猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

エスパー弟、勉強す。  - 渡る世間は鬼ばかり!? -

2008年02月04日 10時34分13秒 | ハ~プニング!

節分だった昨日の夜。

私が食事の仕度をしていると、弟からの電話が鳴った。

 

節分の早朝。
まだ誰も足を踏み入れていない美しい雪。

 

その時間に彼から電話があるなど、めったにないことなので、
どうしたのかと少々驚くが、
電話に出ると、送話口を通して、開口一番彼はこう切り出す。

「今、会社にいるんだけど、こういうことってある?」
と。

 

ランドマークタワーは頭をすっぽり隠し。

 

弟の言う『こういうこと』.....

それは、こうだ。

 

赤レンガ倉庫はお砂糖をまぶした、
お菓子みたいになっている。

 

 会社にいると、一人の若い女の子が訪ねてきた。

 彼女は「十数km離れた駅から歩いて来た」と言い、
 「お財布も携帯も失くしてしまって、広島へ帰れない」と言う。

 で、「お金を貸してくれませんか?」と。

 弟が「警察に行けばお金を貸してくれるはずだよ」と言うと、
 「交番も四件回ってきたけど、おまわりさんのポケットマネーが足りなくて
 貸してもらえなかった。なので助けてくれませんか?」
  と。

まあ、ことのあらすじはこういうことらしい。

 

山下公園内には雪だるまが点在し、
子供が駆け回る。

 

 で、「家に帰るのにいくらかかるの?」と聞くと、「一万七千円」だと答えたので、
 そのとおりの額を貸してあげた。
 住所と名前を書かせて名刺を渡し、「家に着いたらここにお金を送ってね」
 そう言ったと。

 でも、あとから少し考えると、なんか妙な気もする。
 そこで私に電話をかけてきたと。

 

近所のスーパーでは、今回の餃子騒動の影響か、
関係ないメーカーの冷凍餃子が売れ残っていたが。
一生懸命仕事をしているメーカーの方たち。
頑張って!

 

私は答える。

 「ああ、それは寸借詐欺だね」。

弟は驚いて、「それって何?」と私に尋ねる。

そこで、私がなんだかんだ理由をつけ、困ったふりをしては、
通りがかりの人間からお金を騙し取る人種のことをそういうのだと教えてあげると、
 「そうか...騙されたのか.....。そんな人の親切心につけこむ種類の人間がいるんだ!?」
と、彼は、そう声を落とす。

 「なんか、心が折れたな」
と。

 

近くのコンビニでは、ドアを開け放した寒い店内で、
笑顔が素敵なかわいい青鬼クンが
「恵方巻きはいかがですか~?」と、一生懸命バイトに励み、
そのあまりの爽やかさに、
すでに恵方巻きは食べていたにも関わらず(笑)
「じゃあひとつ下さい」と、商品をレジに持って行くと。

今度は赤鬼さんが精算してくれた上、
「クジをどうぞ♪」と。
彼らは気づいているかわからないけど、
雪の日に一生懸命こうしてバイトをしたことは、
一生の思い出になるね。
ここのコンビニの経営者は、彼らに、
時給以上の素晴らしいものをあげていると思う。
若き日の思い出は宝だ。

 

なので、私は続けて答える。

 「世の中にはそういう悪いヤツがいっぱいいる。
 それに騙されたのはお前が勉強不足だったとも言えるけど、
 でも、でも、お前は親切心でお金を貸してあげたわけだから、
 少し待ってみたら?
 もしかしてその子が、本当にお金を返してきたら、
 『助けてあげてよかった』と思えるし、
 もし本当に騙されたのなら、授業料と思えばいい。
 そのときは被害を受けた金額の一部は私もカンパするからさ」
と。

 

鬼から売ってもらった恵方まきは格別の味♪

 

私の横では、その受け答えの内容から、
コトの次第をあらかた察したゴンザが笑顔で頷き、
本当なら、犯人に対して怒りを覚えなければならないはずの私はといえば、
弟が、小さな頃からずっと変わらず優しい子なのだと
あらためて確認できて、なんだか嬉しくなる。

 

こちらは自作のお面をかぶった我が家の鬼。

 

弟が『貸して』あげたお金は、きっと返ってこないと思うが、
それはそれでいいではないか。

私は電話の向こうの弟に、こう言って聞かせる。

 「もし、そこでお金を貸してあげずに『あの子、どうなったかな?』って
 後悔し続けるよりはよかったじゃん。
 お金が返って来なくても、例えば被害届を出すまでもなく、
 『こんな人が周辺に出没します』って警察に注意を促して
 以降の被害を防ぐお手伝いをするとか、それは何らかの役に立ったと思って。
 それをどうするかはお前次第だよ。被害届を出すのもまたアリだし。」
と。

『心が折れた』我が弟はといえば、
 「お金のことはともかく、なんかそんな詐欺がいるなんてショックだな」と
すっかりしょげかえっていたが。

私は心底嬉しかったのだ。

少々まぬけといえばまぬけでも(笑)
私の弟はやっぱりいい子だ、と。

電話を切ったのち、私がゴンザを振り返ると、彼はこう言う。

 「いいじゃん、勉強代だよ勉強代。俺も義弟にカンパしてあげようっと♪」

弟が詐欺の被害に遭ったのに、私たちは笑いあう。

 「なんだか微笑ましいハプニングだね」と。

 

「なんならちゃあこもカンパしようか?」
(カリカリ三粒ぐらい)

 

節分の夜。

弟のもとに現れた鬼は、彼に少し痛い思いをさせたけど。

倒れている人を横目で見ながらさえ、素通りする人が多いこの世の中で、
私たちは、本当の『福』とは何かを見せてもらった気がする。

さて。

心が折れた弟に対しては、エスパー妹&その夫にもカンパを呼びかけるとして。
(私とゴンザだけでもいいけど、こういうのはみんなで助けてあげるほうがいいし、
 事情を知ったら妹もきっとそう申し出るだろう)

弟をいきなり襲った鬼は、今ごろどこで何をしているだろうか?

 

鬼さん鬼さん。
人を騙してとった金で何を買おうと、アンタは貧しいままだけど。

私の弟の心は豊かだよ。

そして私は幸せだよ。

 

母が弟を置いて出て行ったときからもう30年。

私の弟は、あの小さな頃のまま、優しくて泣き虫だけど.....

それでいい。
それがいい。

......もうすぐ、彼の誕生日だ。

 

 補足: 弟と違ってヒジョーに非情かつ、現実的なエスパー長姉は、
       一応、こういった場合の対応を彼に教えておきましたとさ。