きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「白鳥の湖」ギッテンズ&シングルトン/バーミンガム・ロイヤル・バレエ団

2015年04月26日 | バレエ・ダンス
「バレエの祭典」の対象公演で、
ゴールディングの王子は見たことがあるし
これからも見られるだろうから
知らないダンサーを見ておくか、
ぐらいの気持ちで選択した回でしたが
大当たりでした。
ツァオ・チーも出演したし。

単純に知らないダンサーの日を申し込んだので
主演二人のプロフィールはノーチェックで
来日したニュースが出回った頃に
彼らが、いわゆる「黒人」ダンサーなのを知りました。
なので、音感は良いけどハキハキ踊るスポーティ系かと
開幕直前はちょっぴり危惧していましたが
実際には全くそんなことはなく、
抑制のきいた、しっとりした
品格のある踊りでした。
二人の間には暑苦しい情熱とは違う
深い愛情が満ち溢れていました。
手先、足先まで神経の行き届いた踊りでした。
のびのび踊っているけど、やり過ぎ感は皆無。
素晴らしい!

ギッテンズは小柄だけど、
白鳥を踊るには充分な腕の長さがありました。
顔から首筋も美しいラインでした。
あんまりボンキュッボンなる体型じゃないのも良かったな。
オディールの32回転は、
シングル3回+ダブルの繰り返し。
昔この団を見た時は
誰もがシングル2回にダブルの繰り返しでした。
超絶技巧のゲルファンドもそうだったので、
ここは団としては正確さ優先なかんじ。

シングルトンも長身で手足が長く小顔なので、
舞台映えが抜群。
ノーブルな雰囲気も王子にぴったりでした。

ドーランを塗ればいいんだな、と、
そちらも目から鱗でした。
(バヤの黄金仏を思えば、できるよね確かに)

ツァオ・チーはベンノ。
シングルトンと並ぶと王子が二人いるみたい。
王子とは同格の友人ではなく、
甲斐甲斐しく世話を焼く家来筆頭みたいなかんじだけど
抜群の存在なので小芝居が把握できて嬉しい。
三幕では、白鳥の幻影が一瞬見えた後に
舞台が明るくなったとき、ハッと意識を取り戻す演技あり。
あの瞬間、ロットバルトの魔力で時が止まっていたのか、と思った。
演技が細かい。
難点は、トロワで踊ると脇の女性二人が目に入らなくなること。
とにかく存在感が抜群で、
舞台端に立っているだけでも目が吸い寄せられました。
ソリストが主演の舞台にツァオ・チー投入は、
若手バウ(東上なし)によっちゃんを投入するようなものですね。

ライト版は父王の葬列から始まる。
王子には妻を娶り王位に就く義務がある。
1幕では家臣達が見合いの釣書をもってくる。
弓矢は友人達からの贈り物。
ベンノはトロワに入る。
2幕はそれほど改変は無し。
ロットバルトはほとんど踊らない。
各国の踊りはお姫様のソロ付き。
ハンガリー姫の音楽は聞き覚えがあるけど思いだせない。
(どこかの版の三幕道化あたり?)
ポーランド姫の音楽は
ブルメイステル版三幕ロットバルトの踊りのあたりで
イタリア姫はチャイパド。
スペインはロットバルトの手下。
四幕の白鳥群舞はブルメイステル版の音楽基本で
最後は、二人もロットバルトも死ぬ。
ベンノが、顔にマントをかけた王子の死骸を抱き
その後ろの紗幕の奥に王子とオディールが並び
二人は死して結ばれたことを暗示する。

ロットバルトはヅラを取られて
恥ずかしさのあまりに死んだのか(違う)。
愛を失い呪いが解けないオデットは死ぬしかなく
それはロットバルトでも変えられない。
しかし自分が原因とはいえ、オデットが死ぬのに
王子が運命を共にするのは許せない!
と、嫉妬メラメラな悪魔がちょい哀れでした。
「お前を共に死なせるものか」という怒りは慟哭に近かったな。
彼なりにオデットを大事に思っていたんだろうな。
この辺でさらにドラマが深まったので、
王子の亡骸が縮んだのは不問で。

前回白鳥を見たのは95年のようで、
「英国ロイヤルバレエ比だと2軍だな」
と思いましたが、その時に比べると
ダンサーのレベルが格段に上がったように思いました。
ドラマ・バレエではわかり辛いことが
鉄板古典だとすごくはっきりしますね。


モスクワクラシックだと黒金の美術は渋派手になるのに
こちらだと混じり合って茶色になってしまう不思議。
ピーター・ファーマーの美術だとさらに茶色になるよね。


【配役等】
オデット/オディール:セリーヌ・ギッテンズ
ジークフリート王子:タイロン・シングルトン
女王:マリオン・テイト
ロットバルト:ヴァレンティン・オロヴャニコフ
ベンノ(王子の友人):ツァオ・チー

王子の友人たち:
  ルース・ブリル、ジェイド・ヒューゼン、シャン・ヤオチエン、
  エリス・シー、キット・ホルダー、マックス・マスレン、
  ファーガ・キャンベル、ルイス・ターナー
二人の高級娼婦:アランチャ・バゼルガ、ローラ・パーキス
貴族、侍女たち:英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団

小さな白鳥たち:
  ルース・ブリル、カーラ・ドアバー、
  エミリー・スミス、水谷実喜
二羽の白鳥:イヴェット・ナイト、ローラ・パーキス
白鳥たち:英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団

式典長:ローリー・マッケイ
ハンガリーの姫君:デリア・マシューズ
ポーランドの姫君:イヴェット・ナイト
イタリアの姫君:水谷実喜
チャルダッシュ:ジェイド・ヒューゼン、ジョナサン・カグイオア ほか
マズルカ:英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団
ナポリの踊り:
  ローラ・デイ、カーラ・ドアバー、
  チュウ・ツ・チャオ、キット・ホルダー
スペインの踊り:
  エリス・シー、ダリア・スタンチェレスク、
  ウィリアム・ブレイスウェル、ファーガス・キャンベル
大使、小姓、護衛、従者、貴族たち:英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団

白鳥、小さな白鳥たち:英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団


指揮:フィリップ・エリス
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ団


ツァオ・チー出演に衝撃を受けながら新国に行った皆様とは逆に、
早めに会員券で今日を申し込んでしまったので、
湯川さんのフェアウェルが見られなかった私でした。
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「インドの仏」

2015年04月26日 | 美術館・博物館(各種原画展含む)


彫像の細やかさは
設置場所が屋外が屋内かの差の気がする。

時代、地域性の違いが面白かった。

施し好きの王の話に腹が立った!
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「寄生獣 完結編」

2015年04月26日 | 映画
原作未読だけど、テンポ良く話がサクサク進んでいくので
見ていてとても面白かった。

コミック原作の邦画が
たんなる「役者のコスプレ」だけになることが多い中、
この映画は
 ・何者かが世の中に密やかに入り込む恐怖
 ・人間が世界を汚し続ける悪行
 ・他者を敵として排除する愚かさ
それらを踏まえて、「人間とは?」を問いかけるなど、
主題がくっきり見えた。
この主題が原作に沿っているのか
映画スタッフの思想なのかはわからないけど。

もちろん特撮など、
いろいろと目玉部分もあるけど、
役者優先の部分が見えなかったのは良かった。

役者陣も良かった。
染谷くんの獣憑きとそうでないときの違いや
深津絵里の無表情なのに深い感情表現など
それぞれがちゃんと役を深めていた。

ただ、北村一輝がな・・・。
前日に「猫侍」を見ちゃいかんな・・・。

前編は1回しか見ていないので
あんまり記憶が定かでは無いんだけど
警視庁はいつあんな装置を開発したんだっけ?
寄生生物って断定できていたっけか?
その辺をテレビ放映で確認しておけば良かったな。

噂どおりラブシーンが生々しかった。
あそこまで必要なのかなあ。
「生」を感じるってことにしろ。
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