◎ ◎ ◎ スタッフコラム ◎ ◎ ◎
(今年の1月バリ島にて撮影)
2020年は、新型コロナウイルスと共に幕が明けました。(そうと気づいていませんでしたが)
そして、今は6月。新年度が始まって3ヶ月目。
ゆいツールは、たまたま今年度は予算がとれていないため、活動は動いていませんでしたが、前年度からの活動を続けようとしていた国際協力系のNGO(とくに環境系のNGO)は、いったいどんな様子なのだろう、と気になっています。
各国に支部があるような大きなNGOではなく、ゆいツールのように細々とやっているようなところは、現地での活動もストップ、日本から現地にも行けず、活動としては立ち往生状態であることが予想されます。
小さなNGO/NPOの活動は、草の根です。政府や大企業などとは組まず、市民対市民レベルで小さいけれど、確実に個人と個人が繋がるような、そしてそれが確かな希望となるような活動をしていることが多いと思います。
商売をしているわけではないので、売り上げが減った、と愚痴ることがない代わりに、今まで細々と続けてきた交流や支援や、学び合いとも言える活動が止まり、下手をすればやってきたことが無に帰する可能性もあることを、感じているところもあるかもしれません。
ゆいツールは、今までインドネシアで活動する中で、積み上げてきたものが崩れたことが何度かありました。
ひとつは、スマトラ島の活動で。
4年間の活動の中で、途中カウンターパートのNGO(正確には組織というより個人)との信頼関係が壊れ、活動に大きな支障が出ました。
スマトラ島には、ゆいツールの活動を始める前約10年間通っていて、現地に対して何もできなくても、私は一生スマトラに通い続けるだろう、というくらい思い入れがあったところでしたが、4年間の活動で疲れ果て、2016年1月を最後に現地には行っていません。
ふたつめは、ロンボク島で。
2018年の夏、ロンボク島で大地震が起こり、その直前に私がしかけていたいくつかの取り組み(ゆいツールとして、あるいは個人的な)が頓挫しました。
みっつめは、今回。
昨年度(実質的には一昨年度)から育てていたロンボクの若者たちとの活動が、止まってしまいました。
国際協力に限らず、人と何かを成すときには、ある地点から活動を始めてそれが最大限の効果を出すまで、一定の時間やエネルギーがかかります。車で言えば、エンジンをかけて走り始めるところ(現地で協力者を探して、信頼関係を作るところ)と、高速道路に入って調子よく走り続けるところ(協力者と一緒に活動をして学びあうところ)と、パーキングエリアで休憩して(予算などがなく活動できない時はしばし休憩)また走り出すところ、最後に目的地へ到着して車が停車する(活動の目的を達成する段階)、という過程があるとすれば、今は強制的にパーキングに駐車した状態です。
パーキングで車を止めている時間が長くなれば、乗っていた人たちは別のことが忙しくなりバラバラになってしまうかもしれません。
そうなると、また一からやり直しです。
地震の時は、相手は自然災害なので、しかたがないとあきらめもつきました。また、地震そのものの影響は局地的で、ゆいツールの活動に大きな変更が生じたわけでもありませんでした。
今回は、違います。世界全体がコロナに振り回されています。
ウイルスに感染しないために「ステイ・ホーム」が呼びかけられ、でも最近は、経済を回さないと生きていけない、感染しても重症になるとは限らない、自由を奪うな、などの理由で、多くの国で「ステイ・ホーム」が実質解除になっています。
それでも、国と国の移動は制限されています。この、国と国を自由に行き来できないことが、国際協力系の小さなNGOにとっては大打撃になります。
(東ロンボクのマングローブ林)
では資金を日本で確保し、現地の団体に活動を委託するような形で行えばスムーズだろう、と思われるかもしれません。
ゆいツールはそういう形では活動していません。
というか、現地にそのような、他の国のNGOなどと協働して活動できるような団体は多くありません。
まず、そのような団体を構成する要員としての若者たちを、育成するところを担っています。
インドネシアは、わりと市民活動は活発です。でも、組織化するところが弱い。少なくとも環境の分野では。
行政も、市民活動やソーシャル活動に資金を提供する用意はありますが、活動主体が複数の市民で構成されていなければいけません。
形だけグループや団体を作ることはよくありますが、チームとして動けるかどうかは別です。
意見の違うメンバーと協力しあえるか、穏やかに話し合いができるか、ひとりひとりが納得して活動に関われるか。
そういう市民活動・チームビルディングの基礎部分を、ゆいツールはいつも気にかけて活動しています。
3か月か4か月おきに現地に通い、2週間と少し滞在しながら、若者たちと一緒に、その時々で様々な活動をして、いろいろな場所を見て、学んでいます。
現地で、お金をばらまくわけでもなく、大きな建物を建てるわけでもなく、政府の要人と会うわけでもなく、ただ、ローカルの人々と会い、その活動を見せてもらい、時々日本の学生を連れて行って、ロンボクの若者たちと共に学ぶ場を作る。そういう活動です。
大きな事業は、JICAなどの政府系の機関や、オイスカなどの民間団体が行えばよいでしょう。
小さなNGO/NPOには、小さな団体にしかできないことがあります。少ない予算の中で、ローカルの人々と、ていねいに付き合うこと。若者たちをゆっくりと育てること。
残念ながら今は、ロンボクでも人と人が接触すること、大人数で集うこと(それが学校であっても)、そしてもちろん国をまたいだ移動などが制限されています。
幸い、昔ヨーロッパでペストが大流行したときのように、感染した人がバタバタと倒れていくような状況ではないので、安心という面と、逆に症状の軽い人が感染を広げてしまうため、いつまでも抑えられない、という面があります。
この活動の一時停止状態が、いつまで続くのか。
車をパーキングに駐車したまま、1年が過ぎてしまうのか。
実のところ、不安はあります。
インドネシアはネット環境があまりよくないため、オンラインでみんなでミーティング、というのも簡単ではありません。
日本ではミーティングはもちろん、イベントもオンライン開催に切り替わり、果てはオンライン飲み会まで一般化しましたが、インドネシアではそうはいきません。
動けない今、環境を守るために、現地の若者も参加する形で、何かできることはないのか。
知恵をしぼって考えたいと思っています。(山)
(ロンボク、スンギギエリアから夕陽を望む。バリ島のアグン山が見えている)
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