真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

HPは hide20.web.fc2.com
ツイッターは HAYASHISYUNREI

アメリカの内政干渉と台湾政策

2023年09月07日 | 国際・政治

 過去をふり返れば、アメリカの対外政策や外交政策は、基本的にアメリカの覇権と利益のための利己的なものであったと思います。したがって、状況が変ればその政策も変化し、法や道義・道徳に基づくような一貫したものではなかったと思うのです。

 それは、アメリカの台湾政策によく現れていると思います。
 第二次世界大戦後、アメリカのトルーマン政権は、アジアでの共産主義勢力の拡大を恐れ、国共内戦(中国国民党と中国共産党による内戦)における共産側の台湾征服を阻止するため、第7艦隊台湾海峡に派遣しました。だから、共産側による台湾征服はかないませんでした。
 他国が、内戦の一方の側を支援したり、一方の側に加担したりすることは内政干渉だと思います。だから、第7艦隊の台湾海峡派遣は、法や道義・道徳に反するものであったと思います。
 でも、アメリカは圧倒的な軍事力や経済力を背景に、どこの誰にも邪魔させず、そうした内政干渉を押し通してきたと思います。

 国共内戦における共産側の台湾征服を阻止した後、アメリカは、台湾と「米華相互防衛条約」を締結しました(1954年)が、本来、それ自体が大問題だと思います。そしてそれは、アメリカと台湾国民党(蔣介石政権)の間の軍事条約であり、日米安全保障条約や米比相互防衛条約などとともに、対共産圏包囲網の一環であったと言われているのです。
 言い換えれば、米華相互防衛条約は、共産党政権の中華人民共和国を仮想敵国とする軍事同盟であったのです。
 アメリカは国共内戦以来、国民党の蔣介石政権を支持し、蒋介石政権が台湾に逃れ、本省人を排除して独裁的な政治をやっているのに、その独裁政治には目をつぶり、軍事その他の支援を続けました。それらもすべて中国内部の戦いに介入する内政干渉だったと思います。

 当時、台湾を支援するアメリカの国務長官ダレスは、「もし台湾が攻撃されれば大陸を攻撃する」と表明したとのことですが、それは、内政干渉を公言したものだと思います。また、米華相互防衛条約では台湾の範囲として澎湖島とともに大陸に近い金門島、馬祖島なども含めていたということです。アメリカは当初、蒋介石の主張をそのまま受け入れていたのだと思います。

 蒋介石が金門・馬祖に大陸への反攻のための基地を設置すると、中国政府は、金門・馬祖に砲撃を加えるに至ります。
 1958年8月23日、中国の人民解放軍による金門・馬祖への砲撃は激しく、44日間に及んだということです。それ以降、台湾海峡は中国軍と台湾・アメリカ軍がにらみ合う緊張が続きました。アイゼンハウアー大統領が台北に滞在中には、中国の金門・馬祖砲撃が一段と激しさを増したということです。

 ところが、驚くべきことに、1970年代に、それまで東アジアにおける共産政権としての中華人民共和国を敵視する政策を続けていたアメリカが、突然大きく方針を転換したのです。
 米中国交回復の動きは、ベトナム戦争の行きづまりを打開しようとしたニクソン政権で、キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官によって極秘裏に着手されたといわれています。
 そして、1971年7月15日に、”来年2月のアメリカ大統領ニクソンの中国訪問”が発表されたのです。世界中が驚愕する発表でした。
 その後、ニクソン大統領の訪中は、発表通り1972年2月21日に行われました。
 大統領は毛沢東と会見し、米中共同声明(上海コミュニケ)で、平和共存五原則に基づく国交正常化を明らかにしたのです。

 この時、アメリカは、”中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府であることを承認し,中国はただ一つであり,台湾は中国の一部であるとの中国の立場”を受け入れたことを忘れてはならないと思います。

 そして、その結果アメリカは台湾政府(中華民国)と断交し、1980年に米華相互防衛条約失効することになったのです。台湾(中華民国)にとっては、衝撃であったと思います。
 アメリカが、中華人民共和国の「一つの中国」の考え方を受け入れたために、台湾の中華民国政府は国際連合の「中国」代表権を失い、国連から追放されることになりました。

 また、アメリカは、1979年に国内法として「台湾関係法」を制定しましたが、それも利己的な内容で、台湾を「政治的な実体」と認め、実質的な関係を維持し、台湾の防衛に必要な武器を有償で提供し続けるというようなものでした。
 そのアメリカの「台湾関係法」は、台湾(中華民国)の範囲を台湾と澎湖島だけに限定(台湾海峡上の金門・馬祖などは含まない)しています。米華相互防衛条約の内容とは異なっているのです。

 また、アメリカは、中国との国交正常化にあたって、中華人民共和国を唯一正当の政府として認め、台湾の地位は未定であることは今後表明しないとか、台湾独立を支持しない日本が台湾へ進出することがないようにする台湾問題を平和的に解決して台湾の大陸への武力奪還を支持しない中華人民共和国との関係正常化を求めるとして台湾から段階的に撤退することを約束したということです。

 それらはすべて、当時のアメリカに都合の良い話ばかりであり、一方的な方針転換であり、それまでのアメリカの主張や政策と矛盾した一貫性がないものだったと思います。

 そして、現在アメリカは、再び中国を敵視する方針にもどり、”台湾は中国の一部である”と公式に認めたにもかかわらず、台湾にくり返し武器を売り、要人を派遣し、緊張を高めているのです。国際社会がそれを黙認していることも見逃すことができません。

 日本でも、GHQの「逆コース」といわれる方針転換があり、公職を追放された戦犯や戦争指導層を復活させる公職追放解除があったことを思い出します。法や道義・道徳に基づいて、その方針転換を正当化できる人がいるでしょうか。
 それが、圧倒的な軍事力や経済力を背景に、覇権と利益を追求するアメリカの対外政策や外交政策であることを見逃してはならないと思います。
 
 先日朝日新聞に掲載された、峯陽一国際協力機構緒方貞子平和開発研究所長の”変わる秩序「南ア化」する世界”という文章の中に、下記のような一節がありました。

歴史意識として、グローバルサウスの多くに植民地として支配された記憶が残っています。欧米はアフリカとアジアで主権侵害を繰り返してきた。普遍的価値を語っても偽善だと受け止められがちです。
 一方で、グローバルサウスが「反西洋」の価値観で一色になったわけではない。むしろ西洋と反西洋の両方の意見を聴きながら、自らが納得できる主張を打ち出そうとしているように見えます
 グローバルサウスの価値観の基礎には、55年のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)があります。そこでは国連憲章と人権の尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決など普遍的な主張がかかげられました。

 グローバルサウスが自立しつつあり、圧倒的な軍事力と経済力を背景としたアメリカを中心とする国際秩序が、少しずつ変わり始めていることを示しているのではないかと思います。
  
 
 
 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 重大な事実に目をつぶる「情... | トップ | 民主主義が攻撃されている?  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国際・政治」カテゴリの最新記事