終章(2)
....気が付くと、
小さなお稲荷さんの境内に居た。
朱の鳥居の向こうに、
ちょっとだけ覗いている現の世界。
もういいかい?
誰かが外で叫んでいる。
隠れん坊の時の、
見つかる恐れと、
いつまでも見つけられぬ不安。
どぅん。どぅん。
太鼓が鳴っている。
あ、錫杖の音。ほぅら来た。
朱の鳥居の向こうを、
山車を引く子供達の列が通り過ぎる。
それから、昔のままの掛け声で神輿が通る。
子供たちのざわめき。
そして、みんな行ってしまった。
いま出ていけば間に合うかも知れない。
もういいかい?
また、誰かが外で叫んでいる。
....動き始めた時間の罠。
---GAME OVER---
【追記】
陰陽五行説では、原初の混沌から陰陽が分れて天と地になったとし、陰陽から木火土金水の五気(原素)が生じたとする。さらに、相生の理により木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じたとし、相剋の理により、木は土を剋し(締め付け)、土は水を剋し(堰き止め)、水は火を剋し(消し)、火は金を剋し(溶かし)、金は木を剋す(傷つける)とする。この五気の循環を五行という。五気の木火土金水は色彩の青赤黄白黒に対応している。方位においては、土を中心として木火金水が東南西北に対応している。季節においては、土を中心に木火金水が春夏秋冬に対応し、土は季節の変わり目に土用とし現れ、次の季節へと回してゆく。このように、陰陽五行説では、五気のうち特に土を重視している。
「稲荷百社詣」では、人類の歴史において、人類の曙の時代、火を使う時代、農業の時代、経済の時代、その次の時代を、五気の木火土金水に対応させるが、各々を対等に扱うこととし、季節の変わり目に現れる土用の代わりに、時代の変わり目に“時”が“気”に取って代わり、次の時代の姿で現れるよう、陰陽五行説を変形している。