夢七雑録

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稲荷百社詣の終了

2008-04-07 21:28:16 | Weblog
 我が家の花暦、今回はヒイラギナンテン。沈丁花の強い香気も既に薄れ、今は、ヒイラギナンテンの黄色の花が、咲いては枯れ、咲いては枯れつつ、なおも花の命脈を保っています。それも、そろそろ終わりということでしょうか。

 さて、「稲荷百社詣」についてですが、game overとなりましたので、終了とさせて致きました。閲覧いただき大変ありがとうございました。都内には、まだまだ多くの稲荷がありますので、興味のある方は探訪してみたら如何でしょうか。

 なお、当ブログは日記の類ではなく、連載ものを扱っております。ジャンルがウェブログ以外のものについては、話の進行上、今後ともコメントの受け付けを行いませんので、よろしくお願いします。  夢七
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終章(2)

2008-04-05 15:31:33 | 稲荷百社詣

終章(2)

 ....気が付くと、
 小さなお稲荷さんの境内に居た。
 朱の鳥居の向こうに、
 ちょっとだけ覗いている現の世界。
 もういいかい? 
 誰かが外で叫んでいる。
 
 隠れん坊の時の、
 見つかる恐れと、
 いつまでも見つけられぬ不安。

 どぅん。どぅん。
 太鼓が鳴っている。
 あ、錫杖の音。ほぅら来た。
 朱の鳥居の向こうを、
 山車を引く子供達の列が通り過ぎる。
 それから、昔のままの掛け声で神輿が通る。
 子供たちのざわめき。
 そして、みんな行ってしまった。

 いま出ていけば間に合うかも知れない。

 もういいかい?
 また、誰かが外で叫んでいる。

 ....動き始めた時間の罠。

 
 ---GAME OVER--- 

【追記】

陰陽五行説では、原初の混沌から陰陽が分れて天と地になったとし、陰陽から木火土金水の五気(原素)が生じたとする。さらに、相生の理により木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じたとし、相剋の理により、木は土を剋し(締め付け)、土は水を剋し(堰き止め)、水は火を剋し(消し)、火は金を剋し(溶かし)、金は木を剋す(傷つける)とする。この五気の循環を五行という。五気の木火土金水は色彩の青赤黄白黒に対応している。方位においては、土を中心として木火金水が東南西北に対応している。季節においては、土を中心に木火金水が春夏秋冬に対応し、土は季節の変わり目に土用とし現れ、次の季節へと回してゆく。このように、陰陽五行説では、五気のうち特に土を重視している。

「稲荷百社詣」では、人類の歴史において、人類の曙の時代、火を使う時代、農業の時代、経済の時代、その次の時代を、五気の木火土金水に対応させるが、各々を対等に扱うこととし、季節の変わり目に現れる土用の代わりに、時代の変わり目に“時”が“気”に取って代わり、次の時代の姿で現れるよう、陰陽五行説を変形している。

 

 

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終章(1)

2008-04-03 22:02:43 | 稲荷百社詣

終章(1)

 法恩寺橋の下は大横川親水公園になっている。ともかくも稲荷百社詣が終ったことで、ほんのちょっぴり達成感に浸りながら、のんびりと遊歩道を散歩する。その途中、赤いセーターにジーンズの男が、急ぎの用事でもあるのか、こちらを追い越していった。何故か気になって後を追う。男は、かなりの早足で京葉道路を越え、先へ先へと歩いて行き、どこかの会館の中に入っていく。招き入れられたように、こちらも建物の中に入りこみ、どこをどう歩いたのか、何時の間にか椅子に座っていた。

 すぐに部屋の照明が消され天井に星がまたたき始める。プラネタリウムに来ていたのだ。しばらくして星空が回転し始め、その中心に三毛猫が現れた。その白毛は光輝く銀白色となり、黒毛は深き闇の底の如き暗黒色となり、そして茶毛は黄金にも似た輝く黄色の斑となった。しばらくすると、その姿は次第に膨張していき、やがて輪郭がぼやけて、三匹の狐の姿に分離した。それから、狐達は歌うように語り始めた。

『我は猫に非ず、その本性は黄狐にして、火より生まれし土を基とし、
『我は猫に非ず、その本性は白狐にして、土より生まれし金を基とし、
『我は猫に非ず、その本性は黒狐にして、気より生まれし時を基とし、

  水を剋して農耕を支配す。 我が時、既に終わるといえど、
  木を剋して金銭を支配す。 我が時、直に終わるといえど、
  気を剋して変化を支配す。 我が時、今に始まるといえど、

  余韻を楽しむも可なり。 妙見に祈れ。・・・・・・・・』
  なお長らえるも可なり。 妙見に祈れ。・・・・・・・・』
  なお生き残るも可なり。 妙見に祈れ。・・・・・・・・』

 狐の声は、混じりあい響き合って、次第に意味不明となり、遂には狐の姿も消え失せ、星が再びきらめき始めた。近頃のプラネタリウムは凝った演出をするなと思っているうちに、今度は椅子が振動し始めた。どうやら、客席全体を宇宙船の内部に見立て、宇宙旅行を始めるというストーリーらしい。やがて、案内の声が聞こえ始めた。

『皆様、本船は定刻に基地を出発致しました。本船は船首に光輝くいちょうの葉を掲げた宝船型宇宙船であり、その形はいささか古風ではありますが、準光速のスピードを持つ最新鋭の船であります。皆様、画面はいま出立致しました水の惑星、地球を映しております。その青い球体に狐の文様を見出すことが出来ましたでしょうか。それでは皆様、画面を本船の前方に切り替えてみましょう。ご覧下さい。狐の姿をした北斗七星が見えてまいりました。その回転の中心にあるのが、北極星すなわち妙見であり、本船の 目的地であります。それでは...白の時代は滅びの道へと....とはいえ青の時代も....如何なる種も限りあるが故....残された時間を...妙見の霊験により...』

 賽銭を出さなかった稲荷もあったから、多分、妙見へは行き着かないだろう。今はただ眠い。目をつむると、案内の声がすうっと遠くなる。眠い。今は眠りたい。もう、ねむ.....

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稲荷百社詣その三十六

2008-04-01 22:09:06 | 稲荷百社詣

(98)矢先稲荷 (台東区松ヶ谷2)★

 矢先稲荷は、江戸時代にあった三十三間堂の、通し矢の的の場所に設けられた稲荷である。まずは、賽銭をあげて参拝し、あたりに人影が無い事を確かめて、石の上にもち米の団子を置いた。それから、ダーツの要領で短い矢を投げる。矢は皆中稲荷の御加護をもって、予想通りに団子に当たり、思った通りに白い鳥となって飛んだ。鴎かなと思ったが、本当は、物音に驚いた鳩が、飛び立っただけなのかも知れない。

(99)かもめ稲荷 (墨田区本所4)

 飛び立った白い鳥が鴎なら、行き先は見当が付く。近くにかもめを名乗る稲荷は、そうは無いからだ。その稲荷は、能勢妙見堂にあった。この妙見堂は旗本の能勢氏が創建したもので、大阪冬の陣において鴎の奇瑞によって能勢氏が大功をたてたことから、かもめ稲荷を境内に祭っている。とりあえず妙見さんにお参りし、それから、入口に近い場所にある稲荷を参拝した。拝礼を終えて、空を見上げてみたが、鴎の姿は無かった。

(100)平川清水稲荷 (墨田区大平1)

 妙見堂に行ったついでに法恩寺に行ってみた。この寺は太田道潅ゆかりの寺で、江戸時代には十二の塔頭が集まる大寺であったという。境内の稲荷は、道灌が歌に詠んだ平川の辺にあったとされる。江戸時代の初期、平河が付け替えられ、日比谷入り江が埋め立てられるにつれ、江戸は大きく変貌を遂げていく。それに伴い、この稲荷も移転を余儀なくされたのだろう。或いは各地を転々としていたかも知れない。今は、この寺を安住の地としている稲荷だが、室町時代から、江戸時代へ、そして明治、大正、昭和、平成と移り変わる時代の波を、この稲荷はどう見ていたのだろう。ふと空を見上げると、鴎が一羽、ゆっくりと円を描いていた。突然、何かに急かされているような気がして、慌てて外に出た。

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