真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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重大な事実に目をつぶる「情報戦」論

2023年08月31日 | 日記

 毎日のテレビや新聞の報道に苛立ちを感じています。それは、日本のメディアが、アメリカの主張(戦略や戦術)に疑問を呈したり、異論を唱えたりすることが許されていないということからきているように思います。

 アメリカの影響下にある日本の学者や専門家と呼ばれる人、また、主要メディアの記者が語ったり書いたりしているウクライナ戦争に関わる内容は、かならずといっていいほど、注目すべき大事な事実に目をつぶり、的をはずした内容になっていると思います。

 先日、朝日新聞の「記者解説」に、「情報戦、カギ握る市民」と題して、オピニオン編集部の小田村義之氏が、「情報戦」に関する記事を書いていました。
 彼は、現代の戦争は、1、偽情報などを流して優位に立とうとする「情報戦」の要素が強まる、2、民主主義社会が情報戦に対応するには、政治体制への市民の信頼が支えとなる、3、日本は事実を重視し、平和国家のイメージを崩さない発信を心がけるべきだ、というような要点を示して、情報戦に関してあれこれ書いているのですが、いくつか指摘しなければなりません。

 まず、戦争を終わらせようとする視点がないということがあります。停戦のための見通しを立てることなく、ロシア敵視の姿勢で「情報戦」を語ることは、読者を、ウクライナ戦争に巻き込む側面があると思いました。
 また、ウクライナ戦争で、「情報戦」やプロパガンダを必要としたのはどちら側であるかという考察もまったくありませんでした。
 私は、オリンピックからロシア選手を排除するだけでなく、あらゆる団体や組織からロシアを排除し、重要な役割を担っているロシア人個人さえ、国際的な団体や組織から排除したのは、アメリカを中心とした西側諸国であったことを見逃すことができません。それは、「情報戦」やプロパガンダを必要としたのが、アメリカであり、ウクライナであったということだと思います。それは、プーチン大統領が、オリンピックからロシア選手を排除する動きがあったとき、”なぜアスリートを政治に巻き込むのか”、と不満を述べたことでもわかると思います。
 豊かな交流があれば、「偽情報」やプロパガンダは、広がりにくいと思いますが、豊かな交流をさせないようにしたのは、「情報戦」に長けたアメリカだろうと想像しました。
 次に、小田村義之氏は、”平和国家のイメージを崩さない発信”というようなことを書いているのですが、ロシアと戦うウクライナを支援し、ロシアに制裁を加え、ウクライナ戦争を主導するアメリカの同盟国として、ロシアを敵とするウクライナ戦争に加担している日本が、”平和国家のイメージを崩さない発信”、などする資格があるのかと思いました。

 決定的なのは、過去の戦争で、どのような情報(偽情報)が、どのような意味をもったのか、ということをふり返ることがまったくなされていないことでした。

 ベトナム戦争では、北ベトナム沖のトンキン湾で、北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍駆逐艦に魚雷を発射したとの報道が大々的になされました。この事件をきっかけに、アメリカは北爆を開始することになりました。この事件の報道によって、アメリカは北爆に反対する勢力の声を気にせず、ベトナム戦争に本格的に介入するに至ったという意味で、忘れてはならない事件だと思います。
 でもその後、『ニューヨーク・タイムズ』が、いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手し、この事件は、アメリカが仕組んだものだったことを暴露しました。
 アメリカはトンキン湾事件をでっち上げ、「偽情報」でベトナム戦争を正当化し、絨毯爆撃をくり返したので、数え切れない人びとが亡くなりました。

 また、湾岸戦争では、「ナイラ証言」が「偽情報」として大きな影響力をもちました。イラクによるクウェート侵攻の後、「ナイラ」を名乗る少女が、
私は12人の女性とともにアッ=ラダン病院でボランティアをしていました。私が最年少のボランティアで他の女性達は20-30歳でした。イラク軍兵士が銃を持って、病院内に押し入るのを目にしました。保育器から新生児を取り出し保育器を奪うと、冷たい床に新生児を放り出し死なせてしまいました。怖かったです
などと泣きながら証言したのです。(関わる動画:https://twitter.com/i/status/1659370450030575617)。
 でも、「ナイラ」という少女は存在せず、実は、クウェート駐米大使の娘が、クウェート・アメリカ政府の意を受けた反イラク扇動キャンペーンの一環で、演じた証言だったのです。
 Wikipediaには、
ナイラ証言が広く喧伝されると、集会の様子を撮影したヒル・アンド・ノウルトンは、全米に約700のテレビ局を擁するメディアリンクへビデオを配給。当日夜、証言の一部がABC及びNBCのニュース番組で放映され、数千万人のアメリカ国民が視聴したという。また、上院議員7名が武力行使を支持する演説の中でナイラ証言を引用している。ブッシュ大統領もその後数週間のうちに少なくとも10回は証言を繰り返した。暴虐の証言は湾岸戦争参戦に対する国民の支持を取り付ける切っ掛けとなった
 とあります。この「偽情報」が、いかに大きな意味をもったかがわかります。この「偽情報」がなければ、「クラーク法廷」でとりあげられたような湾岸戦争における甚大な被害はなかったと思います。

 さらに、イラク戦争では、「大量破壊兵器保持における武装解除進展義務違反」を理由に、アメリカを中心としてイギリス、オーストラリア、ポーランドなどで構成する有志連合が、圧倒的に優位な立場でイラクに侵攻し、猛烈な爆撃をくり返しました。でも、それは「偽情報」に基づくもので、現実には大量破壊兵器は存在しませんでした。だから、アメリカは「偽情報」を使って強硬姿勢を通す戦略であったといわれています。
 この「偽情報」に基づく戦争に、日本が加担したことは忘れてはならないと思います。小泉政権時代、日本は戦後初めてPKO活動外での自衛隊派遣を行い、有志連合の一員としてイラク戦争に参加したのです。

 そうした「偽情報」が大きな意味をもった過去の戦争をふり返えることなく語られる「情報戦」の話に、どれほどの意味があるのか、と私は思いました。

 また、そうした「偽情報」に基づく過去の戦争をふり返えば、ウクライナ戦争において、世界各国のウクライナ支援を決定づけた「ブチャの虐殺」情報が、実は、アメリカ・ウクライナによる秘密工作に基づくものではないかという疑いを、私は持たざるを得ませんでした。そして、Kla.tvその他の情報で、「ブチャの虐殺」の情報には、陰謀論で片付けることのできない不自然な点が、いくつもあることを知りました。

 だから、私は、こうした「偽情報」に基づく戦争を回避するシステムや国際法が必要だと思います。

 でも、小村田義之氏は、そうしたことは少しも語らず
情報戦を重視するのはロシアだけではない。米国はロシアがウクライナに侵攻する可能性をリークし続けた。機密情報でもあえて漏らすことで、ロシアに再考を促す「開示による抑止」と言われる新たな手法である。
 などとも書いていました。あきれました。
 だからそれは、アメリカの戦略に基づいて、ロシアを悪者とするための情報戦の話であり、明るい未来を見通すことのできる話ではないと思いました。

 日本でも、「偽情報」が、日本の針路を変えてしまうようなことあったと思います。 
 私は、アメリカ軍占領下で発生した下山事件、三鷹事件、松川事件は、いずれも松本清張氏が徹底的な調査と多くの資料に基づいて「日本の黒い霧」で考察したように、米軍の謀略によるものだと思っています。
 中国大陸における国共内戦は中国共産党軍の勝利が決定的となっていたこと、また、朝鮮半島でも「朝鮮人民共和国」の建国を宣言し、統一朝鮮の独立を意図した人たちの力が強かったこと、日本でも、日本共産党が飛躍的に議席を増やし(4議席から35議席)躍進していたこと、さらに、全日本産業別労働組合会議や国鉄労働組合が、アメリカの意を汲む政府の人員整理に強く抵抗する姿勢を示し、吉田内閣の打倒のみならず、人民政府樹立さえ叫ぶようになっていたことなどは、すべて反共国家アメリカにとって好ましくないことであったと思います。その状況を反転させ、日本を反共国家として、しっかりアメリカの影響下に置く意図をもって実行された秘密工作が、上記の国鉄三大事件その他の事件だと思います。それらの事件の「偽情報」によって、アメリカは、共産主義者や労働組合の指導者は恐ろしいという戦前の治安維持法の捉え方を、日本で復活させることに成功したのではないかと思います。
 だから、「国鉄三大ミステリー事件」その他の事件は、GHQの政策の「逆コース」といわれる方針転換や戦犯の公職追放解除による戦争指導層の復帰促進、レッドパージなどと一体のものだと思います。
 アメリカがくり返してきた「偽情報」に基づく戦争政権転覆内政干渉をなくす方法を論じることが、メディアに課せられた責任ではないかと思いました。

 スパイ活動を是認するような「開示による抑止」論など、馬鹿げた話だと思います。「平和国家日本」は、日本国憲法の定めに従うことから生まれるものであり、単なるイメージであってはいけないと思います。

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2 コメント

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ありがとうございます (syunrei hayashi)
2023-09-01 19:13:10
yoshi様

 再びコメントありがとうございます。
アメリカのスパイ活動を是認し、「開示による抑止」などという識者の存在が不快なので・・・。2694
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Unknown (yoshi)
2023-09-01 12:05:56
私も「偽情報」に基づく戦争を回避するシステムや国際法が必要だと思います。
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