マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「夢の分析」(講談社選書メチエ) 川嵜克哲著

2014-03-24 00:36:53 | 日記
この本は、主に震災で不安定になった一人のクライエントの夢を取り上げて、
その方の内面の成長を示しながら、それとともに、「近代的な主体」というものが、
いかなる歴史的経緯を経て、どのような社会の変化とともに成立してきたかについて述べている。
 生れついて与えられた家柄、身分、役割のみではなく、
自らの欲求、願望、意志というものが、社会が近代に至るまでに
徐々に形成されてきたことが紹介される。
人が自分の部屋で寝るどころか、一人で一つのベッドで寝る、
閉ざされたトイレで排泄するなどが、近代になるにつれて
ごく当たり前のことになったが、それ以前は何人かで一つのベッドを使う、
道や庭で排泄するのが、普通のことだったとのことだ。
 いろいろなところで、発達障害について、「主体のなさ」というのが言われるが、
それでは「主体」とは何で、どのように形成されてきたのかを知らなければ、
議論のしようが無いのではないだろうか?
発達障害を理解しようとすると、哲学や歴史についてそれなりに知らなければ、
自らの主体の成り立ちを理解できないので、関わる事は出来ないのではないだろうか?


大阪都構想と西成

2014-03-19 02:40:09 | 日記
大阪都構想での区割りでなかなか上手くいかないのは、
西成区などの貧しい所と引っ付くのが嫌だというのは
大きいのだろう。
西成の高齢者は、非正規の作業員として働いてきて、
働けなくなったら、最低限の生活しか行政から保障されていない。
それでは、原発作業員も、かなりの割合で高齢化し時に
最低限の生活しか保障されないのではないのだろうか?
そういう事が容易に想像できるのに、今後、原発作業員は
集まり続けるのだろうか?
作業員が足りなくなった時に、原発のメンテナンス、廃炉はどうなるのだろうか?

「遥かなる勝利へ」 ニキータ・ミハルコフ監督 その2

2014-03-06 23:16:02 | 日記
 劇中、元妻を駅で見送ったコトフ大佐が、将校なので高級な腕時計をしているのを
駅にたむろするチンピラのグループが見て、腕時計欲しさに絡んできます。
そこで、コトフ大佐はチンピラに、タバコでも吸おう、と話し掛け、
刻みタバコを紙に巻きながら、相手の顔に吹きかけて不意を突き
物理的暴力で潰しにかかります。
金属の指カバーに仕込んである小型ナイフで、若いチンピラの
首を切りつけたりします。ノックアウトする暴力ではなく
若いチンピラ達が死のうが構わないやり方です。
そうして撃退したのですが、結婚式を挙げている両足を失った傷痍軍人の
所に行って、あっさりその腕時計をあげます。
貰った方は、こんなに高価な物を、と驚くのですが、構わずにあげます。
 アメリカ映画なら、悪者は退散させる、傷痍軍人は国が面倒を見る、
などでしょうが、国が貧しい、社会制度があまりないソ連、ロシアでは
身近な人間のパターナリズムが一番あてになるのでしょう。
ロシア映画の「父、帰る」(監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ)
でも、息子から財布を奪ったチンピラ(ストリートチルドレン?)
を捕まえて財布を取り返してから、「なぜ財布を奪った?」と聞いて
相手が「食べるものがない」と答えると、お金をあげていました。
 ソ連崩壊後は新興財閥、今はプーチン政権の関係者が、いろいろと
権力などを使って稼いでいるらしいですが、本人たちにとっては
自分たちの家族、親族がまともな暮らしをする、医療にかかる、などが
それぞれの稼ぎに掛っているのですから、無茶な事もするのでしょう。
 プーチン政権になってから、新興財閥の方が投獄されて
シベリヤに送られていましたが、スターリンの頃の即決裁判で
死刑などと比べると、かなり穏やかなやり方になったのだと思います。
国が貧しい、社会制度が未整備だと、権力などの力を持ったほうは
何としても稼ごうとするのでしょう。
権力を失っても飢えない、まともな医療に掛かれるなどの社会制度の価値を
考えさせられます。