽量化がなされ日常の買い物などにも主婦達などに多く利用されるようになった。日本では高度経済成長期以降、自動車や単車などの二輪車の急速な普及もあり自転車は、買物だけではなく通勤・通学の場合などでも自宅から駅までとい短距離の利用が多く、放置自転車の問題等も起こっていた。そこへ持ってきて、近年は二酸化炭素排出や高齢化の進展によるマイカーによる運転事故の多発や、飲酒運転に対する罰則強化問題などからモータりーゼーションからの脱却への動きが起こっていたが、先にも書いた通り、ここのところの不況下によって、一層の自動車、単車等の二輪車離れが進み、自転車の数が急増しており、それが新たな問題を引き起してきているのだ。このため、現代でも、警察庁は、自転車の通行環境の整備、交通安全教育の充実、取り締まり強化に取り組んでいる。
日ごろ多くの自転車は歩道を走っているが、道路交通法上では、自転車は「車両」と位置付けられている。つまり「自転車歩道通行可」の標識がある場合を除いて、車道通行が原則となっているのである。しかし、日本ではモータリゼーションの発達以降、車中心の町作りが行なわれ、国も行政も莫大な公共投資を行い車道の拡幅や整備はしても、自転車のための自転車道や駐輪場等社会環境の整備や、自転車に乗る者又歩行者への交通法規やマナーの指導・徹底などが殆どなおざりにされていたといって良い。実際、私が住んでいる町にしても人が歩いていた生活道にも車が入り込み街中を通りぬけて郊外へ向かう車などが非常に多くなった。それに、商店街の中でさえ商店への商品搬入のために、午前中は業者の車が出入しているが、その生活道はあまりひろくはなっておらず、狭いままなのである。そんな現在の交通事情を考えれば、自転車で車道を抵抗なく走ろうと思う人がどれだけいるだろうか。
2007(平成19)年6月に成立した改正道交法では、飲酒運転の厳罰化とともに、自転車の通行に関するルールも改められた。それによれば、従来の自転車の車道通行の原則を維持しつつも、(1)児童や幼児が運転する場合(2)車道通行が特に危険な場合――などは歩道を通行できるとした。このほか幼児や児童に対する乗車用ヘルメットの着用に関する規定も盛り込まれ、2008年6月より施行されている。
しかし、基本的には、自転車を日本の社会や交通政策の中で、どのように位置づけ、どのような乗り方に利用するかをはっきりとさせた街づくりをしてゆかないと基本的な問題解決にはならないだろう。
自転車の利用には各国それぞれに固有の特徴があるようだが、北欧やヨーロッパ諸国では自転車の利用が非常に盛んな国が多いようだ。これは、交通政策や観光政策等、自転車を利用しようとする人々の努力がそこにあり、これにより公共交通機関としての利用が促進され、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ドイツ等多くの国で自転車交通教育の推進によって自転車交通が促進されているようだ。通行規則は自動車やバスなど同じ道路を走る他の車両の規則と一体として整備され、全ての車両の運転者に等しく、車道での安全走行が、規則として徹底されている。そのようなことから、自転車または二輪のための専用レーン整備が進められる一方で、それがない場合でも、自転車が車道を走行する車両交通規則として実施されているようだ。
オランダやデンマークでは通勤利用者に対する購入時の金銭的補助もあるといい、又、自転車による観光が推進されているドイツ、オランダ、サンフランシスコなど、鉄道車両などの公共交通機関に折りたたみや分解などすることなくそのままの状態で自転車を持ち込むことができる場所も多く、これにより自転車で最終目的地に到達できる可能性が増しているという。それに、近年、共有自転車(レンタサイクル、バイシクル・シェアリング【自転車で街を巡る動きにあわせて商業を展開】)を都市内で大規模に導入する動きもみられ、パリのヴェリブはその中でも代表例で、利用者・台数が多いようだ。それは、欧米諸国では、1990年代以降自転車が環境や健康にもたらす効果を重視し、自転車を都市交通の重要な担い手と位置づけていることがその背景にある。以下のページなどを参照されるとよい。
みちプラザ020 自転車が都会を走る! - ヨーロッパの自転車利用事情
http://www.ins-hwy-eco.or.jp/11plaza/text/plaza-020.htm
環境先進国ヨーロッパの自転車事情
http://www.green-mobility.jp/back_number/20090225/article.html
自転車スローライフ
http://doraku.asahi.com/lifestyle/greencafe/lifecolumn/070611.html
一方、日本の自転車普及率は世界的に見ても非常に高く、2005(平成17)年におこなわれた調査【(財)自転車産業振興協会自転車統計要覧(第41版平成19年11月発行)】によると、日本の自転車保有台数は約8,600万台で、国民1.5人につき1台の自転車を保有していることになり、これは米国の2.6人に1台、フランスの2.6人に1台、中国の2.7人に1台と比べても、世界でもトップクラスであり(以下参考に記載の※:「バイコロジー」参照)、これを、国土面積と対比すると、日本の“自転車密度”はきわめて高いことになる。
その自転車利用者が実際に走行している時間は、走行距離が短いことから、一般に1回当たり平均 10 分から 15 分だと言われる。残りの時間は自転車としての機能を発揮しないまま、どこかに置かれている。又、利用者で、今圧倒的に多いのは、ファミリー(シティー)サイクル、いわゆる「ママチャリ」といわれるものが主流だ。その値段は1万円前後のものが多い。低価格で購入でき、気軽な足として手軽に使われる自転車は、反面その手軽さがかえって、自宅敷地内や駐輪場に置かれているもの以外に、その大半が放置自転車として、自宅前や買物をするスーパー・商店の前、又、駅前の道路等路上に放置され、道路を占拠していることにも繋がっている。自転車を資源として有効に活用し、その価値を十分に生かすという観点からは、パリのヴェリブに見られるように自転車を利用者が共有し、「所有」から「使用」に力点を移す方向に持って行きそれを前提とした街づくりを行い、結果的に自転車の総量を抑制して行くのが望ましいだろう。それに、アメリカのような国土の広い国でもなく、世界の中でも類のない鉄道など公共交通機関の整備されている日本では、環境やエネルギー面のことも考えれば、改めて公共交通機関を重視した政策への転換を図り、パークアンドライド用駐車場の設置 と共に、街中においては、EUなどで浸透しつつあるカーシェアリング(以下参考の:「カーシェアリングとは? 」参照)の自転車版というものの普及こそが理想的である。
それと、自転車に乗るための原則((1)自転車は車道が原則、歩道は例外(2)歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行(3)飲酒運転、2人乗り、並進の禁止、(4 )夜間は、前照灯及び尾灯(又は反射器材)をつける、(5)信号を必ず守る、(6)一時停止の標識を守り、狭い道から広い道に出るときは徐行)を国民にきっちりと指導し、守らせるよう管理監督する必要があるだろう。それに、乗車中の傘の使用や携帯電話の操作の禁止も徹底しなくてはならないだろう。
ただ、交通ルールをどれだけ徹底しても、今後、恐らく自転車はまだまだ増え続けると思うので、交通政策等の基本的なことを解決しなければ、事故を減らすことは出来ないのではないか。それが容易に出来ないからといって、国民に自転車に乗らせないようにするといった野暮なことだけはしないで欲しい。今の民主党の政策で高速道路料金の無料化案など、それはそれで結構だが、その結果、大都市などの街中が自転車だけでなく車も溢れかえる・・・といったことが起こるようなこともないようにしてほしいものだ。
(画像は、「二人乗りは禁止」警視庁の自転車の交通安全のページより)
このブログの字数制限上参考は別紙となっています。以下をクリックするとこのページの下に表示されます。
クリック ⇒ 自転車安全日:参考
「毎月8のつく8日、18日、28日がこの記念日です。警視庁が1977(昭和52)年10月8日から「自転車安全日」として定めていましたが、翌年の11月から「二輪・自転車安全日」に改めました。8の字を二輪車に見立てています。」・・と。
二輪車とは、車輪が2つある車両のことであるが、道路交通法(詳しくは以下参考の※:「道路交通法」参照)においては、原付および自動二輪車を指し、自転車は二輪車に含まれていない。
以下参考に記載の※:「警視庁:交通安全のページ」で、今日の記念日のことがどのように書かれているか見たのだが、この記念日のことについての説明はなかったが、最近、二輪車・自転車が脚光を浴びているが、反面、多くの問題を引き起こしているのは確かである。
そこで、「警視庁:交通安全のページ」の”二輪車の死亡事故統計”を見てみると、東京都内の交通事故による死者のうち、2008(平成20)年中の二輪車(原動機付自転車を含む)乗車中の交通事故死者数が、歩行者37,6%に次いで28%の構成率で2位を占め高いことが分る(推移はここ参照)。しかし、自転車も20,1%の構成率となっており、いずれも、四輪車の構成率14,2%を大きく上回っている。又、2009(平成21)年中(6月末)でも、歩行者37、6%、二輪車26、6%、自転車23,4%、四輪車12,8%と構成率の順位は変わらず、四輪車や二輪車が昨年より若干減少しているにも係わらず、自転車は昨年を大きく上回っている。これは、米国のサブプライムローン問題に端を発した昨年のリーマンショック以降、日本の景気低迷から、節約志向が高まり、急速に四輪車、二輪車の使用に比して自転車利用者が増えているからではないだろうか。
自転車は、二酸化炭素を排出せず、空気を汚さないだけでなく、他のどんな乗り物よりも少ないエネルギーで移動できる便利な乗り物であり、排出ガスが発生しないなど、地球温暖化問題が叫ばれる現在、環境への負荷の少ない移動手段として見直されている。
私自身も、ずっと以前より自転車を愛用している者の1人であるが、昨年後半ぐらいから、私の住んでいる神戸の町でも急速に自転車に乗る人が増加ておりし、自転車が町中に溢れ返る状況になってきている。昼間の買物や、夕食後の散歩に出たときなども、混雑する街中を猛スピードで走り抜けたり、携帯電話をかけながらの運転など、交通マナーを無視した運転も目立つようになり、危険な状況に遭遇することも幾度かあり、同じように自転車に愛用している者であっても、今の人達の自転車の乗り方には少々、辟易としているところである。
現在の自転車の原形である安全型自転車ができあがったのは19世紀末期で、この時期に日本への輸入も始まっている。国産化も早く進み、宮田製銃所(宮田工業の前身)が国産第1号を製作したのは1890年(明治23年)のことだという。初期の自転車は高価な遊び道具であった。特にオーディナリー型が主流であった頃、庶民の間では貸自転車を利用することが流行し、度々危険な運転が批判されていた。又、所有できるのは長らく富裕層に限られていた。私の蔵書の中のアサヒクロニクル「週刊20世紀」の1901(明治34)年号には当時の状況が以下のように記されている。
“「ある人は一両年来すさまじい勢いで流行してきたサイクリングを一時の熱のように考えている。またある人は東京市のような悪道路では到底自転車を実用に供することは出来ないといっている。」(5月11日付東京朝日新聞・現代文に直す。以下に同じ)。現代の自転車の源流は1863年にフランスでつくられた前輪ペダル式のベロシベード(画像)。明治になって日本にも輸入され、国産は1893(明治26)年から。この年には、5万6000余台があり、サイクリングがにわかに流行してきた。「非難冷笑が矢のように降りかかるのをものともせず、矢のような勢いで今月は前月より、今日は昨日より流行の範囲を拡張しつつあるのだ。」(同紙)。そして、趣味のサイクリングだけでなく、電話を架設しているほどの商家は2台以上を持ち、役人やサラリーマンなど高級をとって居る者が通勤に、逓信省が電信配達に、陸軍、各官庁も沢山買い上げ、警視庁も各警察署に必ず1台ずつ備えるなど実用車が急速に増加した。こうした実用車だけでなく、自転車好きが自転車競走大会や遠乗り会などを催したりしていた。”そして、“、通行人とぶつかる事故も続発していた。”そこで、“警視庁は、この年(1901(=明治34)年)16条からなる自転車取締改正規則を発布した。歩行者および牛馬諸車を追い越す時はあらかじめ音響気を鳴らして、警戒を与うべし。夜間は灯火点すべし。軍隊又は学生生徒および、葬儀等の列をみだりに横断すべからず・・といった具合(10月25日付け東京朝日新聞)”だったと。・・・・なんと、此の記事を読んでいると、明治時代制定されたこの改正規則が、現代社会でも守られていない感じだね~。
この自転車の普及に伴う本格的な取締規則としては、すでに、1898(明治31)年に7条からなる「自転車取締規則」(警視庁令第20号)を制定し、「べるをつけよ(第1条)。両手をハンドルから離すな(第2条)。急坂では下車せよ(第3条)・・・」などと規制はしていた(ここ参照)のだが、その保有台数の急増に対して、僅か7カ条の規定では到底律しきれず、1901(明治34)年に、全17カ条の取締規則に全面改正したのだ。そして、“通行人は左側を通れと、警視庁が4月21日から非番巡査を要所要所の道路に配置して「そっちそっち」と手を振って指導をはじめた”・・そうだ。
日本では、現在は「車は左、人は右」側通行となっているが、これは、戦後の1947(昭和22)年に制定された旧法の道路交通取締法によるものであり、それまでは人も車も左側通行であった。交通安全のために、車は従来のまま左側通行とし、人は右側通行とする「対面通行」を取り入れたもの。
明治末から大正にかけて自転車の普及と共に国産化が急激に進むと小形荷物の運搬用途や日本人の体格を考慮した、日本独特の実用車が現れたが、この当時一般的であったダイヤモンドフレームの自転車はスカートなどで乗るのに適さなかったため、自転車は男性の乗り物とされていたが、大正期からは富裕層の婦人による自転車倶楽部も結成されるなどし、女性の社会進出の象徴となった。そして、第二次世界大戦後の1960年代半ば頃まで、実用車は日本の自転車の主流であり続けた。だが、戦後、自転車が普及していくと、代わりにそのステータスシンボルとしての地位を自動車が占めるようになった。
しかし、自転車は、運転免許不要で、かつ、価格も手ごろなものとなったことから身近な乗り物として、日本では、通勤・通学に利用されるほか、女性にも乗り易いデザイン、軽量化がなされ日常の買い物などにも主婦達などに多く利用されるようになった。日本では高度経済成長期以降、自動車や単車などの二輪車の急速な普及もあり自転車は、買物だけではなく通勤・通学の場合などでも自宅から駅までとい短距離の利用が多く、放置自転車の問題等も起こっていた。そこへ持ってきて、近年は二酸化炭素排出や高齢化の進展によるマイカーによる運転事故の多発や、飲酒運転に対する罰則強化問題などからモータりーゼーションからの脱却への動きが起こっていたが、先にも書いた通り、ここのところの不況下によって、一層の自動車、単車等の二輪車離れが進み、自転車の数が急増しており、それが新たな問題を引き起してきているのだ。このため、現代でも、警察庁は、自転車の通行環境の整備、交通安全教育の充実、取り締まり強化に取り組んでいる。
日ごろ多くの自転車は歩道を走っているが、道路交通法上では、自転車は「車両」と位置付けられている。つまり「自転車歩道通行可」の標識がある場合を除いて、車道通行が原則となっているのである。しかし、日本ではモータリゼーションの発達以降、車中心の町作りが行なわれ、国も行政も莫大な公共投資を行い車道の拡幅や整備はしても、自転車のための自転車道や駐輪場等社会環境の整備や、自転車に乗る者又歩行者への交通法規やマナーの指導・徹底などが殆どなおざりにされていたといって良い。実際、私が住んでいる町にしても人が歩いていた生活道にも車が入り込み街中を通りぬけて郊外へ向かう車などが非常に多くなった。それに、商店街の中でさえ商店への商品搬入のために、午前中は業者の車が出入しているが、その生活道はあまりひろくはなっておらず、狭いままなのである。そんな現在の交通事情を考えれば、自転車で車道を抵抗なく走ろうと思う人がどれだけいるだろうか。
2007(平成19)年6月に成立した改正道交法では、飲酒運転の厳罰化とともに、自転車の通行に関するルールも改められた。それによれば、従来の自転車の車道通行の原則を維持しつつも、(1)児童や幼児が運転する場合(2)車道通行が特に危険な場合――などは歩道を通行できるとした。このほか幼児や児童に対する乗車用ヘルメットの着用に関する規定も盛り込まれ、2008年6月より施行されている。
しかし、基本的には、自転車を日本の社会や交通政策の中で、どのように位置づけ、どのような乗り方に利用するかをはっきりとさせた街づくりをしてゆかないと基本的な問題解決にはならないだろう。
自転車の利用には各国それぞれに固有の特徴があるようだが、北欧やヨーロッパ諸国では自転車の利用が非常に盛んな国が多いようだ。これは、交通政策や観光政策等、自転車を利用しようとする人々の努力がそこにあり、これにより公共交通機関としての利用が促進され、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ドイツ等多くの国で自転車交通教育の推進によって自転車交通が促進されているようだ。通行規則は自動車やバスなど同じ道路を走る他の車両の規則と一体として整備され、全ての車両の運転者に等しく、車道での安全走行が、規則として徹底されている。そのようなことから、自転車または二輪のための専用レーン整備が進められる一方で、それがない場合でも、自転車が車道を走行する車両交通規則として実施されているようだ。
オランダやデンマークでは通勤利用者に対する購入時の金銭的補助もあるといい、又、自転車による観光が推進されているドイツ、オランダ、サンフランシスコなど、鉄道車両などの公共交通機関に折りたたみや分解などすることなくそのままの状態で自転車を持ち込むことができる場所も多く、これにより自転車で最終目的地に到達できる可能性が増しているという。それに、近年、共有自転車(レンタサイクル、バイシクル・シェアリング【自転車で街を巡る動きにあわせて商業を展開】)を都市内で大規模に導入する動きもみられ、パリのヴェリブはその中でも代表例で、利用者・台数が多いようだ。それは、欧米諸国では、1990年代以降自転車が環境や健康にもたらす効果を重視し、自転車を都市交通の重要な担い手と位置づけていることがその背景にある。以下のページなどを参照されるとよい。
みちプラザ020 自転車が都会を走る! - ヨーロッパの自転車利用事情
http://www.ins-hwy-eco.or.jp/11plaza/text/plaza-020.htm
環境先進国ヨーロッパの自転車事情
http://www.green-mobility.jp/back_number/20090225/article.html
自転車スローライフ
http://doraku.asahi.com/lifestyle/greencafe/lifecolumn/070611.html
一方、日本の自転車普及率は世界的に見ても非常に高く、2005(平成17)年におこなわれた調査【(財)自転車産業振興協会自転車統計要覧(第41版平成19年11月発行)】によると、日本の自転車保有台数は約8,600万台で、国民1.5人につき1台の自転車を保有していることになり、これは米国の2.6人に1台、フランスの2.6人に1台、中国の2.7人に1台と比べても、世界でもトップクラスであり(以下参考に記載の※:「バイコロジー」参照)、これを、国土面積と対比すると、日本の“自転車密度”はきわめて高いことになる。
その自転車利用者が実際に走行している時間は、走行距離が短いことから、一般に1回当たり平均 10 分から 15 分だと言われる。残りの時間は自転車としての機能を発揮しないまま、どこかに置かれている。又、利用者で、今圧倒的に多いのは、ファミリー(シティー)サイクル、いわゆる「ママチャリ」といわれるものが主流だ。その値段は1万円前後のものが多い。低価格で購入でき、気軽な足として手軽に使われる自転車は、反面その手軽さがかえって、自宅敷地内や駐輪場に置かれているもの以外に、その大半が放置自転車として、自宅前や買物をするスーパー・商店の前、又、駅前の道路等路上に放置され、道路を占拠していることにも繋がっている。自転車を資源として有効に活用し、その価値を十分に生かすという観点からは、パリのヴェリブに見られるように自転車を利用者が共有し、「所有」から「使用」に力点を移す方向に持って行きそれを前提とした街づくりを行い、結果的に自転車の総量を抑制して行くのが望ましいだろう。それに、アメリカのような国土の広い国でもなく、世界の中でも類のない鉄道など公共交通機関の整備されている日本では、環境やエネルギー面のことも考えれば、改めて公共交通機関を重視した政策への転換を図り、パークアンドライド用駐車場の設置 と共に、街中においては、EUなどで浸透しつつあるカーシェアリング(以下参考の:「カーシェアリングとは? 」参照)の自転車版というものの普及こそが理想的である。
それと、自転車に乗るための原則((1)自転車は車道が原則、歩道は例外(2)歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行(3)飲酒運転、2人乗り、並進の禁止、(4 )夜間は、前照灯及び尾灯(又は反射器材)をつける、(5)信号を必ず守る、(6)一時停止の標識を守り、狭い道から広い道に出るときは徐行)を国民にきっちりと指導し、守らせるよう管理監督する必要があるだろう。それに、乗車中の傘の使用や携帯電話の操作の禁止も徹底しなくてはならないだろう。
ただ、交通ルールをどれだけ徹底しても、今後、恐らく自転車はまだまだ増え続けると思うので、交通政策等の基本的なことを解決しなければ、事故を減らすことは出来ないのではないか。それが容易に出来ないからといって、国民に自転車に乗らせないようにするといった野暮なことだけはしないで欲しい。今の民主党の政策で高速道路料金の無料化案など、それはそれで結構だが、その結果、大都市などの街中が自転車だけでなく車も溢れかえる・・・といったことが起こるようなこともないようにしてほしいものだ。
(画像は、「二人乗りは禁止」警視庁の自転車の交通安全のページより)
このブログの字数制限上参考は別紙となっています。以下をクリックするとこのページの下に表示されます。
クリック ⇒ 自転車安全日:参考